大和の国のこころ、万葉のこころ

不肖私がこよなく愛する『万葉集』の鑑賞blogです。

巻第10

明日よりは我が玉床をうち掃ひ・・・巻第10-2048~2050

訓読 >>> 2048天の川 川門(かはと)に立ちて我(わ)が恋ひし君来ますなり紐(ひも)解き待たむ 2049天の川 川門(かはと)に居(を)りて年月(としつき)を恋ひ来(こ)し君に今夜(こよひ)逢へるかも 2050明日よりは我(わ)が玉床(たまどこ)をう…

君が舟今漕ぎ来らし・・・巻第10-2045~2047

訓読 >>> 2045君が舟(ふね)今漕ぎ来(く)らし天の川 霧(きり)立ちわたるこの川の瀬に 2046秋風に川波(かはなみ)立ちぬしましくは八十(やそ)の舟津(ふなつ)にみ舟 留(とど)めよ 2047天の川の川音(かはと)清(さやけ)し彦星(ひこぼし)の…

外のみに見つつ恋ひなむ・・・巻第10-1993

訓読 >>> 外(よそ)のみに見つつ恋ひなむ紅(くれなゐ)の末摘花(すゑつむはな)の色に出(い)でずとも 要旨 >>> せめて遠目にだけでも姿を見て慕っていよう。鮮やかな紅花のように、はっきりと思いを打ち明けなくても。 鑑賞 >>> 作者未詳の「…

夏草の露別け衣・・・巻第10-1994

訓読 >>> 夏草(なつくさ)の露(つゆ)別(わ)け衣(ころも)着(つ)けなくに我(わ)が衣手(ころもで)の干(ふ)る時もなき 要旨 >>> 夏草の露にまみれて踏み分けてきたような、そんな着物を着たわけでもないのに、私の着ている着物の袖は涙で乾…

隠りのみ恋ふれば苦し・・・巻第10-1992

訓読 >>> 隠(こも)りのみ恋ふれば苦しなでしこの花に咲き出(で)よ朝(あさ)な朝(さ)な見む 要旨 >>> 人目を忍んで心ひそかに恋続けるのはつらいものです。せめて、なでしこの花になって我が家の庭に咲き出てください。そうすれば朝ごとに見るこ…

朝にゆく雁の鳴く音は・・・巻第10-2137

訓読 >>> 朝にゆく雁(かり)の鳴く音(ね)は吾(わ)が如(ごと)くもの念(おも)へかも声の悲しき 要旨 >>> いま朝早く飛んでいく雁の鳴く声は、何となく物悲しい、彼らも私と同じように物思いをしているからだろう。 鑑賞 >>> 「雁を詠む」歌…

人言は夏野の草の繁くとも・・・巻第10-1983

訓読 >>> 人言(ひとごと)は夏野(なつの)の草の繁(しげ)くとも妹(いも)と我(あ)れとし携(たづさ)はり寝ば 要旨 >>> 人の噂が夏の野草が茂るようにうるさくても、あなたと私が手をとりあって寝てしまえば・・・。 鑑賞 >>> 「草に寄せる」男…

山の辺にい行く猟夫は・・・巻第10-2147

訓読 >>> 山の辺(へ)にい行く猟夫(さつを)は多かれど山にも野にもさを鹿(しか)鳴くも 要旨 >>> 山の辺に行く猟師は多くて恐ろしいものだが、それでも妻恋しさに、牡鹿があんなに鳴いている。 鑑賞 >>> 「鹿鳴を詠む」歌。「い行く」の「い」…

春されば樹の木の暗の夕月夜・・・巻第10-1875

訓読 >>> 春されば樹(き)の木(こ)の暗(くれ)の夕月夜(ゆふづくよ)おぼつかなしも山陰(やまかげ)にして 要旨 >>> 春になって木々が萌え茂り、それが山陰であるので、ただでさえ光の薄い夕月夜が、いっそう薄くほのかだ。 鑑賞 >>> 「月を…

君に恋ひ萎えうらぶれ・・・巻第10-2298

訓読 >>> 君に恋ひ萎(しな)えうらぶれ我(あ)が居(を)れば秋風吹きて月かたぶきぬ 要旨 >>> あなたに恋い焦がれ、打ちしおれてしょんぼりしている間に、秋風が吹き、いつの間にか月が西空に傾いてしまいました。 鑑賞 >>> 「月に寄せる」歌。…

思はぬに時雨の雨は降りたれど・・・巻第10-2227

訓読 >>> 思はぬに時雨(しぐれ)の雨は降りたれど天雲(あまぐも)はれて月夜(つくよ)清(さや)けし 要旨 >>> 思いがけず時雨が降ったけれど、いつのまにか雲がなくなって、月明かりとなったよ。 鑑賞 >>> 「月を詠む」作者未詳歌。この歌につ…

あしひきの山道も知らず・・・巻第10-2315

訓読 >>> あしひきの山道(やまぢ)も知らず白橿(しらかし)の枝もとををに雪の降れれば 要旨 >>> どこが山道なのか分からない。白橿の枝がたわむほどに雪が降り積もったので。 鑑賞 >>> 『柿本人麻呂歌集』から「冬の雑歌」1首です。「あしひきの…

我が袖に霰た走る・・・巻第10-2312

訓読 >>> 我(わ)が袖(そで)に霰(あられ)た走(ばし)る巻き隠(かく)し消(け)たずてあらむ妹(いも)が見むため 要旨 >>> 私の袖にあられが降りかかってきて飛び散る。それを袖をに包み隠し、なくならないようにしよう。妻に見せたいから。 …

秋風の清き夕に天の川・・・巻第10-2042~2044

訓読 >>> 2042しばしばも相(あひ)見ぬ君を天の川 舟出(ふなで)早(はや)せよ夜(よ)の更けぬ間に 2043秋風の清き夕(ゆふへ)に天の川舟漕ぎ渡る月人壮士(つきひとをとこ) 2044天の川 霧(きり)立ちわたり彦星(ひこほし)の楫(かぢ)の音(お…

かくばかり雨の降らくに・・・巻第10-1963

訓読 >>> かくばかり雨の降らくに霍公鳥(ほととぎす)卯(う)の花山(はなやま)になほか鳴くらむ 要旨 >>> こんなにも雨が降り続くのに、ホトトギスは、卯の花が咲きにおう山辺で、今もなお鳴いているのだろうか。 鑑賞 >>> 鳥を詠む歌。「雨の…

彦星と織女と今夜逢ふ・・・巻第10-2039~2041

訓読 >>> 2039恋しけく日(け)長きものを逢ふべくある宵(よひ)だに君が来まさずあるらむ 2040彦星(ひこほし)と織女(たなばたつめ)と今夜逢ふ天の川門(かはと)に波立つなゆめ 2041秋風の吹きただよはす白雲(しらくも)は織女(たなばたつめ)の…

織女の五百機立てて織る布の・・・巻第10-2034~2036

訓読 >>> 2034織女(たなばた)の五百機(いほはた)立てて織(お)る布の秋さり衣(ごろも)誰(た)れか取り見む 2035年にありて今か巻くらむぬばたまの夜霧隠(よぎりごも)れる遠妻(とほづま)の手を 2036我(あ)が待ちし秋は来(きた)りぬ妹(い…

浅緑染め懸けたりと見るまでに・・・巻第10-1846~1849

訓読 >>> 1846霜(しも)枯(が)れの冬の柳(やなぎ)は見る人のかづらにすべく萌(も)えにけるかも 1847浅緑(あさみどり)染め懸けたりと見るまでに春の柳(やなぎ)は萌(も)えにけるかも 1848山の際(ま)に雪は降りつつしかすがにこの川柳(かは…

鳴き行くなるは誰れ呼子鳥・・・巻第10-1827~1828

訓読 >>> 1827春日(かすが)なる羽(は)がひの山ゆ佐保(さほ)の内へ鳴き行くなるは誰(た)れ呼子鳥(よぶこどり)1828答へぬにな呼び響(と)めそ呼子鳥(よぶこどり)佐保(さほ)の山辺(やまへ)を上り下りに 要旨 >>> 〈1827〉春日の羽がいの…

霞立つ春の長日を恋ひ暮らし・・・巻第10-1894~1896

訓読 >>> 1894霞(かすみ)立つ春の長日(ながひ)を恋ひ暮らし夜(よ)も更けゆくに妹(いも)も逢はぬかも 1895春されば先(ま)づ三枝(さきくさ)の幸(さき)くあらば後(のち)にも逢はむな恋ひそ我妹(わぎも) 1896春さればしだり柳(やなぎ)の…

春山の霧に惑へる鴬も・・・巻第10-1891~1893

訓読 >>> 1891冬こもり春咲く花を手折(たを)り持ち千(ち)たびの限り恋ひわたるかも 1892春山の霧(きり)に惑(まと)へる鴬(うぐひす)も我(わ)れにまさりて物思(ものも)はめやも 1893出(い)でて見る向(むか)ひの岡に本(もと)茂(しげ)…

巻向の桧原に立てる春霞・・・巻第10-1813~1815

訓読 >>> 1813巻向(まきむく)の桧原(ひはら)に立てる春霞(はるかすみ)おほにし思はばなづみ来(こ)めやも 1814いにしへの人の植ゑけむ杉(すぎ)が枝(え)に霞(かすみ)たなびく春は来(き)ぬらし 1815子らが手を巻向山(まきむくやま)に春さ…

ひさかたの天の香具山このゆふへ・・・巻第10-1812

訓読 >>> ひさかたの天(あま)の香具山(かぐやま)このゆふへ霞(かすみ)たなびく春立つらしも 要旨 >>> 天の香具山に、この夕暮れ、霞がたなびいている。どうやら、春になったらしいな。 鑑賞 >>> 「ひさかたの」は「天」の枕詞。「天の」は香…

帰ります間も思ほせ我れを・・・巻第10-1890

訓読 >>> 春山(はるやま)の友鶯(ともうぐひす)の泣き別れ帰ります間(ま)も思ほせ我(わ)れを 要旨 >>> 春山のウグイスが仲間同士で鳴き交わして別れるように、泣く泣く別れてお帰りになるその道すがらの間でも、思って下さい、この私のことを。…

風交り雪は降りつつ・・・巻第10-1836~1838

訓読 >>> 1836風(かぜ)交(まじ)り雪は降りつつしかすがに霞(かすみ)たなびき春さりにけり 1837山の際(ま)に鴬(うぐひす)鳴きてうち靡(なび)く春と思へど雪降りしきぬ 1838峰(を)の上(うへ)に降り置ける雪し風の共(むた)ここに散るらし…

玉梓の君が使ひの手折り来る・・・巻第10-2111

訓読 >>> 玉梓(たまづさ)の君が使ひの手折(たを)り来(け)るこの秋萩は見れど飽(あ)かぬかも 要旨 >>> あなたの寄こしたお使いが手折ってきてくれたこの秋萩は、見ても見ても見飽きることがありません。 鑑賞 >>> 「玉梓の」は、古く便りを…

卯の花の咲くとはなしにある人に・・・巻第10-1989

訓読 >>> 卯(う)の花の咲くとはなしにある人に恋ひやわたらむ片思(かたもひ)にして 要旨 >>> 卯の花の咲くようには、心を開いてくれないあの人に、ずっと恋い続けるなのだろうか、片思いのままで。 鑑賞 >>> 片思いをしている男の歌で、花に寄…

秋の夜を長しと言へど・・・巻第10-2303

訓読 >>> 秋の夜(よ)を長しと言へど積もりにし恋を尽(つく)せば短(みじか)くありけり 要旨 >>> 秋の夜は長いと言うけれど、積もりに積もった恋心を晴らすには、何とも短く感じられる。 鑑賞 >>> 男が、女と充実した夜を過ごし、夜明けに帰ろ…

天の海に月の舟浮け・・・巻第10-2223

訓読 >>> 天(あめ)の海に月の舟(ふね)浮(う)け桂楫(かつらかぢ)懸(か)けて漕(こ)ぐ見ゆ月人壮士(つきひとをとこ) 要旨 >>> 夜空の海に月の舟を浮かべ、桂で作った楫を取り付けて漕いでいるのが見える、月の若者が。 鑑賞 >>> 「月を…

一日には千重しくしくに我が恋ふる・・・巻第10-2234

訓読 >>> 一日(ひとひ)には千重(ちへ)しくしくに我(あ)が恋ふる妹(いも)があたりに時雨(しぐれ)降る見ゆ 要旨 >>> 一日の間に、幾度も重ね重ね私が恋い焦がれるあの子の家のあたりに、時雨がしきりに降っている。 鑑賞 >>> 『柿本人麻呂…