大和の国のこころ、万葉のこころ

不肖私がこよなく愛する『万葉集』の鑑賞blogです。

巻第10

秋の夜の月かも君は・・・巻第10-2299

訓読 >>> 秋の夜(よ)の月かも君は雲隠(くもがく)りしましく見ねばここだ恋しき 要旨 >>> あなたは秋の夜の月なのでしょうか。しばらくの間雲に隠れて見えなくなっただけで、こんなに恋しくてならないなんて。 鑑賞 >>> 雲に隠れて、ほんの少し…

秋田刈る仮廬を作り・・・巻第10-2174

訓読 >>> 秋田(あきた)刈る仮廬(かりほ)を作り我(わ)が居(を)れば衣手(ころもで)寒く露(つゆ)ぞ置きにける 要旨 >>> 秋の田を刈るための仮小屋を作って、私がそこにいると、着物の袖に寒く露が置いたことだ。 鑑賞 >>> 作者未詳歌。「…

白露と秋萩とには恋ひ乱れ・・・巻第10-2171~2173

訓読 >>> 2171白露(しらつゆ)と秋萩(あきはぎ)とには恋ひ乱れ別(わ)くことかたき我(あ)が心かも 2172我(わ)が宿(やど)の尾花(をばな)押しなべ置く露(つゆ)に手触れ我妹子(わぎもこ)散らまくも見む 2173白露(しらつゆ)を取らば消(け…

朝妻山の霞・・・巻第10-1817~1818

訓読 >>> 1817今朝(けさ)行きて明日は来(き)なむとねと云ひしかに朝妻山(あさづまやま)に霞(かすみ)たなびく 1818子等(こら)が名に懸(か)けのよろしき朝妻(あさづま)の片山(かたやま)ぎしに霞(かすみ)たなびく 要旨 >>> 〈1817〉今…

天の川霧立ちわたる・・・巻第10-2067~2069

訓読 >>> 2067天(あま)の川(がは)渡り瀬(ぜ)深み舟(ふね)浮(う)けて漕(こ)ぎ来る君が楫(かぢ)の音(おと)聞こゆ 2068天(あま)の原(はら)振り放(さ)け見れば天(あま)の川(がは)霧(きり)立ちわたる君は来(き)ぬらし 2069天(…

晩蝉は時と鳴けども・・・巻第10-1982

訓読 >>> 晩蝉(ひぐらし)は時と鳴けども恋(こ)ふるにし手弱女(たわやめ)われは時わかず泣く 要旨 >>> ヒグラシは悲しく鳴くといっても時を定めていますが、恋している手弱女の私は、時に関係なく泣いています。 鑑賞 >>> カナカナ蝉とも呼ば…

六月の地さへ裂けて・・・巻第10-1995

訓読 >>> 六月(みなづき)の地(つち)さへ裂(さ)けて照る日にも我(わ)が袖(そで)干(ひ)めや君に逢はずして 要旨 >>> 六月の、地面さえ裂けて照りつける日射しにも、私の着物の袖は涙で乾くことがありません。あなたにお逢いできないので。 …

誰そかれと我れをな問ひそ・・・巻第10-2240

訓読 >>> 誰(た)そかれと我(わ)れをな問ひそ九月(ながつき)の露(つゆ)に濡れつつ君待つ我(わ)れを 要旨 >>> 誰なのか、などと私にお聞きにならないで下さい。九月の冷たい露に濡れながら、あなたを待っている私なのです。 鑑賞 >>> 女が…

我が宿の花橘は・・・巻第10-1969

訓読 >>> 我が宿(やど)の花橘(はなたちばな)は散りにけり悔(くや)しき時に逢へる君かも 要旨 >>> 我が家の庭の花橘は散ってしまいました。こんな時にあなたにお逢いするのがとても残念です。 鑑賞 >>> 類想の多い歌であり、来訪した客に対し…

卯の花の咲き散る岡ゆ・・・巻第10-1976~1977

訓読 >>> 1976卯(う)の花の咲き散る岡ゆ霍公鳥(ほととぎす)鳴きてさ渡る君は聞きつや 1977聞きつやと君が問はせる霍公鳥(ほととぎす)しののに濡れてこゆ鳴き渡る 要旨 >>> 〈1976〉卯の花が咲き散る岡の上を、霍公鳥が鳴いて渡っていきましたよ…

実にならずとも・・・巻第10-1928~1929

訓読 >>> 1928狭野方(さのかた)は実にならずとも花のみに咲きて見えこそ恋のなぐさに 1929狭野方(さのかた)は実になりにしを今さらに春雨(はるさめ)降りて花咲かめやも 要旨 >>> 〈1928〉狭野方は実にならなくてもよいから、せめて花だけでも咲…

大宮人は暇あれや・・・巻第10-1883

訓読 >>> ももしきの大宮人(おほみやひと)は暇(いとま)あれや梅をかざしてここに集(つど)へる 要旨 >>> 大宮人たちは暇(いとま)があるからだろうか、梅をかざしてここに集まっている。 鑑賞 >>> 題詞に「野遊(やいう)」とある4首のうちの…

春霞 流れるなへに・・・巻第10-1821

訓読 >>> 春霞(はるかすみ)流るるなへに青柳(あをやぎ)の枝くひもちて鶯(うぐひす)鳴くも 要旨 >>> 春霞が流れるにつれて、青柳の枝をくわえたウグイスが鳴いている。 鑑賞 >>> 「霞」といえば、たなびくという表現が多いなかにあって「流れ…

咲きにほえる桜花・・・巻第10-1869~1872

訓読 >>> 1869春雨(はるさめ)に争ひかねて我が宿の桜の花は咲きそめにけり 1870春雨はいたくな降りそ桜花いまだ見なくに散らまく惜しも 1871春されば散らまく惜しき梅の花しましは咲かず含(ふふ)みてもがも 1872見わたせば春日の野辺(のへ)に霞(か…

春日野に煙立つ見ゆ・・・巻第10-1879

訓読 >>> 春日野(かすがの)に煙(けぶり)立つ見ゆ娘子(をとめ)らし春野のうはぎ摘(つ)みて煮(に) 要旨 >>> 春日野に煙が立ち上るのが見えるよ。 若い娘たちが集まって春の野のうはぎを摘んで煮ているのだろうな。 鑑賞 >>> 春日山の麓の緩…

はなはだも夜更けて・・・巻第10-2336

訓読 >>> はなはだも夜更(よふ)けてな行き道の辺(へ)のゆ笹(ささ)の上に霜(しも)の降る夜(よ)を 要旨 >>> こんなにも夜が更けてから帰らないでください。道端の笹に霜が降りてくる寒い夜なのに。 鑑賞 >>> 「通い婚」の時代にあって、女…

朝咲き夕は消ぬる月草の・・・巻第10-2291

訓読 >>> 朝(あした)咲き夕(ゆふへ)は消(け)ぬる月草(つきくさ)の消(け)ぬべき恋も我(あ)れはするかも 要旨 >>> 朝咲いても、夕方にはしぼんでしまう露草(つゆくさ)のように、身も消えてしまいそうな切ない恋をしています。 鑑賞 >>>…

花橘を袖に受けて・・・巻第10-1966

訓読 >>> 風に散る花橘(はなたちばな)を袖(そで)に受けて君がみ跡(あと)と偲(しの)ひつるかも 要旨 >>> 風に舞い散る橘の花びらを袖に受け止め、その香りをあなたの形見のように偲んでいます。 鑑賞 >>> 「花を詠む」歌。「橘」は、『日本…

沫雪降れり庭もほどろに・・・巻第10-2323

訓読 >>> わが背子(せこ)を今か今かと出で見れば沫雪(あわゆき)降れり庭もほどろに 要旨 >>> あの方の訪れを今か今かとお待ちして戸口に出てみると、沫雪が降り積もっている、庭にうっすらと。 鑑賞 >>> 「雪を詠む」歌。「沫雪」は泡のように…

人は古りゆく・・・巻第10-1884~1885

訓読 >>> 1884冬過ぎて春し来(きた)れば年月(としつき)は新たなれども人は古(ふ)りゆく 1885物(もの)皆(みな)は新たしきよしただしくも人は古(ふ)りにしよろしかるべし 要旨 >>> 〈1884〉冬が過ぎて春がやってくると、年月は新しくなるけ…

小松が末に沫雪流る・・・巻第10-2314

訓読 >>> 巻向(まきむく)の檜原(ひばら)もいまだ雲居ねば小松が末(うれ)ゆ沫雪(あわゆき)流る 要旨 >>> 巻向山の檜林にまだ雲もかかっていないのに、松の梢のあたりから沫雪が流れ飛んでくる。 鑑賞 >>> 『柿本人麻呂歌集』から「冬の雑歌…