大和の国のこころ、万葉のこころ

不肖私がこよなく愛する『万葉集』の鑑賞blogです。

作者未詳歌

二上山も妹こそありけれ・・・巻第7-1098

訓読 >>> 紀路(きぢ)にこそ妹山(いもやま)ありといへ玉櫛笥(たまくしげ)二上山(ふたかみやま)も妹(いも)こそありけれ 要旨 >>> 紀州には妹山という名高い山がある、という人の噂だが、大和の二上山にだって男山と女山が並んでいて、女山はあ…

鳴る神の少し響みて・・・巻第11-2513~2514

訓読 >>> 2513鳴る神の少し響(とよ)みてさし曇り雨も降らぬか君を留(とど)めむ 2514鳴る神の少し響(とよ)みて降らずとも我(わ)は留(とど)まらむ妹(いも)し留(とど)めば 要旨 >>> 〈2513〉少しでいいから雷が鳴り、空がかき曇って雨でも…

夜戸出の姿見てしより・・・巻第12-2950

訓読 >>> 我妹子(わぎもこ)が夜戸出(よとで)の姿見てしより心 空(そら)なり地(つち)は踏めども 要旨 >>> いとしいあの子が、夜、戸を開けて外に出てくる姿を見てからというもの、心は上の空だ、土は踏んでいるけれども。 鑑賞 >>> 「夜戸出…

波羅門の作れる小田を・・・巻第16-3856

訓読 >>> 波羅門(ばらもん)の作れる小田(をだ)を食(は)む烏(からす)瞼(まぶた)腫(は)れて幡桙(はたほこ)に居(を)り 要旨 >>> 波羅門さまが耕してらっしゃる田の稲を食い荒らしたカラスは、瞼ががふくれあがって旗竿にとまっている。 …

山も狭に咲ける馬酔木の・・・巻第8-1428

訓読 >>> おしてる 難波(なには)を過ぎて うちなびく 草香(くさか)の山を 夕暮(ゆふぐれ)に 我(わ)が越え来れば 山も狭(せ)に 咲ける馬酔木(あしび)の 悪(あ)しからぬ 君をいつしか 行きてはや見む 要旨 >>> 難波を過ぎて、草香の山を夕…

山ながらかくも現しく・・・巻第13-3332

訓読 >>> 高山(たかやま)と 海とこそば 山ながら かくも現(うつ)しく 海ながら しか真(まこと)ならめ 人は花物(はなもの)そ うつせみ世人(よひと) 要旨 >>> 高い山と海こそは、山であるがゆえに確かに存在し、海であるがゆえにはっきりと存…

飯食めどうまくもあらず・・・巻第16-3857

訓読 >>> 飯(いひ)食(は)めど うまくもあらず 行き行けど 安くもあらず あかねさす 君が心し忘れかねつも 要旨 >>> ご飯を食べても美味しくないし、いくら歩き回っても心は落ち着きません。あなたの真心を忘れることができません。 鑑賞 >>> 左…

人妻に言ふは誰が言・・・巻第12-2866

訓読 >>> 人妻に言ふは誰(た)が言(こと)さ衣(ごろも)のこの紐(ひも)解けと言ふは誰が言(こと) 要旨 >>> 人妻である私に言い寄るのは誰のおことば? 下着の紐を解いて寝ようと言い寄るのは誰のおことば? 鑑賞 >>> 「さ衣」の「さ」は接頭…

東歌(12)・・・巻第14‐3399

訓読 >>> 信濃道(しなぬぢ)は今の墾(は)り道 刈りばねに足踏ましなむ沓(くつ)はけ我(わ)が背 要旨 >>> 信濃道(しなのぢ)は切り拓いたばかりの道です。きっと切り株をお踏みになるでしょう。靴を履いてお越しになって下さい、あなた。 鑑賞 …

幸はひのいかなる人か・・・巻第7-1411

訓読 >>> 幸(さき)はひのいかなる人か黒髪(くろかみ)の白くなるまで妹(いも)が音(こゑ)を聞く 要旨 >>> 自分は恋しい妻をもう亡くしたが、白髪になるまで二人とも健やかで、妻の声を聞くことができる人は何と幸せな人だろう、うらやましいこと…

我が宿の花橘は・・・巻第10-1969

訓読 >>> 我が宿(やど)の花橘(はなたちばな)は散りにけり悔(くや)しき時に逢へる君かも 要旨 >>> 我が家の庭の花橘は散ってしまいました。こんな時にあなたにお逢いするのがとても残念です。 鑑賞 >>> 類想の多い歌であり、来訪した客に対し…

彼方の埴生の小屋に・・・巻第11-2683

訓読 >>> 彼方(をちかた)の埴生(はにふ)の小屋(をや)に小雨降り床(とこ)さへ濡(ぬ)れぬ身に添へ我妹(わぎも) 要旨 >>> 人里離れたこの粗末な埴生の家に、小雨が降り床まで濡れてしまった。妻よ私に寄り添ってくれ。 鑑賞 >>> 「彼方」…

韓衣 君にうち着せ・・・巻第11-2682

訓読 >>> 韓衣(からころも)君にうち着せ見まく欲(ほ)り恋ひぞ暮らしし雨の降る日を 要旨 >>> 韓衣をあの人に着せてみて、その姿を見たいと、恋い焦がれつつ過ごしました。雨の降るこの日を。 鑑賞 >>> 妻が、自身で縫った韓衣を夫に着せてあげ…

東歌(11)・・・巻第14-3428

訓読 >>> 安達太良(あだたら)の嶺(ね)に臥(ふ)す鹿猪(しし)のありつつも我(あ)れは至らむ寝処(ねど)な去りそね 要旨 >>> 安達太良山の鹿猪(しし)がいつも同じねぐらに帰って寝るように、私も毎晩通ってきて共寝をしようと思うから、その…

卯の花の咲き散る岡ゆ・・・巻第10-1976~1977

訓読 >>> 1976卯(う)の花の咲き散る岡ゆ霍公鳥(ほととぎす)鳴きてさ渡る君は聞きつや 1977聞きつやと君が問はせる霍公鳥(ほととぎす)しののに濡れてこゆ鳴き渡る 要旨 >>> 〈1976〉卯の花が咲き散る岡の上を、霍公鳥が鳴いて渡っていきましたよ…

海は荒るとも採らずはやまじ・・・巻第7-1317

訓読 >>> 海(わた)の底(そこ)沈(しづ)く白玉(しらたま)風吹きて海は荒(あ)るとも採(と)らずはやまじ 要旨 >>> 海の底に沈んでいる真珠は、どんなに風が吹き海は荒れても、手に採らずにおくものか。 鑑賞 >>> 「玉に寄せる」歌で、玉(…

このころの我が恋力・・・巻第16-3858~3859

訓読 >>> 3858このころの我(あ)が恋力(こひぢから)記(しる)し集め功(くう)に申(まを)さば五位の冠(かがふり) 3859このころの我(あ)が恋力(こひぢから)給(たま)らずは京兆(みさとづかさ)に出(い)でて訴(うれ)へむ 要旨 >>> 〈3…

天霧らひ日方吹くらし・・・巻第7-1231

訓読 >>> 天霧(あまぎ)らひ日方(ひかた)吹くらし水茎(みづくき)の岡(をか)の水門(みなと)に波立ちわたる 要旨 >>> 空一面に霧がかかってきて、東風が吹いているのか、岡の港に波が押し寄せてきた。 鑑賞 >>> 「覊旅(きりょ)」の歌。巻…

橘の寺の長屋に我が率寝し・・・巻第16-3822

訓読 >>> 橘(たちばな)の寺の長屋(ながや)に我(わ)が率寝(ゐね)し童女放髪(うなゐはなり)は髪(かみ)上げつらむか 要旨 >>> 橘寺の僧坊長屋に私が連れ込んで寝たおかっぱ頭の少女は、もう一人前の女になって、髪を結い上げたであろうか。 …

東歌(10)・・・巻第14-3577

訓読 >>> 愛(かな)し妹(いも)をいづち行かめと山菅(やますげ)の背向(そがひ)に寝(ね)しく今し悔(くや)しも 要旨 >>> 愛しい妻が死んでしまうとは思わないで、山菅の葉のように背を向け合って寝たことが、今となっては悔やまれてならない。…

落ち激ち流るる水の・・・巻第9-1713~1714

訓読 >>> 1713滝の上の三船(みふね)の山ゆ秋津(あきつ)べに来鳴きわたるは誰呼子鳥(たれよぶこどり) 1714落ち激(たぎ)ち流るる水の磐(いは)に触(ふ)り淀(よど)める淀に月の影(かげ)見ゆ 要旨 >>> 〈1713〉吉野川の滝の上にそびえる御…

花よりは実になりてこそ・・・巻第7-1364~1365

訓読 >>> 1364見まく欲(ほ)り恋ひつつ待ちし秋萩(あきはぎ)は花のみ咲きて成(な)らずかもあらむ 1365我妹子(わぎもこ)が屋前(やど)の秋萩(あきはぎ)花よりは実になりてこそ恋ひまさりけれ 要旨 >>> 〈1364〉見たい見たいと待ち続けていた…

みをつくし心尽くして・・・巻第12-3162

訓読 >>> みをつくし心尽くして思へかもここにももとな夢(いめ)にし見ゆる 要旨 >>> 家の妻が、身を尽くし心を尽くして私のことを思ってくれているせいか、旅先のここにいても、わけもなく妻の姿が夢に出てくる。 鑑賞 >>> 「羈旅発思」(旅にあ…

実にならずとも・・・巻第10-1928~1929

訓読 >>> 1928狭野方(さのかた)は実にならずとも花のみに咲きて見えこそ恋のなぐさに 1929狭野方(さのかた)は実になりにしを今さらに春雨(はるさめ)降りて花咲かめやも 要旨 >>> 〈1928〉狭野方は実にならなくてもよいから、せめて花だけでも咲…

水死者を見て詠んだ歌・・・巻第13-3336~3338

訓読 >>> 3336鳥が音(ね)の 神島(かしま)の海に 高山(たかやま)を 隔(へだ)てになして 沖つ藻(も)を 枕(まくら)になし 蛾羽(ひむしは)の 衣(きぬ)だに着ずに いさなとり 海の浜辺(はまへ)に うらもなく 臥(ふ)したる人は 母父(おも…

大宮人は暇あれや・・・巻第10-1883

訓読 >>> ももしきの大宮人(おほみやひと)は暇(いとま)あれや梅をかざしてここに集(つど)へる 要旨 >>> 大宮人たちは暇(いとま)があるからだろうか、梅をかざしてここに集まっている。 鑑賞 >>> 題詞に「野遊(やいう)」とある4首のうちの…

春霞 流れるなへに・・・巻第10-1821

訓読 >>> 春霞(はるかすみ)流るるなへに青柳(あをやぎ)の枝くひもちて鶯(うぐひす)鳴くも 要旨 >>> 春霞が流れるにつれて、青柳の枝をくわえたウグイスが鳴いている。 鑑賞 >>> 「霞」といえば、たなびくという表現が多いなかにあって「流れ…

妻といふべしや・・・巻第7-1257

訓読 >>> 道の辺(へ)の草深百合(くさぶかゆり)の花笑(はなゑ)みに笑みしがからに妻と言ふべしや 要旨 >>> 道のほとりの繁みに咲く百合の花のように、ちょっと微笑みかけたからといって、妻とは決めてかからないでください。 鑑賞 >>> ちょっ…

かくのみにありけるものを・・・巻第16-3804

訓読 >>> かくのみにありけるものを猪名川(ゐながは)の奥(おき)を深めて我(あ)が思(おも)へりける 要旨 >>> こんなにやつれ果てているとも知らず、猪名川の深い川底のように、心の底深く私はそなたのことを思い続けていた。 鑑賞 >>> 序詞…

咲きにほえる桜花・・・巻第10-1869~1872

訓読 >>> 1869春雨(はるさめ)に争ひかねて我が宿の桜の花は咲きそめにけり 1870春雨はいたくな降りそ桜花いまだ見なくに散らまく惜しも 1871春されば散らまく惜しき梅の花しましは咲かず含(ふふ)みてもがも 1872見わたせば春日の野辺(のへ)に霞(か…