大和の国のこころ、万葉のこころ

不肖私がこよなく愛する『万葉集』の鑑賞blogです。

大伴旅人の歌

大伴旅人の松浦川に遊ぶ歌(4)・・・巻第5-861~863

訓読 >>> 861松浦川(まつらがは)川の瀬(せ)速(はや)み紅(くれなゐ)の裳(も)の裾(すそ)濡れて鮎か釣るらむ 862人(ひと)皆(みな)の見らむ松浦(まつら)の玉島を見ずてや我(わ)れは恋ひつつ居(を)らむ 863松浦川(まつらがは)玉島の浦…

大伴旅人の松浦川に遊ぶ歌(3)・・・巻第5-858~860

訓読 >>> 858若鮎(わかゆ)釣る松浦(まつら)の川の川なみの並(なみ)にし思はば我(わ)れ恋ひめやも 859春されば吾家(わぎへ)の里の川門(かはと)には鮎子(あゆこ)さ走(ばし)る君待ちがてに 860松浦川(まつらがは)七瀬(ななせ)の淀(よど…

大伴旅人の松浦川に遊ぶ歌(2)・・・巻第5-855~857

訓読 >>> 855松浦川(まつらがは)川の瀬(せ)光り鮎(あゆ)釣ると立たせる妹(いも)が裳(も)の裾(すそ)濡(ぬ)れぬ 856松浦(まつら)なる玉島川(たましまがは)に鮎(あゆ)釣ると立たせる子らが家路(いへぢ)知らずも 857遠つ人松浦(まつら…

大伴旅人の松浦川に遊ぶ歌(1)・・・巻第5-853~854

訓読 >>> 松浦川(まつらがは)に遊ぶ序 余(やつかれ)、暫(たまさか)に松浦の県(あがた)に往(ゆ)きて逍遥(せうえう)し、聊(いささ)かに玉島の潭(ふち)に臨みて遊覧するに、忽(たちま)ちに魚を釣る女子等(をとめら)に値(あ)ひぬ。花の…

筑紫で妻を亡くし、都に戻った大伴旅人が作った歌・・・巻第3-451~453

訓読 >>> 451人もなき空しき家は草枕(くさまくら)旅にまさりて苦しくありけり 452妹として二人作りしわが山斎(しま)は木高く繁くなりにけるかも 453我妹子(わぎもこ)が植ゑし梅の木見るごとに心(こころ)咽(む)せつつ涙し流る 要旨 >>> 〈451…

筑紫で妻をなくした大伴旅人が帰京途上に作った歌・・・巻第3-446~450

訓読 >>> 446吾妹子(わぎもこ)が見し鞆(とも)の浦のむろの木は常世(とこよ)にあれど見し人ぞなき 447鞆(とも)の浦の磯(いそ)のむろの木見むごとに相(あひ)見し妹(いも)は忘らえめやも 448磯(いそ)の上に根(ね)這(は)ふむろの木見し人…

大伴旅人が亡き妻を恋い慕って作った歌・・・巻第3-438~440

訓読 >>> 438愛(うつく)しき人のまきてし敷妙(しきたへ)のわが手枕(たまくら)をまく人あらめや 439帰るべく時はなりけり都にて誰(た)が手本(たもと)をか我が枕(まくら)かむ 440都なる荒れたる家にひとり寝(ね)ば旅にまさりて苦しかるべし …

我が岡にさを鹿来鳴く・・・巻第8-1541~1542

訓読 >>> 1541我(わ)が岡(をか)にさを鹿(しか)来鳴(きな)く初萩(はつはぎ)の花妻(はなづま)どひに来鳴くさを鹿 1542我(わ)が岡(をか)の秋萩(あきはぎ)の花(はな)風をいたみ散るべくなりぬ見む人もがも 要旨 >>> 〈1541〉我が家の…

うるはしき君が手馴れの琴にしあるべし・・・巻第5-810~811

訓読 >>> 810いかにあらむ日の時にかも声知らむ人の膝(ひざ)の上(へ)我が枕(まくら)かむ 811言(こと)問はぬ木にはありともうるはしき君が手馴(たな)れの琴(こと)にしあるべし 要旨 >>> 〈810〉何時の日にか、私の音色を分かってくださる方…

龍の馬も今も得てしか・・・巻第5-806~809

訓読 >>> 806龍(たつ)の馬(ま)も今も得てしかあをによし奈良の都に行きて来(こ)むため 807うつつには逢ふよしもなしぬばたまの夜(よる)の夢(いめ)にを継(つ)ぎて見えこそ 808龍(たつ)の馬(ま)を我(あ)れは求めむあをによし奈良の都に来…

君がため醸みし待酒・・・巻第4-555

訓読 >>> 君がため醸(か)みし待酒(まちざけ)安(やす)の野にひとりや飲まむ友なしにして 要旨 >>> あなたと飲み交わそうと醸造しておいた酒も、安の野で一人寂しく飲むことになるのか。友がいなくなってしまうので。 鑑賞 >>> 大宰帥の大伴旅…

大伴旅人が遊行女婦、児島の歌に答えた歌・・・巻第6-967~968

訓読 >>> 967倭道(やまとぢ)の吉備(きび)の児島(こじま)を過ぎて行かば筑紫(つくし)の児島(こじま)思ほえむかも968大夫(ますらを)と思へる吾(われ)や水茎(みづくき)の水城(みづき)のうへに涕(なみだ)拭(のご)はむ 要旨 >>> 〈96…

沫雪のほどろほどろに降り敷しけば・・・巻第8-1639~1640

訓読 >>> 1639沫雪(あわゆき)のほどろほどろに降り敷しけば奈良の都し思ほゆるかも 1640我(わ)が岡(をか)に盛りに咲ける梅の花残れる雪をまがへつるかも 要旨 >>> 〈1639〉淡雪がうっすらと地面に降り積もると、奈良の都が思われてならない。 〈…

大伴旅人が松浦佐用姫伝説を歌った歌・・・巻第5-871~875

訓読 >>> 871遠つ人 松浦佐用姫(まつらさよひめ)夫恋(つまご)ひに領巾(ひれ)振りしより負(お)へる山の名 872山の名と言ひ継げとかも佐用姫(さよひめ)がこの山の上(へ)に領巾(ひれ)を振りけむ 873万世(よろづよ)に語り継げとしこの岳(た…

わが盛また変若めやも・・・巻第3-331~334

訓読 >>> 331わが盛(さかり)また変若(をち)めやもほとほとに平城(なら)の京(みやこ)を見ずかなりけむ 332わが命(いのち)も常にあらぬか昔見し象(きさ)の小河(をがは)を行きて見むため 333浅茅原(あさぢばら)つばらつばらにもの思(も)へ…

あをによし奈良の都は・・・巻第3-328~331

訓読 >>> 328あをによし奈良の都は咲く花のにほふがごとく今盛りなり 329やすみしし我が大君(おほきみ)の敷きませる国の中(うち)には都し思(おも)ほゆ 330藤波(ふぢなみ)の花は盛りになりにけり奈良の都を思ほすや君 331わが盛(さかり)また変若…

橘の花散る里の霍公鳥・・・巻第8-1472~1473

訓読 >>> 1472霍公鳥(ほととぎす)来鳴きとよもす卯(う)の花の共にや来(こ)しと問はましものを1473橘(たちばな)の花散る里の霍公鳥(ほととぎす)片恋(かたこひ)しつつ鳴く日しぞ多き 要旨 >>> 〈1472〉ホトトギスが来て鳴き声を響かせている…

世の中は空しきものと知る時し・・・巻第5-793

訓読 >>> 世の中は空(むな)しきものと知る時しいよよますます悲しかりけり 要旨 >>> 世の中がむなしく無常だと現実に知り、今までよりもますます悲しい。 鑑賞 >>> 大伴旅人が、筑紫で妻を失くした時の歌。大宰府に着いてまだ日も浅い神亀5年(72…

み吉野の吉野の宮は山からし・・・巻第3-315~316

訓読 >>> 315み吉野の 吉野の宮は 山からし 貴くあらし 川からし さやけくあらし 天地(あめつち)と 長く久しく 万代(よろづよ)に 変はらずあらむ 幸(いでま)しの宮 316昔見し象(きさ)の小川を今見ればいよよさやけくなりにけるかも 要旨 >>> …

梅花の歌(2)・・・巻第5-818~822

訓読 >>> 818春さればまづ咲く宿の梅の花独り見つつや春日(はるひ)暮(くら)さむ 819世の中は恋 繁(しげ)しゑやかくしあらば梅の花にもならましものを 820梅の花今盛りなり思ふどち挿頭(かざし)にしてな今盛りなり 821青柳(あをやなぎ)梅との花…

大伴旅人の「酒を讃える歌」・・・巻第3-338ほか

訓読 >>> 338験(しるし)なきもの思(おも)はずは一坏(ひとつき)の濁(にご)れる酒を飲むべくあるらし 339酒の名を聖(ひじり)と負(おほ)せし古(いにしへ)の大(おほ)き聖(ひじり)の言(こと)の宜(よろ)しさ 340古(いにしへ)の七(なな…