大和の国のこころ、万葉のこころ

不肖私がこよなく愛する『万葉集』の鑑賞blogです。

作者未詳歌

東歌(17)・・・巻第14-3572

訓読 >>> あど思(も)へか阿自久麻山(あじくまやま)の弓絃葉(ゆづるは)の含(ふふ)まる時に風吹かずかも 要旨 >>> いったい何をぐずぐずしているのか、阿自久麻山のユズリハがまだ蕾(つぼみ)の時だからといって、風が吹かないなんてことがある…

妹が袂をまかぬ夜もありき・・・巻第11-2547

訓読 >>> 斯(か)くばかり恋ひむものぞと念(おも)はねば妹(いも)が袂(たもと)をまかぬ夜(よ)もありき 要旨 >>> こんなに恋しくなるとは思わなかったから、一緒にいても、お前と寝ない夜もあった。 鑑賞 >>> 「妹が袂をまかぬ」は、妻の手…

秋の夜の月かも君は・・・巻第10-2299

訓読 >>> 秋の夜(よ)の月かも君は雲隠(くもがく)りしましく見ねばここだ恋しき 要旨 >>> あなたは秋の夜の月なのでしょうか。しばらくの間雲に隠れて見えなくなっただけで、こんなに恋しくてならないなんて。 鑑賞 >>> 雲に隠れて、ほんの少し…

東歌(16)・・・巻第14-3430

訓読 >>> 志太(しだ)の浦を朝(あさ)漕(こ)ぐ船は由(よし)なしに漕ぐらめかもよ由(よし)こさるらめ 要旨 >>> 志太の浦を朝早く漕いで行く舟は、わけもなくあんなに急いで漕いでいるのだろうか。そんな筈はない、きっとわけがあって漕いでいる…

見わたせば近き渡りをた廻り・・・巻第11-2379

訓読 >>> 見わたせば近き渡りをた廻(もとほ)り今か来(き)ますと恋ひつつぞ居(を)る 要旨 >>> 見渡すと、近い渡り場所なのに、回り道をしながらあなたがいらっしゃるのを、今か今かと待ち焦がれています。 鑑賞 >>> 「渡り」は、舟の渡し場に…

見れば恐し見ねば悲しも・・・巻第7-1369

訓読 >>> 天雲(あまくも)に近く光りて鳴る神の見れば恐(かしこ)し見ねば悲しも 要旨 >>> 遙か遠い天雲の近くで光って鳴る雷は、見るからに恐ろしいけれど、見なければ見ないで悲しい。 鑑賞 >>> 「天雲」は空にある雲。「鳴る神」は「雷」のこ…

鳴き立てる馬・・・巻第13-3327~3328

訓読 >>> 3327百小竹(ももしの)の 三野(みの)の王(おほきみ) 西の厩(うまや) 立てて飼(か)ふ駒(こま) 東(ひむがし)の厩(うまや) 立てて飼ふ駒 草こそば 取りて飼ふと言へ 水こそば 汲(く)みて飼ふと言へ 何しかも 葦毛(あしげ)の馬の…

旅にし居れば刈り薦の・・・巻第12-3176

訓読 >>> 草枕(くさまくら)旅にし居(を)れば刈り薦(こも)の乱れて妹(いも)に恋ひぬ日はなし 要旨 >>> 旅にあって寝床のために刈り取った薦が乱れるように、私の心は乱れて妻を恋しく思わない日はない。 鑑賞 >>> 「羈旅発思」(旅にあって…

琴取れば嘆き先立つ・・・巻第7-1129

訓読 >>> 琴(こと)取れば嘆き先立つけだしくも琴の下樋(したひ)に妻や隠(こも)れる 要旨 >>> 琴を弾こうと手にすると、先ず嘆きが先に立つ。ひょっとして亡き妻が下樋の中にこもっているのであろうか。 鑑賞 >>> 題詞に「倭琴(やまとごと)…

白玉は緒絶えしにきと・・・巻第16-3814~3815

訓読 >>> 3814白玉(しらたま)は緒絶(をだ)えしにきと聞きしゆゑにその緒(を)また貫(ぬ)き我(わ)が玉にせむ 3815白玉(しらたま)の緒絶(をだ)えはまこと然(しか)れどもその緒(を)また貫(ぬ)き人持ち去(い)にけり 要旨 >>> 〈3814…

秋田刈る仮廬を作り・・・巻第10-2174

訓読 >>> 秋田(あきた)刈る仮廬(かりほ)を作り我(わ)が居(を)れば衣手(ころもで)寒く露(つゆ)ぞ置きにける 要旨 >>> 秋の田を刈るための仮小屋を作って、私がそこにいると、着物の袖に寒く露が置いたことだ。 鑑賞 >>> 作者未詳歌。「…

白露と秋萩とには恋ひ乱れ・・・巻第10-2171~2173

訓読 >>> 2171白露(しらつゆ)と秋萩(あきはぎ)とには恋ひ乱れ別(わ)くことかたき我(あ)が心かも 2172我(わ)が宿(やど)の尾花(をばな)押しなべ置く露(つゆ)に手触れ我妹子(わぎもこ)散らまくも見む 2173白露(しらつゆ)を取らば消(け…

白栲の袖の別れを難みして・・・巻第12-3215~3216

訓読 >>> 3215白栲(しろたへ)の袖(そで)の別れを難(かた)みして荒津(あらつ)の浜に宿(やど)りするかも 3216草枕(くさまくら)旅行く君を荒津(あらつ)まで送りぞ来(き)ぬる飽(あ)き足(だ)らねこそ 要旨 >>> 〈3215〉このままあの子…

千江の浦廻の木積なす・・・巻第11-2724

訓読 >>> 秋風(あきかぜ)の千江(ちえ)の浦廻(うらみ)の木積(こつみ)なす心は寄りぬ後(のち)は知らねど 要旨 >>> 秋風が吹いて木の屑が千江の浜辺に打ち寄せられるように、私の心はあなたに寄せられました。行く末を知ることはできないけれど…

朝妻山の霞・・・巻第10-1817~1818

訓読 >>> 1817今朝(けさ)行きて明日は来(き)なむとねと云ひしかに朝妻山(あさづまやま)に霞(かすみ)たなびく 1818子等(こら)が名に懸(か)けのよろしき朝妻(あさづま)の片山(かたやま)ぎしに霞(かすみ)たなびく 要旨 >>> 〈1817〉今…

馬休め君・・・巻第7-1289

訓読 >>> 垣越(かきご)しに犬呼び越(こ)して鳥猟(とがり)する君(きみ) 青山(あおやま)の茂(しげ)き山辺(やまへ)に馬(うま)休め君 要旨 >>> 垣根の外から犬を呼び寄せて鷹狩をする若君よ、青山の葉が茂る山のほとりで馬を休めなさい、…

誰ぞ彼と問はば答へむ・・・巻第11-2545

訓読 >>> 誰(た)そ彼(かれ)と問はば答へむ術(すべ)をなみ君が使(つかひ)を帰しやりつも 要旨 >>> あの人は誰かと問われても、答えようがないので、あなたからの使いをそのまま帰してしまいました。 鑑賞 >>> 男との関係を家人に秘密にして…

仏前の唱歌・・・巻第8-1594

訓読 >>> 時雨(しぐれ)の雨(あめ)間(ま)なくな降りそ紅(くれなゐ)ににほへる山の散らまく惜(を)しも 要旨 >>> しぐれ雨よ、そんなに絶え間なく降らないでくれ。紅に色づいた山の紅葉が散ってしまうのが惜しいではないか。 鑑賞 >>> 左注…

天の川霧立ちわたる・・・巻第10-2067~2069

訓読 >>> 2067天(あま)の川(がは)渡り瀬(ぜ)深み舟(ふね)浮(う)けて漕(こ)ぎ来る君が楫(かぢ)の音(おと)聞こゆ 2068天(あま)の原(はら)振り放(さ)け見れば天(あま)の川(がは)霧(きり)立ちわたる君は来(き)ぬらし 2069天(…

鴨すらもおのが妻どちあさりして・・・巻第12-3091

訓読 >>> 鴨(かも)すらもおのが妻(つま)どちあさりして後(おく)るる間(あひだ)に恋ふといふものを 要旨 >>> 鴨でさえ、妻と一緒に餌をあさっているうちに、妻が少しでも遅れると恋しがるというのに。 鑑賞 >>> 夫から冷たくされている妻が…

壬申の乱の平定せし以後の歌・・・巻第19-4260~4261

訓読 >>> 4260大君(おほきみ)は神にしませば赤駒(あかごま)の腹這(はらば)ふ田居(たゐ)を都と成(な)しつ 4261大君(おほきみ)は神にしませば水鳥(みづどり)のすだく水沼(みぬま)を都と成(な)しつ 要旨 >>> 〈4260〉大君は神でいらっ…

桧隈川に馬留め・・・巻第12-3907

訓読 >>> さ桧隈(ひのくま)桧隈川(ひのくまかは)に馬(うま)留(とど)め馬に水(みづ)飼(か)へ我(わ)れ外(よそ)に見む 要旨 >>> 桧隈を流れる桧隈川のほとりに馬をとめて、馬に水をお与え下さい。私はよそながらあなたのお姿を眺めましょ…

東歌(15)・・・巻第14-3410

訓読 >>> 伊香保(いかほ)ろの沿(そ)ひの榛原(はりはら)ねもころに奥(おく)をな兼(か)ねそまさかしよかば 要旨 >>> 伊香保の山裾の榛原、その榛(はん)の木の入り組んだ根のように、くよくよと二人の先のことまで心配しなくていい。今の今が…

かくのみし相思はずあらば・・・巻第13-3258~3259

訓読 >>> 3258あらたまの 年は来(き)去りて 玉梓(たまづさ)の 使ひの来(こ)ねば 霞(かすみ)立つ 長き春日(はるひ)を 天地(あめつち)に 思ひ足(た)らはし たらちねの 母が飼(か)ふ蚕(こ)の 繭隠(まよごも)り 息づき渡り 我(あ)が恋…

汝が母を取らくを知らに・・・巻第13-3239

訓読 >>> 近江(あふみ)の海 泊(とま)り八十(やそ)あり 八十島(やそしま)の 島の崎々(さきざき) あり立てる 花橘(はなたちばな)を ほつ枝(え)に もち引き掛け 中つ枝(え)に 斑鳩(いかるが)懸け 下枝(しづえ)に 比米(ひめ)を懸け 汝…

膝に伏す玉の小琴の・・・巻第7-1328

訓読 >>> 膝(ひざ)に伏(ふ)す玉の小琴(をごと)の殊(こと)なくはいたくここだく我(あ)れ恋ひめやも 要旨 >>> 膝の上に載せて弾く大切な琴が、もし格別なものでなかったら、私はこんなにも激しく恋しい思いなどしないのに。 鑑賞 >>> 「日…

潮満たばいかにせむとか・・・巻第7-1216

訓読 >>> 潮(しほ)満(み)たばいかにせむとか海神(わたつみ)の神が手(て)渡る海人娘子(あまをとめ)ども 要旨 >>> 潮が満ちて来たらば、どうするつもりなのだろうか。海神の支配する恐ろしい場所を渡っている海人の娘たちは。 鑑賞 >>> 海…

藤原の宮の御井の歌・・・巻第1-52~53

訓読 >>> 52やすみしし わご大君 高照らす 日の皇子(みこ) あらたへの 藤井が原に 大御門(おほみかど) 始めたまひて 埴安(はにやす)の 堤(つつみ)の上に あり立たし 見したまへば 大和の 青香具山(あをかぐやま)は 日の経(たて)の 大き御門(…

向つ峰に立てる桃の木・・・巻第7-1356

訓読 >>> 向(むか)つ峰(を)に立てる桃(もも)の木ならむやと人ぞささやく汝(な)が心ゆめ 要旨 >>> 向こうの高所に立っている桃の木は、実などなるものかと人が噂している。尻込みなどしてはならないぞ。 鑑賞 >>> 作者未詳歌。「向つ峰」は…

防人の歌(11)・・・巻第20-4406

訓読 >>> 我(わ)が家(いは)ろに行かも人もが草枕(くさまくら)旅は苦しと告(つ)げ遣(や)らまくも 要旨 >>> 我が家のある故郷に行く人がいたらよいのに。旅は苦しくてならないと家の人に告げてもらうのに。 鑑賞 >>> 徴発された防人は、難…