大和の国のこころ、万葉のこころ

不肖私がこよなく愛する『万葉集』の鑑賞blogです。

作者未詳歌

持統太上天皇と文武天皇の紀伊国行幸の折の歌(3)・・・巻第9-1676~1679

訓読 >>> 1676背(せ)の山に黄葉(もみち)常敷(つねし)く神岡(かみをか)の山の黄葉は今日(けふ)か散るらむ 1677大和には聞こえも行くか大我野(おほがの)の竹葉(たかは)刈り敷き廬(いほ)りせりとは 1678紀の国の昔(むかし)弓雄(ゆみを)…

持統太上天皇と文武天皇の紀伊国行幸の折の歌(2)・・・巻第9-1672~1675

訓読 >>> 1672黒牛潟(くろうしがた)潮干(しほひ)の浦を紅(くれなゐ)の玉裳(たまも)裾(すそ)ひき行くは誰(た)が妻 1673風莫(かざなし)の浜の白波いたづらにここに寄せ来(く)る見る人なしに [一云 ここに寄せ来(く)も] 1674我(わ)が背…

持統太上天皇と文武天皇の紀伊国行幸の折の歌(1)・・・巻第9-1668~1671

訓読 >>> 1668白崎(しらさき)は幸(さき)くあり待て大船(おほぶね)に真梶(まかぢ)しじ貫(ぬ)きまたかへり見む 1669南部(みなべ)の浦(うら)潮な満ちそね鹿島(かしま)なる釣りする海人(あま)を見て帰り来(こ)む 1670朝開(あさびら)き…

春されば樹の木の暗の夕月夜・・・巻第10-1875

訓読 >>> 春されば樹(き)の木(こ)の暗(くれ)の夕月夜(ゆふづくよ)おぼつかなしも山陰(やまかげ)にして 要旨 >>> 春になって木々が萌え茂り、それが山陰であるので、ただでさえ光の薄い夕月夜が、いっそう薄くほのかだ。 鑑賞 >>> 「月を…

眉根掻き鼻ひ紐解け・・・巻第11-2808~2809

訓読 >>> 2808眉根(まよね)掻(か)き鼻(はな)ひ紐(ひも)解け待てりやもいつかも見むと恋ひ来(こ)し我(あ)れを 2809今日(けふ)なれば鼻ひ鼻ひし眉(まよ)かゆみ思ひしことは君にしありけり 要旨 >>> 〈2808〉眉を掻き、くしゃみをして、…

朝寝髪われは梳らじ・・・巻第11-2578

訓読 >>> 朝寝髪(あさねがみ)われは梳(けづ)らじ愛(うるは)しき君が手枕(たまくら)触れてしものを 要旨 >>> 朝の寝乱れた髪を梳るまい、愛しいあなたの手枕が触れた髪だから。 鑑賞 >>> 「正述心緒(ありのままに思いを述べた歌)」。夫が…

うつせみの命を長くありこそと・・・巻第13-3291~3292

訓読 >>> 3291み吉野の 真木(まき)立つ山に 青く生(お)ふる 山菅(やますが)の根の ねもころに 我(あ)が思(おも)ふ君は 大君(おほきみ)の 任(ま)けのまにまに〈或る本に云ふ、大君の命(みこと)恐(かしこ)み〉 鄙離(ひなざか)る 国 治…

住吉の小集楽に出でて・・・巻第16-3808

訓読 >>> 住吉(すみのえ)の小集楽(をづめ)に出でてうつつにもおの妻(づま)すらを鏡と見つも 要旨 >>> 妻と二人で住吉の歌垣の集まりに出てみたが、自分の妻ながら、夢ではなくまざまざと、鏡のように光り輝いて見えた。 鑑賞 >>> この歌には…

我が紐を妹が手もちて・・・巻第7-1114~1115

訓読 >>> 1114我(わ)が紐(ひも)を妹(いも)が手もちて結八川(ゆふやがは)またかへり見む万代(よろづよ)までに 1115妹(いも)が紐(ひも)結八河内(ゆふやかふち)をいにしへのみな人(ひと)見きとここを誰(た)れ知る 要旨 >>> 〈1114〉…

この小川霧ぞ結べる・・・巻第7-1113

訓読 >>> この小川(をがは)霧(きり)ぞ結べるたぎちゆく走井(はしりゐ)の上に言挙(ことあ)げせねど 要旨 >>> この小川に白い霧が立ち込めている。たぎり落ちる湧き水のところで、言挙げなどしていないのに。 鑑賞 >>> 「河を詠む」歌。「走…

東歌(35)・・・巻第14-3529

訓読 >>> 等夜(とや)の野に兎(をさぎ)狙(ねら)はりをさをさも寝なへ児(こ)ゆゑに母にころはえ 要旨 >>> 等夜(とや)の野に兎を狙っているわけではないが、ろくすっぽ寝てもいないあの子なのに、母親にこっぴどく叱られてしまった。 鑑賞 >>…

海原の道に乗りてや・・・巻第11-2367

訓読 >>> 海原(うなはら)の道に乗りてや我(あ)が恋ひ居(を)らむ 大船のゆたにあるらむ人の子ゆゑに 要旨 >>> 大海原の船路に乗って行方を託すように、私は苦しんでいなければならないのか。大船に乗ってゆったり構えているだろうあの子のせいで…

駅路に引き舟渡し直乗りに・・・巻第11-2748~2749

訓読 >>> 2748大船(おほぶね)に葦荷(あしに)刈り積みしみみにも妹(いも)は心に乗りにけるかも 2749駅路(はゆまぢ)に引き舟渡し直(ただ)乗りに妹(いも)は心に乗りにけるかも 要旨 >>> 〈2748〉大船に刈り取った葦をどっさり積んだように、…

君に恋ひ萎えうらぶれ・・・巻第10-2298

訓読 >>> 君に恋ひ萎(しな)えうらぶれ我(あ)が居(を)れば秋風吹きて月かたぶきぬ 要旨 >>> あなたに恋い焦がれ、打ちしおれてしょんぼりしている間に、秋風が吹き、いつの間にか月が西空に傾いてしまいました。 鑑賞 >>> 「月に寄せる」歌。…

東歌(34)・・・巻第14-3544

訓読 >>> 阿須可川(あすかがは)下(した)濁(にご)れるを知らずして背(せ)ななと二人さ寝(ね)て悔しも 要旨 >>> 阿須可川の底が濁っていること、そう、心が濁っているのを知らずに、あんな人と寝てしまって、なんて悔しい。 鑑賞 >>> 女の歌…

春日なる御笠の山に・・・巻第7-1295

訓読 >>> 春日(かすが)なる御笠(みかさ)の山に月の舟(ふね)出(い)づ遊士(みやびを)の飲む酒杯(さかづき)に影に見えつつ 要旨 >>> 春日の三笠の山に、船のような月が出た。風流な人たちが飲む酒杯の中に映り見えながら。 鑑賞 >>> 巻第7…

色に出でて恋ひば・・・巻第11-2566

訓読 >>> 色に出でて恋ひば人見て知りぬべし心のうちの隠(こも)り妻はも 要旨 >>> 顔色に出して恋い慕ったなら、人が見咎めて知るだろう、心のうちの隠し妻のことを。 鑑賞 >>> 「正述心緒(ありのままに思いを述べた歌)」。「色に出でて」は、…

誰れそこのわが屋戸来喚ぶ・・・巻第11-2527

訓読 >>> 誰(た)れそこのわが屋戸(やど)来(き)喚(よ)ぶたらちねの母にころはえ物思(ものも)ふわれを 要旨 >>> 誰なんですか? この家に来て私の名前を呼ぶのは。たった今お母さんに叱られて、物思いにふけっているというのに。 鑑賞 >>> …

笠なしと人には言ひて・・・巻第11-2684

訓読 >>> 笠なしと人には言ひて雨(あま)障(つつ)み留(と)まりし君が姿し思ほゆ 要旨 >>> 笠がないのでと人には言って、雨宿りして泊まっていったあなたの姿が思い出されます。 鑑賞 >>> 「寄物陳思(物に寄せて思いを述べた歌)」。「人には…

東歌(33)・・・巻第14-3491~3493

訓読 >>> 3491柳(やなぎ)こそ伐(き)れば生(は)えすれ世の人の恋に死なむをいかにせよとぞ 3492小山田(をやまだ)の池の堤(つつみ)にさす柳(やなぎ)成りも成らずも汝(な)と二人はも 3493遅速(おそはや)も汝(な)をこそ待ため向(むか)つ…

燈の影に輝ふ・・・巻第11-2642

訓読 >>> 燈(ともしび)の影に輝(かがよ)ふうつせみの妹(いも)が笑(ゑ)まひし面影(おもかげ)に見ゆ 要旨 >>> 燈火の光りにきらめいていたあの娘の笑顔が、今も面影に現れて見えることだ。 鑑賞 >>> 「寄物陳思(物に寄せて思いを述べた歌…

若草の新手枕をまきそめて・・・巻第11-2542

訓読 >>> 若草の新手枕(にひたまくら)をまきそめて夜(よ)をや隔てむ憎くあらなくに 要旨 >>> 新妻の手枕をまき始めて、これから幾夜も逢わずにいられようか、可愛くて仕方ないのに。 鑑賞 >>> 「正述心緒(ありのままに思いを述べた歌)」。「…

射ゆ鹿を認ぐ川辺の・・・巻第16-3874

訓読 >>> 射(い)ゆ鹿(しし)を認(つな)ぐ川辺(かはへ)のにこ草(ぐさ)の身の若(わか)かへにさ寝(ね)し子らはも 要旨 >>> 射られた手負い鹿の跡を追っていくと、川辺ににこ草が生えていた。そのにこ草のように若かった日に、あの子と寝たの…

足柄の箱根飛び越え・・・巻第7-1175

訓読 >>> 足柄(あしがら)の箱根(はこね)飛び越え行く鶴(たづ)の羨(とも)しき見れば大和し思ほゆ 要旨 >>> 足柄の箱根の山を飛び越えて行く鶴の、その羨ましいのを見ると、大和が恋しく思われる。 鑑賞 >>> 「覊旅(旅情を詠む)」歌。「足…

人魂のさ青なる君が・・・巻第16-3887~3889

訓読 >>> 3887天(あめ)にあるやささらの小野(をの)に茅草(ちがや)刈り草(かや)刈りばかに鶉(うづら)を立つも3888沖つ国うしはく君の塗(ぬ)り屋形(やかた)丹塗(にぬ)りの屋形(やかた)神の門(と)渡る3889人魂(ひとだま)のさ青(を)…

かくしてやなほや老いなむ・・・巻第7-1349~1352

訓読 >>> 1349かくしてやなほや老いなむみ雪降る大荒木野(おひあらきの)の小竹(しの)にあらなくに 1350近江のや八橋(やばせ)の小竹(しの)を矢はがずてまことありえむや恋(こほ)しきものを 1351月草(つきくさ)に衣(ころも)は摺(す)らむ朝…

吾が齢し衰へぬれば・・・巻第12-2952

訓読 >>> 吾が齢(よはひ)し衰(おとろ)へぬれば白細布(しろたへ)の袖のなれにし君をしぞ思ふ 要旨 >>> おれも年を取って体も衰えてしまったが、今しげしげと通わなくても、長年馴れ親しんだお前のことが思い出されてならない。 鑑賞 >>> 作者…

東歌(32)・・・巻第14-3565

訓読 >>> かの子ろと寝(ね)ずやなりなむはだすすき宇良野(うらの)の山に月(つく)片寄るも 要旨 >>> 今夜はあの子と共寝することなく終わりそうだ。はだすすきの繁る宇良野の山に月が傾いてきた。 鑑賞 >>> 「はだすすき」は穂を出した薄で、…

うつつにか妹が来ませる・・・巻第12-2917

訓読 >>> うつつにか妹(いも)が来ませる夢(いめ)にかも我(わ)れか惑(まど)へる恋の繁(しげ)きに 要旨 >>> 実際に彼女がやってきたのか、それとも夢なのか、あるいは私が取り乱しているのか、恋の激しさのために。 鑑賞 >>> 作者未詳の「…

山の際に渡る秋沙の・・・巻第7-1122~1124

訓読 >>> 1122山の際(ま)に渡る秋沙(あきさ)の行きて居(ゐ)むその川の瀬に波立つなゆめ 1123佐保川(さほがは)の清き川原に鳴く千鳥(ちどり)かはづと二つ忘れかねつも 1124佐保川に騒(さは)ける千鳥さ夜(よ)更けて汝(な)が声聞けば寝(い…