大和の国のこころ、万葉のこころ

不肖私がこよなく愛する『万葉集』の鑑賞blogです。

をみなへし秋萩折れれ・・・巻第8-1534

訓読 >>> をみなへし秋萩(あきはぎ)折れれ玉桙(たまほこ)の道行きづとと乞(こ)はむ子がため 要旨 >>> 女郎花も秋萩も手折っておきなさい。旅のおみやげは?と言ってせがむ愛しい妻のために。 鑑賞 >>> 作者の石川朝臣老夫(いしかわのあそみ…

東歌(17)・・・巻第14-3572

訓読 >>> あど思(も)へか阿自久麻山(あじくまやま)の弓絃葉(ゆづるは)の含(ふふ)まる時に風吹かずかも 要旨 >>> いったい何をぐずぐずしているのか、阿自久麻山のユズリハがまだ蕾(つぼみ)の時だからといって、風が吹かないなんてことがある…

妹が袂をまかぬ夜もありき・・・巻第11-2547

訓読 >>> 斯(か)くばかり恋ひむものぞと念(おも)はねば妹(いも)が袂(たもと)をまかぬ夜(よ)もありき 要旨 >>> こんなに恋しくなるとは思わなかったから、一緒にいても、お前と寝ない夜もあった。 鑑賞 >>> 「妹が袂をまかぬ」は、妻の手…

秋の夜の月かも君は・・・巻第10-2299

訓読 >>> 秋の夜(よ)の月かも君は雲隠(くもがく)りしましく見ねばここだ恋しき 要旨 >>> あなたは秋の夜の月なのでしょうか。しばらくの間雲に隠れて見えなくなっただけで、こんなに恋しくてならないなんて。 鑑賞 >>> 雲に隠れて、ほんの少し…

東歌(16)・・・巻第14-3430

訓読 >>> 志太(しだ)の浦を朝(あさ)漕(こ)ぐ船は由(よし)なしに漕ぐらめかもよ由(よし)こさるらめ 要旨 >>> 志太の浦を朝早く漕いで行く舟は、わけもなくあんなに急いで漕いでいるのだろうか。そんな筈はない、きっとわけがあって漕いでいる…

見わたせば近き渡りをた廻り・・・巻第11-2379

訓読 >>> 見わたせば近き渡りをた廻(もとほ)り今か来(き)ますと恋ひつつぞ居(を)る 要旨 >>> 見渡すと、近い渡り場所なのに、回り道をしながらあなたがいらっしゃるのを、今か今かと待ち焦がれています。 鑑賞 >>> 「渡り」は、舟の渡し場に…

見れば恐し見ねば悲しも・・・巻第7-1369

訓読 >>> 天雲(あまくも)に近く光りて鳴る神の見れば恐(かしこ)し見ねば悲しも 要旨 >>> 遙か遠い天雲の近くで光って鳴る雷は、見るからに恐ろしいけれど、見なければ見ないで悲しい。 鑑賞 >>> 「天雲」は空にある雲。「鳴る神」は「雷」のこ…

老人の変若つといふ水ぞ・・・巻第6-1034

訓読 >>> いにしへゆ人の言ひ来(け)る老人(おいひと)の変若(を)つといふ水ぞ名に負(お)ふ瀧(たき)の瀬(せ) 要旨 >>> これが古来言い伝えてきた、老人を若返らせるという水だ。いかにもその名にふさわしい滝の流れよ。 鑑賞 >>> 天平12…

鳴き立てる馬・・・巻第13-3327~3328

訓読 >>> 3327百小竹(ももしの)の 三野(みの)の王(おほきみ) 西の厩(うまや) 立てて飼(か)ふ駒(こま) 東(ひむがし)の厩(うまや) 立てて飼ふ駒 草こそば 取りて飼ふと言へ 水こそば 汲(く)みて飼ふと言へ 何しかも 葦毛(あしげ)の馬の…

旅にし居れば刈り薦の・・・巻第12-3176

訓読 >>> 草枕(くさまくら)旅にし居(を)れば刈り薦(こも)の乱れて妹(いも)に恋ひぬ日はなし 要旨 >>> 旅にあって寝床のために刈り取った薦が乱れるように、私の心は乱れて妻を恋しく思わない日はない。 鑑賞 >>> 「羈旅発思」(旅にあって…

神功皇后と鎮懐石・・・巻第5-813~814

訓読 >>> 813かけまくは あやに畏(かしこ)し 足日女(たらしひめ) 神の命(みこと) 韓国(からくに)を 向(む)け平(たひ)らげて 御心(みこころ)を 鎮(しづ)めたまふと い取らして 斎(いは)ひたまひし 真玉(またま)なす 二つの石を 世の人…

琴取れば嘆き先立つ・・・巻第7-1129

訓読 >>> 琴(こと)取れば嘆き先立つけだしくも琴の下樋(したひ)に妻や隠(こも)れる 要旨 >>> 琴を弾こうと手にすると、先ず嘆きが先に立つ。ひょっとして亡き妻が下樋の中にこもっているのであろうか。 鑑賞 >>> 題詞に「倭琴(やまとごと)…

白玉は緒絶えしにきと・・・巻第16-3814~3815

訓読 >>> 3814白玉(しらたま)は緒絶(をだ)えしにきと聞きしゆゑにその緒(を)また貫(ぬ)き我(わ)が玉にせむ 3815白玉(しらたま)の緒絶(をだ)えはまこと然(しか)れどもその緒(を)また貫(ぬ)き人持ち去(い)にけり 要旨 >>> 〈3814…

志賀の海人の歌(2)・・・巻第16-3865~3869

訓読 >>> 3865荒雄(あらを)らは妻子(めこ)が業(なり)をば思はずろ年(とし)の八年(やとせ)を待てど来(き)まさず 3866沖つ鳥(とり)鴨(かも)とふ船の帰り来(こ)ば也良(やら)の崎守(さきもり)早く告げこそ 3867沖つ鳥(とり)鴨(かも…

志賀の海人の歌(1)・・・巻第16-3860~3864

訓読 >>> 3860大君(おほきみ)の遣はさなくにさかしらに行きし荒雄(あらを)ら沖に袖(そで)振る 3861荒雄(あらを)らを来(こ)むか来(こ)じかと飯(いひ)盛(も)りて門(かど)に出で立ち待てど来まさず 3862志賀(しか)の山いたくな伐(き)…

宴席の歌(1)・・・巻第19-4279~4281

訓読 >>> 4279能登川(のとがは)の後(のち)には逢はむしましくも別るといへば悲しくもあるか 4280立ち別れ君がいまさば磯城島(しきしま)の人は我れじく斎)いは)ひて待たむ 4281白雪(しらゆき)の降り敷く山を越え行かむ君をぞもとな息(いき)の…

秋田刈る仮廬を作り・・・巻第10-2174

訓読 >>> 秋田(あきた)刈る仮廬(かりほ)を作り我(わ)が居(を)れば衣手(ころもで)寒く露(つゆ)ぞ置きにける 要旨 >>> 秋の田を刈るための仮小屋を作って、私がそこにいると、着物の袖に寒く露が置いたことだ。 鑑賞 >>> 作者未詳歌。「…

白露と秋萩とには恋ひ乱れ・・・巻第10-2171~2173

訓読 >>> 2171白露(しらつゆ)と秋萩(あきはぎ)とには恋ひ乱れ別(わ)くことかたき我(あ)が心かも 2172我(わ)が宿(やど)の尾花(をばな)押しなべ置く露(つゆ)に手触れ我妹子(わぎもこ)散らまくも見む 2173白露(しらつゆ)を取らば消(け…

大君は神にしませば・・・巻第3-235

訓読 >>> 大君(おほきみ)は神にしませば天雲(あまくも)の雷(いかづち)の上に廬(いほ)りせるかも 要旨 >>> 天皇は神でいらっしゃるので、天雲にそそり立つ雷の上に仮の宮殿を造っていらっしゃる。 鑑賞 >>> 題詞に「天皇(すめらみこと)、…

奈良山の児手柏の両面に・・・巻第16-3836

訓読 >>> 奈良山(ならやま)の児手柏(このてがしは)の両面(ふたおも)にかにもかくにも侫人(ねぢけひと)の伴(とも) 要旨 >>> 奈良山の児の手柏のように、表と裏の顔を、その場次第で使い分けては、巧みにへつらってばかりいる輩よ。 鑑賞 >>…

思ひ遣るすべの知らねば・・・巻第4-707~708

訓読 >>> 707思ひ遣(や)るすべの知らねば片垸(かたもひ)の底にぞ我(あ)れは恋ひ成りにける 708またも逢はむよしもあらぬか白栲(しろたへ)の我(あ)が衣手(ころもで)に斎(いは)ひ留(とど)めむ 要旨 >>> 〈707〉思いを取り払う手だてが分…

雪こそば春日消ゆらめ・・・巻第9-1782~1783

訓読 >>> 1782雪こそは春日(はるひ)消(き)ゆらめ心さへ消え失(う)せたれや言(こと)も通(かよ)はぬ 1783松返(まつがへ)りしひてあれやは三栗(みつぐり)の中上(なかのぼ)り来(こ)ぬ麻呂(まろ)といふ奴(やつこ) 要旨 >>> 〈1782〉…

白栲の袖の別れを難みして・・・巻第12-3215~3216

訓読 >>> 3215白栲(しろたへ)の袖(そで)の別れを難(かた)みして荒津(あらつ)の浜に宿(やど)りするかも 3216草枕(くさまくら)旅行く君を荒津(あらつ)まで送りぞ来(き)ぬる飽(あ)き足(だ)らねこそ 要旨 >>> 〈3215〉このままあの子…

夕されば小倉の山に鳴く鹿は・・・巻第8-1511

訓読 >>> 夕されば小倉(をぐら)の山に鳴く鹿は今夜(こよひ)は鳴かずい寝(ね)にけらしも 要旨 >>> 夕暮れになるといつも小倉山で鳴く鹿が、今夜は鳴かない。もう夫婦で寝てしまったのだろう。 鑑賞 >>> 「岡本天皇の御製歌」とあり、岡本天皇…

桜井王と聖武天皇の歌・・・巻第8-1614~1615

訓読 >>> 1614九月(ながつき)のその初雁(はつかり)の使(つかひ)にも思ふ心は聞こえ来(こ)ぬかも 1615大(おほ)の浦(うら)のその長浜(ながはま)に寄する波ゆたけく君を思ふこのころ 要旨 >>> 〈1614〉九月にやって来る初雁の使いでなりと…

古人の飲へしめたる吉備の酒・・・巻第4-553~554

訓読 >>> 553天雲(あまくも)のそくへの極(きは)み遠けども心し行けば恋ふるものかも 554古人(ふるひと)の飲(たま)へしめたる吉備(きび)の酒(さけ)病(や)めばすべなし貫簀(ぬきす)賜(たば)らむ 要旨 >>> 〈553〉あなたのおられる筑紫…

宇治の宮処の仮廬し思ほゆ・・・巻第1-7

訓読 >>> 秋の野(ぬ)のみ草刈り葺(ふ)き宿れりし宇治(うぢ)の宮処(みやこ)の仮廬(かりほ)し思ほゆ 要旨 >>> かつて天皇の行幸に御伴をして、山城の宇治で、秋の草を刈って葺いた行宮(あんぐう)に宿ったときのことが思い出されます。 鑑賞 …

伊勢の国にもあらましを・・・巻第2-163~164

訓読 >>> 163神風(かむかぜ)の伊勢の国にもあらましをなにしか来(き)けむ君もあらなくに 164見まく欲(ほ)り我(あ)がする君もあらなくに何しか来(き)けむ馬(うま)疲(つか)るるに 要旨 >>> 〈163〉こんなことなら伊勢の国にいたほうがよか…

振分の髪を短み・・・巻第11-2540

訓読 >>> 振分(ふりわけ)の髪を短(みじか)み春草(はるくさ)を髪に束(た)くらむ妹(いも)をしぞおもふ 要旨 >>> あの娘は短い振分髪で、まだ結えないので、春草を足して髪に束ねてでもいるだろうか、可愛くてあどけないあの娘のことが恋しくし…

君が家に我が住坂の家道をも・・・巻第4-504

訓読 >>> 君が家に我(わ)が住坂(すみさか)の家道(いへぢ)をも我(わ)れは忘れじ命(いのち)死なずは 要旨 >>> あなたの家に私が住む、その言葉の響きのように、あなたと住んだ住坂の家も家路も忘れはしません。命のある限りずっと。 鑑賞 >>…