大和の国のこころ、万葉のこころ

不肖私がこよなく愛する『万葉集』の鑑賞blogです。

作者未詳歌

うつつにか妹が来ませる・・・巻第12-2917

訓読 >>> うつつにか妹(いも)が来ませる夢(いめ)にかも我(わ)れか惑(まど)へる恋の繁(しげ)きに 要旨 >>> 実際に彼女がやってきたのか、それとも夢なのか、あるいは私が取り乱しているのか、恋の激しさのために。 鑑賞 >>> 作者未詳の「…

山の際に渡る秋沙の・・・巻第7-1122~1124

訓読 >>> 1122山の際(ま)に渡る秋沙(あきさ)の行きて居(ゐ)むその川の瀬に波立つなゆめ 1123佐保川(さほがは)の清き川原に鳴く千鳥(ちどり)かはづと二つ忘れかねつも 1124佐保川に騒(さは)ける千鳥さ夜(よ)更けて汝(な)が声聞けば寝(い…

大海に島もあらなくに・・・巻第7-1089

訓読 >>> 大海(おほうみ)に島もあらなくに海原(うなばら)のたゆたふ波に立てる白雲(しらくも) 要旨 >>> 大海には島一つ見えないことよ、そして漂う波の上には白雲が立っている。 鑑賞 >>> 伊勢従駕の折の、作者未詳歌。「大海に島もあらなく…

春日山おして照らせるこの月は・・・巻第7-1074

訓読 >>> 春日山(かすがやま)おして照らせるこの月は妹(いも)が庭にも清(さや)けかりけり 要旨 >>> 春日山の一面に照り渡っているこの月は、私の恋人の庭にもさやかに照っていることだよ。 鑑賞 >>> 「月を詠む歌」、作者未詳。「春日山」は…

海原の道遠みかも・・・巻第7-1075

訓読 >>> 海原(うなはら)の道(みち)遠(とほ)みかも月読(つくよみ)の明(あかり)少なき夜(よ)は更けにつつ 要旨 >>> 海原を渡ってくる道が遠いせいか、月の光が少ししか届かない。夜はもう更けてきたというのに。 鑑賞 >>> 「月を詠む歌…

思はぬに時雨の雨は降りたれど・・・巻第10-2227

訓読 >>> 思はぬに時雨(しぐれ)の雨は降りたれど天雲(あまぐも)はれて月夜(つくよ)清(さや)けし 要旨 >>> 思いがけず時雨が降ったけれど、いつのまにか雲がなくなって、月明かりとなったよ。 鑑賞 >>> 「月を詠む」作者未詳歌。この歌につ…

東歌(31)・・・巻第14-3424~3425

訓読 >>> 3424下(しも)つ毛野(けの)三毳(みかも)の山のこ楢(なら)のす目(ま)ぐはし児(こ)ろは誰(た)が笥(け)か持たむ 3425下(しも)つ毛野(けの)安蘇(あそ)の川原(かはら)よ石踏まず空(そら)ゆと来(き)ぬよ汝(な)が心 告(…

敷島の大和の国に人二人・・・巻第13-3248~3249

訓読 >>> 3248敷島(しきしま)の 大和の国に 人(ひと)多(さは)に 満ちてあれども 藤波(ふぢなみ)の 思ひ纏(まつ)はり 若草の 思ひつきにし 君が目に 恋(こ)ひや明かさむ 長きこの夜(よ)を 3249敷島(しきしま)の大和の国に人(ひと)二人(…

防人の歌(20)・・・巻第20-4429~4432

訓読 >>> 4429馬屋(うまや)なる縄(なは)絶(た)つ駒(こま)の後(おく)るがへ妹(いも)が言ひしを置きて悲しも4430荒(あら)し男(を)のいをさ手挟(たはさ)み向ひ立ちかなるましづみ出(い)でてと我(あ)が来る4431笹(ささ)が葉(は)の…

東歌(30)・・・巻第14-3574~3576

訓読 >>> 3574小里(をさと)なる花橘(はなたちばな)を引き攀(よ)ぢて折らむとすれどうら若(わか)みこそ 3575美夜自呂(みやじろ)のすかへに立てるかほが花な咲き出(い)でそね隠(こ)めて偲(しの)はむ 3576苗代(なはしろ)の小水葱(こなぎ…

さざれ波浮きて流るる泊瀬川・・・巻第13-3225~3226

訓読 >>> 3225天雲(あまくも)の 影さへ見ゆる 隠(こも)くりの 泊瀬(はつせ)の川は 浦なみか 舟の寄り来(こ)ぬ 磯(いそ)なみか 海人(あま)の釣(つり)せぬ よしゑやし 浦はなくとも よしゑやし 磯はなくとも 沖つ波 競(きほ)ひ漕入(こぎ)…

秋風の清き夕に天の川・・・巻第10-2042~2044

訓読 >>> 2042しばしばも相(あひ)見ぬ君を天の川 舟出(ふなで)早(はや)せよ夜(よ)の更けぬ間に 2043秋風の清き夕(ゆふへ)に天の川舟漕ぎ渡る月人壮士(つきひとをとこ) 2044天の川 霧(きり)立ちわたり彦星(ひこほし)の楫(かぢ)の音(お…

かくばかり雨の降らくに・・・巻第10-1963

訓読 >>> かくばかり雨の降らくに霍公鳥(ほととぎす)卯(う)の花山(はなやま)になほか鳴くらむ 要旨 >>> こんなにも雨が降り続くのに、ホトトギスは、卯の花が咲きにおう山辺で、今もなお鳴いているのだろうか。 鑑賞 >>> 鳥を詠む歌。「雨の…

彦星と織女と今夜逢ふ・・・巻第10-2039~2041

訓読 >>> 2039恋しけく日(け)長きものを逢ふべくある宵(よひ)だに君が来まさずあるらむ 2040彦星(ひこほし)と織女(たなばたつめ)と今夜逢ふ天の川門(かはと)に波立つなゆめ 2041秋風の吹きただよはす白雲(しらくも)は織女(たなばたつめ)の…

逢はなくは然もありなむ・・・巻第12-3103~3104

訓読 >>> 3103逢はなくは然(しか)もありなむ玉梓(たまづさ)の使(つかひ)をだにも待ちやかねてむ 3104逢はむとは千度(ちたび)思へどあり通(がよ)ふ人目(ひとめ)を多み恋つつぞ居(を)る 要旨 >>> 〈3103〉逢えないことがあるのは仕方ない…

東歌(29)・・・巻第14-3358~3360

訓読 >>> 3358さ寝(ぬ)らくは玉の緒(を)ばかり恋ふらくは富士の高嶺(たかね)の鳴沢(なるさは)のごと 3359駿河(するが)の海おし辺(へ)に生(お)ふる浜つづら汝(いまし)を頼み母に違(たが)ひぬ [一云 親に違ひぬ] 3360伊豆(いづ)の海に…

織女の五百機立てて織る布の・・・巻第10-2034~2036

訓読 >>> 2034織女(たなばた)の五百機(いほはた)立てて織(お)る布の秋さり衣(ごろも)誰(た)れか取り見む 2035年にありて今か巻くらむぬばたまの夜霧隠(よぎりごも)れる遠妻(とほづま)の手を 2036我(あ)が待ちし秋は来(きた)りぬ妹(い…

うち鼻ひ鼻をぞひつる・・・巻第11-2637

訓読 >>> うち鼻(はな)ひ鼻をぞひつる剣大刀(つるぎたち)身に添ふ妹(いも)し思ひけらしも 要旨 >>> くしゃみが出る、またくしゃみが出る。どうやら、腰に帯びる剣大刀のようにいつも寄り添ってくれている妻が、私のことを思ってくれているらしい…

浅緑染め懸けたりと見るまでに・・・巻第10-1846~1849

訓読 >>> 1846霜(しも)枯(が)れの冬の柳(やなぎ)は見る人のかづらにすべく萌(も)えにけるかも 1847浅緑(あさみどり)染め懸けたりと見るまでに春の柳(やなぎ)は萌(も)えにけるかも 1848山の際(ま)に雪は降りつつしかすがにこの川柳(かは…

君が使を待ちし夜のなごりぞ・・・巻第12-2945

訓読 >>> 玉梓(たまづさ)の君が使(つかひ)を待ちし夜(よ)のなごりぞ今も寐(い)ねぬ夜(よ)の多き 要旨 >>> あなたからのお使いを、いつもお待ちしていた夜の名残に違いありません。今でもなお寝られない夜が多いのは。 鑑賞 >>> 「正述心…

逢坂をうち出でて見れば・・・巻第13-3236~3238

訓読 >>> 3236そらみつ 大和の国 あをによし 奈良山(ならやま)越えて 山背(やましろ)の 管木(つつき)の原 ちはやぶる 宇治の渡り 岡屋(をかのや)の 阿後尼(あごね)の原を 千歳(ちとせ)に 欠くることなく 万代(よろずよ)に あり通(がよ)は…

夕されば君来まさむと・・・巻第11-2588

訓読 >>> 夕(ゆふ)されば君(きみ)来(き)まさむと待ちし夜(よ)のなごりぞ今も寐寝(いね)かてにする 要旨 >>> 夕方になると、あなたがいらっしゃるだろうとお待ちしていた夜の名残なのですね、今もなかなか寝つかれないのは。 鑑賞 >>> 「…

あぢさはふ目は飽かざらね・・・巻第12-2934

訓読 >>> あぢさはふ目は飽(あ)かざらね携(たづさは)り言(こと)とはなくも苦しくありけり 要旨 >>> 近くでいつもお見かけしていながら、手を取り合ってお話できないのは苦しいことです。 鑑賞 >>> 「正述心緒(ありのままに思いを述べた歌)…

鳴き行くなるは誰れ呼子鳥・・・巻第10-1827~1828

訓読 >>> 1827春日(かすが)なる羽(は)がひの山ゆ佐保(さほ)の内へ鳴き行くなるは誰(た)れ呼子鳥(よぶこどり)1828答へぬにな呼び響(と)めそ呼子鳥(よぶこどり)佐保(さほ)の山辺(やまへ)を上り下りに 要旨 >>> 〈1827〉春日の羽がいの…

石城にも隠らばともに・・・巻第16-3806

訓読 >>> 事しあらば小泊瀬山(をはつせやま)の石城(いはき)にも隠(こも)らばともにな思ひ我(わ)が背(せ) 要旨 >>> 二人の仲を妨げるようなことが起こったら、あの泊瀬山の岩屋に葬られるなら葬られるで、私もずっと一緒にいます。ですから心…

東歌(28)・・・巻第14-3353~3354

訓読 >>> 3353麁玉(あらたま)の伎倍(きへ)の林に汝(な)を立てて行きかつましじ寐(い)を先立(さきだ)たね 3354伎倍人(きへひと)の斑衾(まだらぶすま)に綿(わた)さはだ入りなましもの妹(いも)が小床(をどこ)に 要旨 >>> 〈3353〉麁…

くはし妹に鮎を惜しみ・・・巻第13-3330~3332

訓読 >>> 3330こもくりの 泊瀬(はつせ)の川の 上(かみ)つ瀬に 鵜(う)を八(や)つ潜(かづ)け 下(しも)つ瀬に 鵜を八つ潜け 上つ瀬の 鮎(あゆ)を食(く)はしめ 下つ瀬の 鮎を食はしめ くはし妹(いも)に 鮎を惜(を)しみ くはし妹に 鮎を惜…

物思はず道行く行くも・・・巻第13-3305~3308

訓読 >>> 3305物思(ものも)はず 道行く行くも 青山を 振りさけ見れば つつじ花(はな) にほへ娘子(をとめ) 桜花(さくらばな) 栄(さか)へ娘子(をとめ) 汝(な)れをそも 我(わ)れに寄すといふ 我(わ)れをもそ 汝(な)れに寄すといふ 荒山…

妹すらを人妻なりと聞けば悲しも・・・巻第12-3115~3116

訓読 >>> 3115息の緒(を)に我(あ)が息づきし妹(いも)すらを人妻なりと聞けば悲しも3116我(わ)が故(ゆゑ)にいたくなわびそ後(のち)つひに逢はじと言ひしこともあらなくに 要旨 >>> 〈3115〉命のかぎり恋い焦がれて苦しく溜め息ついていたあ…

海石榴市の八十の衢に立ち平し・・・巻第12-2951

訓読 >>> 海石榴市(つばいち)の八十(やそ)の衢(ちまた)に立ち平(なら)し結びし紐(ひも)を解(と)かまく惜しも 要旨 >>> あの海石榴市の里の道のたくさん交わる辻で、あちこち歩き回り出逢ったあの人が、結んでくれた紐を解くのは、あまりに…