大和の国のこころ、万葉のこころ

不肖私がこよなく愛する『万葉集』の鑑賞blogです。

巻第1

持統天皇の伊勢行幸の折、都に残った柿本人麻呂が作った歌・・・巻第1-40~42

訓読 >>> 40嗚呼見(あみ)の浦に船乗りすらむをとめらが玉裳(たまも)の裾(すそ)に潮(しほ)満つらむか 41釧(くしろ)着く手節(たふし)の崎に今日(けふ)もかも大宮人(おほみやひと)の玉藻(たまも)刈るらむ 42潮騒(しほさゐ)に伊良虞(い…

大丈夫のさつ矢手挟み・・・巻第1-61

訓読 >>> 大丈夫(ますらを)のさつ矢(や)手挟(たばさ)み立ち向ひ射(い)る圓方(まとかた)は見るにさやけし 要旨 >>> ますらおが、矢を手挟んで立ち向かい射貫く的、その名の圓方の浜は見るからに清々しい。 鑑賞 >>> 舎人娘子(とねりのお…

葦べ行く鴨の羽がひに・・・巻第1-64

訓読 >>> 葦(あし)べ行く鴨(かも)の羽(は)がひに霜(しも)降りて寒き夕べは大和し思ほゆ 要旨 >>> 葦が生い茂る水面を行く鴨の羽がいに霜が降っている。このような寒い夕暮れは、大和のことがしみじみ思い出される。 鑑賞 >>> 志貴皇子の歌…

山辺の御井を見がてり・・・巻第1-81~83

訓読 >>> 81山辺(やまのへ)の御井(みゐ)を見がてり神風(かむかぜ)の伊勢娘子(いせをとめ)どもあひ見つるかも 82うらさぶる心さまねしひさかたの天(あま)のしぐれの流らふ見れば 83海(わた)の底(そこ)沖つ白波(しらなみ)龍田山(たつたや…

軍王の歌・・・巻第1-5~6

訓読 >>> 5霞(かすみ)立つ 長き春日(はるひ)の 暮れにける わづきも知らず むら肝(ぎも)の 心を痛み ぬえこ鳥 うら泣き居(を)れば 玉たすき 懸(か)けのよろしく 遠つ神 我が大君(おほきみ)の 行幸(いでまし)の 山越す風の ひとり居(を)る…

大和には鳴きてか来らむ呼子鳥・・・巻第1-70

訓読 >>> 大和には鳴きてか来(く)らむ呼子鳥(よぶこどり)象(きさ)の中山(なかやま)呼びそ越(こ)ゆなる 要旨 >>> 大和には今ごろ呼子鳥が鳴いて来ているのだろうか。象の中山を人を呼びながら鳴き渡っている声が聞こえる。 鑑賞 >>> 高市…

我が背子がい立たせりけむ・・・巻第1-9

訓読 >>> 莫囂円隣之大相七兄爪謁気 我が背子がい立たせりけむ厳橿(いつかし)が本(もと) 要旨 >>> ・・・・・・愛するあなたが立っていた、山麓の神聖な樫の木のもと。 鑑賞 >>> 額田王(ぬかだのおおきみ)の「紀の温泉に幸せる時に、額田王の作る」…

中大兄皇子の大和三山の歌・・・巻第1-13~15

訓読 >>> 13香具山(かぐやま)は 畝火(うねび)を愛(を)しと 耳梨(みみなし)と 相(あひ)あらそひき 神代(かみよ)より 斯(か)くにあるらし 古昔(いにしへ)も 然(しか)にあれこそ うつせみも 妻(つま)を あらそふらしき 14香具山(かぐや…

この洲崎廻に鶴鳴くべしや・・・巻第1-71

訓読 >>> 大和(やまと)恋ひ寐(い)の寝(ね)らえぬに心なくこの洲崎廻(すさきみ)に鶴(たづ)鳴くべしや 要旨 >>> 大和が恋しくて寝るに寝られないのに、思いやりもなく、この洲崎あたりで鶴が鳴いてよいものだろうか。 鑑賞 >>> 忍坂部乙麻…

いづくにか船泊てすらむ・・・巻第1-58

訓読 >>> いづくにか船(ふね)泊(はて)すらむ安礼(あれ)の埼(さき)漕(こ)ぎたみ行きし棚(たな)無し小舟(をぶね) 要旨 >>> 今ごろいったい何処で舟どまりしているのだろう、安礼の崎を先ほど漕ぎめぐっていった、船棚のない小さな舟は。 …

額田王が近江の国に下った時に作った歌・・・巻第1-17~19

訓読 >>> 17味酒(うまさけ) 三輪(みわ)の山 あをによし 奈良の山の 山の際(ま)に い隠るまで 道の隈(くま) い積もるまでに つばらにも 見つつ行かむを しばしばも 見放(みさ)けむ山を 情(こころ)なく 雲の 隠さふねしや 18三輪山をしかも隠す…

君が代も我が代も知るや・・・巻第1-10~12

訓読 >>> 10君が代(よ)も我(わ)が代も知るや磐代(いはしろ)の岡の草根(くさね)をいざ結びてな 11吾背子(わがせこ)は仮廬(かりほ)作らす草なくば小松(こまつ)が下の草を刈(か)らさね 12吾(わ)が欲(ほ)りし野島(のしま)は見せつ底ふ…

持統天皇の吉野行幸の折、柿本人麻呂が作った歌・・・巻第1-38~39

訓読 >>> 38やすみしし わが大君(おほきみ) 神(かむ)ながら 神さびせすと 吉野川 激(たぎ)つ河内(かふち)に 高殿(たかどの)を 高(たか)知りまして 登り立ち 国見をせせば 畳(たたな)はる 青垣山(あをかきやま) 山神(やまつみ)の 奉(ま…

ますらをの鞆の音すなり・・・巻第1-76~77

訓読 >>> 76ますらをの鞆(とも)の音(おと)すなり物部(もののべ)の大臣(おほまへつきみ)楯(たて)立つらしも 77吾が大君(おほきみ)ものな思ほし皇神(すめかみ)の継ぎて賜(たま)へる我(われ)なけなくに 要旨 >>> 〈76〉勇ましい男子た…

荒れたる京見れば悲しも・・・巻第1-32~33

訓読 >>> 32古(いにしへ)の人に我(わ)れあれや楽浪(ささなみ)の古き京(みやこ)を見れば悲しき 33楽浪(ささなみ)の国つ御神(みかみ)のうらさびて荒れたる京(みやこ)見れば悲しも 要旨 >>> 〈32〉私は遥かなる古(いにしえ)の人なのだろ…

文武天皇の御製歌・・・巻第1-74

訓読 >>> み吉野の山の下風(あらし)の寒けくにはたや今夜(こよひ)も我(わ)が独(ひと)り寝む 要旨 >>> 吉野の山から吹き下ろす風がこんなにも肌寒いのに、もしや今夜も私はたった独りで寝るのだろうか。 鑑賞 >>> 題詞に「大行天皇、吉野の…

雄略天皇の御製歌・・・巻第1-1

訓読 >>> 籠(こ)もよ み籠(こ)持ち 掘串(ふくし)もよ み掘串(ふくし)持ち この岳(をか)に 菜(な)摘(つ)ます児(こ) 家(いへ)告(の)らせ 名告らさね そらみつ 大和の国は おしなべて われこそ居(を)れ しきなべて われこそ座(いま)…

宵に逢ひて朝面無み・・・巻第1-60

訓読 >>> 宵(よひ)に逢ひて朝(あした)面(おも)無(な)み名張(なばり)にか日(け)長き妹(いも)が廬(いほ)りせりけむ 要旨 >>> 宵に共寝をして、翌朝恥ずかしくて会わせる顔がなく、隠(なば)ると言う、その名張で、旅に出て久しい妻は仮…

額田王が春秋の優劣を論じた歌・・・巻第1-16

訓読 >>> 冬こもり 春さり来れば 鳴かざりし 鳥も来(き)鳴きぬ 咲かざりし 花も咲けれど 山を茂(し)み 入りても取らず 草深み 取りても見ず 秋山の 木の葉を見ては 黄葉(もみち)をば 取りてぞ偲(しの)ふ 青きをば 置きてぞ嘆く そこし恨めし 秋山…

宇治の宮処の仮廬し思ほゆ・・・巻第1-7

訓読 >>> 秋の野(ぬ)のみ草刈り葺(ふ)き宿れりし宇治(うぢ)の宮処(みやこ)の仮廬(かりほ)し思ほゆ 要旨 >>> かつて天皇の行幸に御伴をして、山城の宇治で、秋の草を刈って葺いた行宮(あんぐう)に宿ったときのことが思い出されます。 鑑賞 …

藤原の宮の御井の歌・・・巻第1-52~53

訓読 >>> 52やすみしし わご大君 高照らす 日の皇子(みこ) あらたへの 藤井が原に 大御門(おほみかど) 始めたまひて 埴安(はにやす)の 堤(つつみ)の上に あり立たし 見したまへば 大和の 青香具山(あをかぐやま)は 日の経(たて)の 大き御門(…

大海人皇子の歌・・・巻第1-25

訓読 >>> み吉野の 耳我(みみが)の嶺(みね)に 時なくぞ 雪は降りける 間(ま)無くぞ 雨は振りける その雪の 時なきがごと その雨の 間なきがごと 隈(くま)もおちず 思ひつつぞ来し その山道(やまみち)を 要旨 >>> 吉野の耳我の山には、時とな…

藤原宮の労役に従事した民の作った歌・・・巻第1-50

訓読 >>> やすみしし 我(わ)が大君(おほきみ) 高(たか)照らす 日の皇子(みこ) あらたへの 藤原が上(うへ)に 食(を)す国を 見(め)したまはむと みあらかは 高知らさむと 神(かむ)ながら 思ほすなへに 天地(あめつち)も 依りてあれこそ …

あかねさす紫野行き標野行き・・・巻第1-20~21

訓読 >>> 20あかねさす紫野(むらさきの)行き標野(しめの)行き野守(のもり)は見ずや君が袖(そで)振る 21紫草(むらさき)のにほへる妹(いも)を憎くあらば人妻(ひとづま)ゆゑにあれ恋ひめやも 要旨 >>> 〈20〉茜色に輝く紫草が栽培されてい…

宇智の大野に馬並めて・・・巻第1-3~4

訓読 >>> 3やすみしし わが大君(おほきみ)の 朝(あした)には とり撫(な)でたまひ 夕(ゆふへ)には い倚(よ)り立たしし 御執(みと)らしの 梓(あづさ)の弓の 中弭(なかはず)の 音すなり 朝猟(あさかり)に 今立たすらし 暮猟(ゆふかり)に…

引馬野ににほふ榛原・・・巻第1-57

訓読 >>> 引馬野(ひくまの)ににほふ榛原(はりはら)入り乱れ衣(ころも)にほはせ旅のしるしに 要旨 >>> 引馬野に色づいている榛の原、さあ、この中にみんな入り乱れて衣を艶やかに染めようではないか、旅の記念(しるし)に。 鑑賞 >>> 長忌寸…

うつせみの命を惜しみ・・・巻第1-23~24

訓読 >>> 23打麻(うちそ)を麻続王(をみのおほきみ)海人(あま)なれや伊良虞(いらご)の島の玉藻(たまも)刈ります 24うつせみの命(いのち)を惜(を)しみ波に濡(ぬ)れ伊良虞(いらご)の島の玉藻(たまも)刈り食(は)む 要旨 >>> 〈23〉…

飛ぶ鳥の明日香の里を・・・巻第1-78

訓読 >>> 飛ぶ鳥の明日香(あすか)の里を置きて去(い)なば君があたりは見えずかもあらむ 要旨 >>> 明日香の里をあとにして、奈良の都に行ってしまえば、あなたが住んでいたところは見えなくなってしまうのか。 鑑賞 >>> 和銅3年(710年)の2月に…

持統天皇の吉野行幸の折、柿本人麻呂が作った歌・・・巻第1-36~37

訓読 >>> 36やすみしし わご大君(おほきみ)の 聞(きこ)しめす 天(あめ)の下に 国はしも 多(さは)にあれども 山川の 清き河内(かふち)と 御心(みこころ)を 吉野の国の 花散らふ 秋津の野辺(のへ)に 宮柱(みやはしら) 太敷(ふとし)きませ…

常にもがもな常処女にて・・・巻第1-22

訓読 >>> 河上(かはのへ)のゆつ岩群(いはむら)に草むさず常にもがもな常処女(とこをとめ)にて 要旨 >>> 川上の神聖な岩にいつまでも苔が生えないように、わが皇女の君もその岩のように変わらず永久に美しい乙女でいらっしゃってほしい。 鑑賞 >…