大和の国のこころ、万葉のこころ

不肖私がこよなく愛する『万葉集』の鑑賞blogです。

うはへなき妹にもあるかも・・・巻第4-691~692

訓読 >>> 691ももしきの大宮人(おほみやひと)は多かれど心に乗りて思ほゆる妹(いも) 692うはへなき妹(いも)にもあるかもかくばかり人の心を尽(つく)さく思へば 要旨 >>> 〈691〉大宮に仕える女官はたくさんいるけれども、私の心に乗りかかって…

うつせみの命を惜しみ・・・巻第1-23~24

訓読 >>> 23打麻(うちそ)を麻続王(をみのおほきみ)海人(あま)なれや伊良虞(いらご)の島の玉藻(たまも)刈ります 24うつせみの命(いのち)を惜(を)しみ波に濡(ぬ)れ伊良虞(いらご)の島の玉藻(たまも)刈り食(は)む 要旨 >>> 〈23〉…

ちはやぶる神の社しなかりせば・・・巻第3-404~406

訓読 >>> 404ちはやぶる神の社(やしろ)しなかりせば春日(かすが)の野辺(のへ)に粟(あわ)蒔(ま)かましを 405春日野(かすがの)に粟(あわ)蒔(ま)けりせば鹿(しし)待ちに継(つ)ぎて行かましを社(やしろ)し怨(うら)めし 406我(わ)が…

二上山も妹こそありけれ・・・巻第7-1098

訓読 >>> 紀路(きぢ)にこそ妹山(いもやま)ありといへ玉櫛笥(たまくしげ)二上山(ふたかみやま)も妹(いも)こそありけれ 要旨 >>> 紀州には妹山という名高い山がある、という人の噂だが、大和の二上山にだって男山と女山が並んでいて、女山はあ…

飛ぶ鳥の明日香の里を・・・巻第1-78

訓読 >>> 飛ぶ鳥の明日香(あすか)の里を置きて去(い)なば君があたりは見えずかもあらむ 要旨 >>> 明日香の里をあとにして、奈良の都に行ってしまえば、あなたが住んでいたところは見えなくなってしまうのか。 鑑賞 >>> 和銅3年(710年)の2月に…

防人の歌(9)・・・巻第20-4372

訓読 >>> 足柄(あしがら)の 御坂(みさか)賜(たま)はり 顧(かへり)みず 我(あ)れは越(く)え行く 荒(あら)し男(を)も 立(た)しやはばかる 不破(ふは)の関(せき) 越(く)えて我(わ)は行(ゆ)く 馬(むま)の爪(つめ) 筑紫(つく…

持統天皇の吉野行幸の折、柿本人麻呂が作った歌・・・巻第1-36~37

訓読 >>> 36やすみしし わご大君(おほきみ)の 聞(きこ)しめす 天(あめ)の下に 国はしも 多(さは)にあれども 山川の 清き河内(かふち)と 御心(みこころ)を 吉野の国の 花散らふ 秋津の野辺(のへ)に 宮柱(みやはしら) 太敷(ふとし)きませ…

鳴る神の少し響みて・・・巻第11-2513~2514

訓読 >>> 2513鳴る神の少し響(とよ)みてさし曇り雨も降らぬか君を留(とど)めむ 2514鳴る神の少し響(とよ)みて降らずとも我(わ)は留(とど)まらむ妹(いも)し留(とど)めば 要旨 >>> 〈2513〉少しでいいから雷が鳴り、空がかき曇って雨でも…

夜戸出の姿見てしより・・・巻第12-2950

訓読 >>> 我妹子(わぎもこ)が夜戸出(よとで)の姿見てしより心 空(そら)なり地(つち)は踏めども 要旨 >>> いとしいあの子が、夜、戸を開けて外に出てくる姿を見てからというもの、心は上の空だ、土は踏んでいるけれども。 鑑賞 >>> 「夜戸出…

天智天皇と鏡王女の歌・・・巻第2-91~92

訓読 >>> 91妹(いも)が家も継(つ)ぎて見ましを大和なる大島の嶺(ね)に家もあらましを 92秋山の樹(こ)の下隠(したがく)り逝(ゆ)く水のわれこそ増さめ思ほすよりは 要旨 >>> 〈91〉逢えないのなら、せめてあなたの家をいつでも見ることがで…

波羅門の作れる小田を・・・巻第16-3856

訓読 >>> 波羅門(ばらもん)の作れる小田(をだ)を食(は)む烏(からす)瞼(まぶた)腫(は)れて幡桙(はたほこ)に居(を)り 要旨 >>> 波羅門さまが耕してらっしゃる田の稲を食い荒らしたカラスは、瞼ががふくれあがって旗竿にとまっている。 …

山も狭に咲ける馬酔木の・・・巻第8-1428

訓読 >>> おしてる 難波(なには)を過ぎて うちなびく 草香(くさか)の山を 夕暮(ゆふぐれ)に 我(わ)が越え来れば 山も狭(せ)に 咲ける馬酔木(あしび)の 悪(あ)しからぬ 君をいつしか 行きてはや見む 要旨 >>> 難波を過ぎて、草香の山を夕…

山ながらかくも現しく・・・巻第13-3332

訓読 >>> 高山(たかやま)と 海とこそば 山ながら かくも現(うつ)しく 海ながら しか真(まこと)ならめ 人は花物(はなもの)そ うつせみ世人(よひと) 要旨 >>> 高い山と海こそは、山であるがゆえに確かに存在し、海であるがゆえにはっきりと存…

磨ぎし心をゆるしてば・・・巻第4-673~674

訓読 >>> 673まそ鏡(かがみ)磨(と)ぎし心をゆるしてば後(のち)に言ふとも験(しるし)あらめやも 674真玉(またま)つくをちこち兼ねて言(こと)は言へど逢ひて後(のち)こそ悔(くい)にはありといへ 要旨 >>> 〈673〉まそ鏡のように清く研ぎ…

夏蔭の妻屋の下に・・・巻第7-1278

訓読 >>> 夏蔭(なつかげ)の妻屋(つまや)の下(した)に衣(きぬ)裁(た)つ我妹(わぎも) うら設(ま)けて我(あ)がため裁(た)たばやや大(おほ)に裁て 要旨 >>> 夏の日をさえぎる木陰の妻屋の下で衣を裁っているわが妻よ。私のために心づ…

勝間田の池は我れ知る・・・巻第16-3835

訓読 >>> 勝間田(かつまた)の池は我(わ)れ知る蓮(はちす)なししか言ふ君が鬚(ひげ)なきごとし 要旨 >>> 勝間田の池は私はよく知っておりますが、蓮(はす)はありません。蓮があるとおっしゃるあなたに髭がないのと同じです。 鑑賞 >>> 左…

高円山に迫めたれば・・・巻第6-1028

訓読 >>> ますらをの高円山(たかまとやま)に迫(せ)めたれば里(さと)に下り来(け)るむざさびぞこれ 要旨 >>> 勇士たちが高円山で追い詰めましたので、里に下りてきたムササビでございます、これは。 鑑賞 >>> 大伴坂上郎女の歌。題詞に次の…

海行かば水漬く屍・・・巻第18-4094~4097

訓読 >>> 4094葦原(あしはら)の 瑞穂(みづほ)の国を 天下(あまくだ)り 知らしめしける すめろきの 神の命(みこと)の 御代(みよ)重ね 天(あま)の日継(ひつぎ)と 知らし来る 君の御代(みよ)御代 敷きませる 四方(よも)の国には 山川(や…

飯食めどうまくもあらず・・・巻第16-3857

訓読 >>> 飯(いひ)食(は)めど うまくもあらず 行き行けど 安くもあらず あかねさす 君が心し忘れかねつも 要旨 >>> ご飯を食べても美味しくないし、いくら歩き回っても心は落ち着きません。あなたの真心を忘れることができません。 鑑賞 >>> 左…

この我子を唐国へ遣る・・・巻第19-4240~4241

訓読 >>> 4240大船(おほぶね)に楫(まかぢ)しじ貫(ぬ)きこの我子(あこ)を唐国(からくに)へ遣(や)る斎(いは)へ神たち 4241春日野(かすがの)に斎(いつ)く三諸(みもろ)の梅の花 栄(さ)きてあり待て帰り来るまで 要旨 >>> 〈4240〉大…

防人の歌(8)・・・巻第20-4346

訓読 >>> 父母(ちちはは)が頭(かしら)かき撫(な)で幸(さ)くあれて言ひし言葉(けとば)ぜ忘れかねつも 要旨 >>> 父と母とがかわるがわるにやさしく頭をかき撫でて、元気に過ごしてほしいと言った言葉が忘れられない。 鑑賞 >>> 駿河国の防…

人妻に言ふは誰が言・・・巻第12-2866

訓読 >>> 人妻に言ふは誰(た)が言(こと)さ衣(ごろも)のこの紐(ひも)解けと言ふは誰が言(こと) 要旨 >>> 人妻である私に言い寄るのは誰のおことば? 下着の紐を解いて寝ようと言い寄るのは誰のおことば? 鑑賞 >>> 「さ衣」の「さ」は接頭…

東歌(12)・・・巻第14‐3399

訓読 >>> 信濃道(しなぬぢ)は今の墾(は)り道 刈りばねに足踏ましなむ沓(くつ)はけ我(わ)が背 要旨 >>> 信濃道(しなのぢ)は切り拓いたばかりの道です。きっと切り株をお踏みになるでしょう。靴を履いてお越しになって下さい、あなた。 鑑賞 …

富士の嶺を高み畏み・・・巻第3-319~321

訓読 >>> 319なまよみの 甲斐(かひ)の国 うち寄する 駿河(するが)の国と 此方此方(こちごち)の 国のみ中ゆ 出(い)で立てる 富士の高嶺(たかね)は 天雲(あまくも)も い行(ゆ)きはばかり 飛ぶ鳥も 飛びものぼらず 燃ゆる火を 雪もち消(け)…

幸はひのいかなる人か・・・巻第7-1411

訓読 >>> 幸(さき)はひのいかなる人か黒髪(くろかみ)の白くなるまで妹(いも)が音(こゑ)を聞く 要旨 >>> 自分は恋しい妻をもう亡くしたが、白髪になるまで二人とも健やかで、妻の声を聞くことができる人は何と幸せな人だろう、うらやましいこと…

娘子らが袖布留山の・・・巻第4-501~503

訓読 >>> 501娘子(をとめ)らが袖(そで)布留(ふる)山の瑞垣(みづかき)の久しき時ゆ思ひき我(われ)は 502夏野(なつの)行く牡鹿(をしか)の角(つの)の束(つか)の間も妹(いも)が心を忘れて思へや 503玉衣(たまきぬ)のさゐさゐしづみ家の…

み熊野の浦の浜木綿・・・巻第4-496~499

訓読 >>> 496み熊野の浦の浜木綿(はまゆふ)百重(ももへ)なす心は思へど直(ただ)に逢はぬかも 497古(いにしへ)にありけむ人もわがごとか妹(いも)に恋ひつつ寝(い)ねかてずけむ 498今のみのわざにはあらず古(いにしえ)の人そまさりて音(ね)…

誰そかれと我れをな問ひそ・・・巻第10-2240

訓読 >>> 誰(た)そかれと我(わ)れをな問ひそ九月(ながつき)の露(つゆ)に濡れつつ君待つ我(わ)れを 要旨 >>> 誰なのか、などと私にお聞きにならないで下さい。九月の冷たい露に濡れながら、あなたを待っている私なのです。 鑑賞 >>> 女が…

姫百合の知らえぬ恋は・・・巻第8-1500

訓読 >>> 夏の野の茂みに咲ける姫百合(ひめゆり)の知らえぬ恋は苦しきものぞ 要旨 >>> 夏の野の繁みににひっそりと咲いている姫百合、それが人に気づいてもらえないように、あの人に知ってもらえない恋は苦しいものです。 鑑賞 >>> 大伴坂上郎女…

奈良の山なる黒木もち・・・巻第8-1638

訓読 >>> あをによし奈良(なら)の山なる黒木もち造れる室(むろ)は座(ま)せど飽(あ)かぬかも 要旨 >>> 奈良の山にある黒木で造ったこの室は、いつまで居ても飽きることがない。 鑑賞 >>> 長屋王の邸で酒宴があった時に、聖武天皇が詠んだ儀…