大和の国のこころ、万葉のこころ

不肖私がこよなく愛する『万葉集』の鑑賞blogです。

作者未詳歌

相見ては面隠さるるものからに・・・巻第11-2554

訓読 >>> 相(あひ)見ては面(おも)隠さるるものからに継(つ)ぎて見まくの欲(ほ)しき君かも 要旨 >>> 顔を合わせると、恥ずかしくて顔を隠したくなるのですが、それなのに、すぐにまた見たいと思う、あなたなのです。 鑑賞 >>> 結婚後間もな…

東歌(21)・・・巻第14-3386

訓読 >>> にほ鳥の葛飾(かづしか)早稲(わせ)を饗(にへ)すともその愛(かな)しきを外(と)に立てめやも 要旨 >>> 葛飾の早稲を神に捧げる新嘗祭の夜であっても、愛しいあの人を外に立たせておくことなどできない。 鑑賞 >>> 「にほ鳥の」の…

月草のうつろふ心・・・巻第12-3058~3059

訓読 >>> 3058うちひさす宮にはあれど月草(つきくさ)のうつろふ心(こころ)我(わ)が思はなくに 3059百(もも)に千(ち)に人は言ふとも月草(つきくさ)のうつろふ心 我(わ)れ持ためやも 要旨 >>> 〈3058〉華やかな宮仕えをしていますが、色の…

梓弓末は知らねど・・・巻第12-3149~3150

訓読 >>> 3149梓弓(あづさゆみ)末(すゑ)は知らねど愛(うるは)しみ君にたぐひて山道(やまぢ)越え来(き)ぬ 3150霞(かすみ)立つ春の長日(ながひ)を奥処(おくか)なく知らぬ山道(やまぢ)を恋ひつつか来(こ)む 要旨 >>> 〈3149〉行く末…

立ちしなふ君が姿を忘れずは・・・巻第20-4440~4441

訓読 >>> 4440足柄(あしがら)の八重山(やへやま)越えていましなば誰(た)れをか君と見つつ偲(しの)はむ 4441立ちしなふ君が姿を忘れずは世の限りにや恋ひわたりなむ 要旨 >>> 〈4440〉足柄の八重に重なる山々を越えて行ってしまわれたら、誰を…

我妹子は釧にあらなむ・・・巻第9-1766

訓読 >>> 我妹子(わぎもこ)は釧(くしろ)にあらなむ左手の我(わ)が奥(おく)の手に巻きて去(い)なましを 要旨 >>> あなたが釧であったらいいのに。そしたら、左手の私の大事な奥の手に巻いて旅立とうものを。 鑑賞 >>> 振田向宿祢(ふるの…

我が恋ひ死なば誰が名ならむも・・・巻第12-3105~3106

訓読 >>> 3105人目(ひとめ)多み直(ただ)に逢はずてけだしくも我(あ)が恋ひ死なば誰(た)が名ならむも 3106相(あひ)見まく欲しきがためは君よりも我(わ)れぞまさりていふかしみする 要旨 >>> 〈3105〉人目が多いからといってじかに逢ってく…

聞かずして黙もあらましを・・・巻第13-3303~3304

訓読 >>> 3303里人(さとびと)の 我(あ)れに告(つ)ぐらく 汝(な)が恋ふる 愛(うるは)し夫(づま)は 黄葉(もみちば)の 散りまがひたる 神奈備(かむなび)の この山辺(やまへ)から[或る本に云く、その山辺] ぬばたまの 黒馬(くろま)に乗…

み雪降る吉野の岳に居る雲の・・・巻第13-3293~3294

訓読 >>> 3293み吉野の 御金(みかね)の岳(たけ)に 間(ま)なくそ 雨は降るといふ 時(とき)じくそ 雪は降るといふ その雨の 間(ま)なきがごとく その雪の 時じきがごと 間(ま)も落ちず 我(あ)れはそ恋ふる 妹(いも)が正香(ただか)に 3294…

風交り雪は降りつつ・・・巻第10-1836~1838

訓読 >>> 1836風(かぜ)交(まじ)り雪は降りつつしかすがに霞(かすみ)たなびき春さりにけり 1837山の際(ま)に鴬(うぐひす)鳴きてうち靡(なび)く春と思へど雪降りしきぬ 1838峰(を)の上(うへ)に降り置ける雪し風の共(むた)ここに散るらし…

防人の歌(14)・・・巻第20-4425

訓読 >>> 防人に行くは誰(た)が背(せ)と問ふ人を見るが羨(とも)しさ物思(ものも)ひもせず 要旨 >>> 防人に行くのはどなたのご主人と、問いかけている人を見ると羨ましい。何の物思いもしないで。 鑑賞 >>> 題詞に「昔年の防人の歌」とある8…

玉梓の君が使ひの手折り来る・・・巻第10-2111

訓読 >>> 玉梓(たまづさ)の君が使ひの手折(たを)り来(け)るこの秋萩は見れど飽(あ)かぬかも 要旨 >>> あなたの寄こしたお使いが手折ってきてくれたこの秋萩は、見ても見ても見飽きることがありません。 鑑賞 >>> 「玉梓の」は、古く便りを…

卯の花の咲くとはなしにある人に・・・巻第10-1989

訓読 >>> 卯(う)の花の咲くとはなしにある人に恋ひやわたらむ片思(かたもひ)にして 要旨 >>> 卯の花の咲くようには、心を開いてくれないあの人に、ずっと恋い続けるなのだろうか、片思いのままで。 鑑賞 >>> 片思いをしている男の歌で、花に寄…

我れなしに潜きはなせそ・・・巻第7-1253~1254

訓読 >>> 1253楽浪(ささなみ)の志賀津(しがつ)の海人(あま)は我(あ)れなしに潜(かづ)きはなせそ波立たずとも 1254大船(おほふね)に楫(かぢ)しもあらなむ君なしに潜(かづ)きせめやも波立たずとも 要旨 >>> 〈1253〉楽浪の志賀津の海人…

手もすまに植ゑし萩にや・・・巻第8-1633~1635

訓読 >>> 1633手もすまに植ゑし萩(はぎ)にやかへりては見れども飽(あ)かず心 尽(つく)さむ 1634衣手(ころもで)に水渋(みしぶ)付くまで植ゑし田を引板(ひきた)我が延(は)へまもれる苦し 1635佐保川(さほがは)の水を堰(せ)き上げて植ゑし…

妹がため我れ玉拾ふ・・・巻第9-1665~1666

訓読 >>> 1665妹(いも)がため我(わ)れ玉 拾(ひり)ふ沖辺(おきへ)なる玉寄せ持ち来(こ)沖つ白波(しらなみ) 1666朝霧(あさぎり)に濡(ぬ)れにし衣(ころも)干(ほ)さずしてひとりか君が山路(やまぢ)越ゆらむ 要旨 >>> 〈1665〉妻のた…

秋の夜を長しと言へど・・・巻第10-2303

訓読 >>> 秋の夜(よ)を長しと言へど積もりにし恋を尽(つく)せば短(みじか)くありけり 要旨 >>> 秋の夜は長いと言うけれど、積もりに積もった恋心を晴らすには、何とも短く感じられる。 鑑賞 >>> 男が、女と充実した夜を過ごし、夜明けに帰ろ…

紫は灰さすものぞ・・・巻第12-3101~3102

訓読 >>> 3101紫(むらさき)は灰(はひ)さすものぞ海石榴市(つばきち)の八十(やそ)の衢(ちまた)に逢へる子や誰(た)れ 3102たらちねの母が呼ぶ名を申(まを)さめど道行く人を誰(た)れと知りてか 要旨 >>> 〈3101〉紫は灰をさして作るもの…

弥彦おのれ神さび・・・巻第16-3883

訓読 >>> 弥彦(いやひこ)おのれ神(かむ)さび青雲(あをくも)のたなびく日すら小雨(こさめ)そほ降る [一云 あなに神さび] 要旨 >>> 弥彦の山はおのずと神々しくて(ほんとうに神々しくて)、青雲のたなびくこんな晴れた日ですら、小雨がしとしと…

商返しめすとの御法あらばこそ・・・巻第16-3809

訓読 >>> 商返(あきかへ)しめすとの御法(みのり)あらばこそ我(あ)が下衣(したごろも)返し給(たま)はめ 要旨 >>> 契約を反古にしてもかまわないという法令があるのでしたら、私がさしあげた形見の下着をお返し下さるのも分かりますが・・・。 鑑…

こもりくの泊瀬の山に照る月は・・・巻第7-1270

訓読 >>> こもりくの泊瀬(はつせ)の山に照る月は満ち欠けしけり人の常(つね)なき 要旨 >>> あの泊瀬の山に照る月は、満ちたり欠けたりしている。人もまた不変ではない。 鑑賞 >>> 「こもりくの」は「泊瀬」の枕詞。「泊瀬の山」は奈良県桜井市…

天の海に月の舟浮け・・・巻第10-2223

訓読 >>> 天(あめ)の海に月の舟(ふね)浮(う)け桂楫(かつらかぢ)懸(か)けて漕(こ)ぐ見ゆ月人壮士(つきひとをとこ) 要旨 >>> 夜空の海に月の舟を浮かべ、桂で作った楫を取り付けて漕いでいるのが見える、月の若者が。 鑑賞 >>> 「月を…

春草を馬咋山ゆ・・・巻第9-1708

訓読 >>> 春草(はるくさ)を馬(うま)咋山(くひやま)ゆ越え来(く)なる雁(かり)の使(つか)ひは宿(やど)り過ぐなり 要旨 >>> 春の草を馬が食う、その咋山(くいやま)を越えてやってきた雁の使いは、何の伝言も持たず、この旅の宿りを通り過…

東歌(20)・・・巻第14-3439

訓読 >>> 鈴が音(ね)の早馬駅家(はゆまうまや)の堤井(つつみゐ)の水を賜(たま)へな妹(いも)が直手(ただて)よ 要旨 >>> 駅鈴(えきれい)の音が聞こえる早馬のいる駅家の、湧き井戸の水を下さい、娘さん、あなたの素手で直接に。 鑑賞 >>…

ありありて後も逢はむと言のみを・・・巻第12-3113~3114

訓読 >>> 3113ありありて後(のち)も逢はむと言(こと)のみを堅(かた)く言ひつつ逢ふとはなしに 3114極(きは)まりて我(わ)れも逢はむと思へども人の言(こと)こそ繁(しげ)き君にあれ 要旨 >>> 〈3113〉ずっとこのままの気持ちでいて、後に…

うつせみの常の辞と思へども・・・巻第12-2961

訓読 >>> うつせみの常(つね)の辞(ことば)と思へども継(つ)ぎてし聞けば心(こころ)惑(まど)ひぬ 要旨 >>> 世間の通りいっぺんの言葉だとは思いますが、続けて何度も聞くと、心は乱れてしまいます。 鑑賞 >>> 女が男の求婚に答えた歌です…

東歌(19)・・・巻第14-3496~3498

訓読 >>> 3496橘(たちばな)の古婆(こば)の放髪(はなり)が思ふなむ心うつくしいで我(あ)れは行かな 3497川上(かはかみ)の根白高萱(ねじろたかがや)あやにあやにさ寝(ね)さ寝てこそ言(こと)に出(で)にしか 3498海原(うなはら)の根(ね…

東歌(18)・・・巻第14-3368~3371

訓読 >>> 3368足柄(あしがり)の土肥(とひ)の河内(かふち)に出(い)づる湯の世(よ)にもたよらに子ろが言はなくに 3369足柄(あしがり)の麻万(まま)の小菅(こすげ)の菅枕(すがまくら)あぜかまかさむ子ろせ手枕(たまくら) 3370足柄(あし…

この旅の日に妻放くべしや・・・巻第13-3346~3347

訓読 >>> 3346見欲(みほ)しきは 雲居(くもゐ)に見ゆる うるはしき 鳥羽(とば)の松原 童(わらは)ども いざわ出(い)で見む こと放(さ)けは 国に放けなむ こと放けば 家に放けなむ 天地(あめつち)の 神し恨(うら)めし 草枕 この旅の日(け)…

葦原の瑞穂の国に手向けすと・・・巻第13-3227~3229

訓読 >>> 3227葦原(あしはら)の 瑞穂(みずほ)の国に 手向(たむ)けすと 天降(あも)りましけむ 五百万(いほよろづ)千万神(ちよろづかみ)の 神代(かむよ)より 言ひ継ぎ来(きた)る 神(かむ)なびの みもろの山は 春されば 春霞(はるかすみ…