大和の国のこころ、万葉のこころ

不肖私がこよなく愛する『万葉集』の鑑賞blogです。

巻第10

思はぬに時雨の雨は降りたれど・・・巻第10-2227

訓読 >>> 思はぬに時雨(しぐれ)の雨は降りたれど天雲(あまぐも)はれて月夜(つくよ)清(さや)けし 要旨 >>> 思いがけず時雨が降ったけれど、いつのまにか雲がなくなって、月明かりとなったよ。 鑑賞 >>> 「月を詠む」作者未詳歌。この歌につ…

あしひきの山道も知らず・・・巻第10-2315

訓読 >>> あしひきの山道(やまぢ)も知らず白橿(しらかし)の枝もとををに雪の降れれば 要旨 >>> どこが山道なのか分からない。白橿の枝がたわむほどに雪が降り積もったので。 鑑賞 >>> 『柿本人麻呂歌集』から「冬の雑歌」1首です。「あしひきの…

我が袖に霰た走る・・・巻第10-2312

訓読 >>> 我(わ)が袖(そで)に霰(あられ)た走(ばし)る巻き隠(かく)し消(け)たずてあらむ妹(いも)が見むため 要旨 >>> 私の袖にあられが降りかかってきて飛び散る。それを袖をに包み隠し、なくならないようにしよう。妻に見せたいから。 …

秋風の清き夕に天の川・・・巻第10-2042~2044

訓読 >>> 2042しばしばも相(あひ)見ぬ君を天の川 舟出(ふなで)早(はや)せよ夜(よ)の更けぬ間に 2043秋風の清き夕(ゆふへ)に天の川舟漕ぎ渡る月人壮士(つきひとをとこ) 2044天の川 霧(きり)立ちわたり彦星(ひこほし)の楫(かぢ)の音(お…

かくばかり雨の降らくに・・・巻第10-1963

訓読 >>> かくばかり雨の降らくに霍公鳥(ほととぎす)卯(う)の花山(はなやま)になほか鳴くらむ 要旨 >>> こんなにも雨が降り続くのに、ホトトギスは、卯の花が咲きにおう山辺で、今もなお鳴いているのだろうか。 鑑賞 >>> 鳥を詠む歌。「雨の…

彦星と織女と今夜逢ふ・・・巻第10-2039~2041

訓読 >>> 2039恋しけく日(け)長きものを逢ふべくある宵(よひ)だに君が来まさずあるらむ 2040彦星(ひこほし)と織女(たなばたつめ)と今夜逢ふ天の川門(かはと)に波立つなゆめ 2041秋風の吹きただよはす白雲(しらくも)は織女(たなばたつめ)の…

織女の五百機立てて織る布の・・・巻第10-2034~2036

訓読 >>> 2034織女(たなばた)の五百機(いほはた)立てて織(お)る布の秋さり衣(ごろも)誰(た)れか取り見む 2035年にありて今か巻くらむぬばたまの夜霧隠(よぎりごも)れる遠妻(とほづま)の手を 2036我(あ)が待ちし秋は来(きた)りぬ妹(い…

浅緑染め懸けたりと見るまでに・・・巻第10-1846~1849

訓読 >>> 1846霜(しも)枯(が)れの冬の柳(やなぎ)は見る人のかづらにすべく萌(も)えにけるかも 1847浅緑(あさみどり)染め懸けたりと見るまでに春の柳(やなぎ)は萌(も)えにけるかも 1848山の際(ま)に雪は降りつつしかすがにこの川柳(かは…

鳴き行くなるは誰れ呼子鳥・・・巻第10-1827~1828

訓読 >>> 1827春日(かすが)なる羽(は)がひの山ゆ佐保(さほ)の内へ鳴き行くなるは誰(た)れ呼子鳥(よぶこどり)1828答へぬにな呼び響(と)めそ呼子鳥(よぶこどり)佐保(さほ)の山辺(やまへ)を上り下りに 要旨 >>> 〈1827〉春日の羽がいの…

霞立つ春の長日を恋ひ暮らし・・・巻第10-1894~1896

訓読 >>> 1894霞(かすみ)立つ春の長日(ながひ)を恋ひ暮らし夜(よ)も更けゆくに妹(いも)も逢はぬかも 1895春されば先(ま)づ三枝(さきくさ)の幸(さき)くあらば後(のち)にも逢はむな恋ひそ我妹(わぎも) 1896春さればしだり柳(やなぎ)の…

春山の霧に惑へる鴬も・・・巻第10-1891~1893

訓読 >>> 1891冬こもり春咲く花を手折(たを)り持ち千(ち)たびの限り恋ひわたるかも 1892春山の霧(きり)に惑(まと)へる鴬(うぐひす)も我(わ)れにまさりて物思(ものも)はめやも 1893出(い)でて見る向(むか)ひの岡に本(もと)茂(しげ)…

巻向の桧原に立てる春霞・・・巻第10-1813~1815

訓読 >>> 1813巻向(まきむく)の桧原(ひはら)に立てる春霞(はるかすみ)おほにし思はばなづみ来(こ)めやも 1814いにしへの人の植ゑけむ杉(すぎ)が枝(え)に霞(かすみ)たなびく春は来(き)ぬらし 1815子らが手を巻向山(まきむくやま)に春さ…

ひさかたの天の香具山このゆふへ・・・巻第10-1812

訓読 >>> ひさかたの天(あま)の香具山(かぐやま)このゆふへ霞(かすみ)たなびく春立つらしも 要旨 >>> 天の香具山に、この夕暮れ、霞がたなびいている。どうやら、春になったらしいな。 鑑賞 >>> 「ひさかたの」は「天」の枕詞。「天の」は香…

帰ります間も思ほせ我れを・・・巻第10-1890

訓読 >>> 春山(はるやま)の友鶯(ともうぐひす)の泣き別れ帰ります間(ま)も思ほせ我(わ)れを 要旨 >>> 春山のウグイスが仲間同士で鳴き交わして別れるように、泣く泣く別れてお帰りになるその道すがらの間でも、思って下さい、この私のことを。…

風交り雪は降りつつ・・・巻第10-1836~1838

訓読 >>> 1836風(かぜ)交(まじ)り雪は降りつつしかすがに霞(かすみ)たなびき春さりにけり 1837山の際(ま)に鴬(うぐひす)鳴きてうち靡(なび)く春と思へど雪降りしきぬ 1838峰(を)の上(うへ)に降り置ける雪し風の共(むた)ここに散るらし…

玉梓の君が使ひの手折り来る・・・巻第10-2111

訓読 >>> 玉梓(たまづさ)の君が使ひの手折(たを)り来(け)るこの秋萩は見れど飽(あ)かぬかも 要旨 >>> あなたの寄こしたお使いが手折ってきてくれたこの秋萩は、見ても見ても見飽きることがありません。 鑑賞 >>> 「玉梓の」は、古く便りを…

卯の花の咲くとはなしにある人に・・・巻第10-1989

訓読 >>> 卯(う)の花の咲くとはなしにある人に恋ひやわたらむ片思(かたもひ)にして 要旨 >>> 卯の花の咲くようには、心を開いてくれないあの人に、ずっと恋い続けるなのだろうか、片思いのままで。 鑑賞 >>> 片思いをしている男の歌で、花に寄…

秋の夜を長しと言へど・・・巻第10-2303

訓読 >>> 秋の夜(よ)を長しと言へど積もりにし恋を尽(つく)せば短(みじか)くありけり 要旨 >>> 秋の夜は長いと言うけれど、積もりに積もった恋心を晴らすには、何とも短く感じられる。 鑑賞 >>> 男が、女と充実した夜を過ごし、夜明けに帰ろ…

天の海に月の舟浮け・・・巻第10-2223

訓読 >>> 天(あめ)の海に月の舟(ふね)浮(う)け桂楫(かつらかぢ)懸(か)けて漕(こ)ぐ見ゆ月人壮士(つきひとをとこ) 要旨 >>> 夜空の海に月の舟を浮かべ、桂で作った楫を取り付けて漕いでいるのが見える、月の若者が。 鑑賞 >>> 「月を…

一日には千重しくしくに我が恋ふる・・・巻第10-2234

訓読 >>> 一日(ひとひ)には千重(ちへ)しくしくに我(あ)が恋ふる妹(いも)があたりに時雨(しぐれ)降る見ゆ 要旨 >>> 一日の間に、幾度も重ね重ね私が恋い焦がれるあの子の家のあたりに、時雨がしきりに降っている。 鑑賞 >>> 『柿本人麻呂…

秋の夜の月かも君は・・・巻第10-2299

訓読 >>> 秋の夜(よ)の月かも君は雲隠(くもがく)りしましく見ねばここだ恋しき 要旨 >>> あなたは秋の夜の月なのでしょうか。しばらくの間雲に隠れて見えなくなっただけで、こんなに恋しくてならないなんて。 鑑賞 >>> 雲に隠れて、ほんの少し…

秋田刈る仮廬を作り・・・巻第10-2174

訓読 >>> 秋田(あきた)刈る仮廬(かりほ)を作り我(わ)が居(を)れば衣手(ころもで)寒く露(つゆ)ぞ置きにける 要旨 >>> 秋の田を刈るための仮小屋を作って、私がそこにいると、着物の袖に寒く露が置いたことだ。 鑑賞 >>> 作者未詳歌。「…

白露と秋萩とには恋ひ乱れ・・・巻第10-2171~2173

訓読 >>> 2171白露(しらつゆ)と秋萩(あきはぎ)とには恋ひ乱れ別(わ)くことかたき我(あ)が心かも 2172我(わ)が宿(やど)の尾花(をばな)押しなべ置く露(つゆ)に手触れ我妹子(わぎもこ)散らまくも見む 2173白露(しらつゆ)を取らば消(け…

朝妻山の霞・・・巻第10-1817~1818

訓読 >>> 1817今朝(けさ)行きて明日は来(き)なむとねと云ひしかに朝妻山(あさづまやま)に霞(かすみ)たなびく 1818子等(こら)が名に懸(か)けのよろしき朝妻(あさづま)の片山(かたやま)ぎしに霞(かすみ)たなびく 要旨 >>> 〈1817〉今…

天の川霧立ちわたる・・・巻第10-2067~2069

訓読 >>> 2067天(あま)の川(がは)渡り瀬(ぜ)深み舟(ふね)浮(う)けて漕(こ)ぎ来る君が楫(かぢ)の音(おと)聞こゆ 2068天(あま)の原(はら)振り放(さ)け見れば天(あま)の川(がは)霧(きり)立ちわたる君は来(き)ぬらし 2069天(…

晩蝉は時と鳴けども・・・巻第10-1982

訓読 >>> 晩蝉(ひぐらし)は時と鳴けども恋(こ)ふるにし手弱女(たわやめ)われは時わかず泣く 要旨 >>> ヒグラシは悲しく鳴くといっても時を定めていますが、恋している手弱女の私は、時に関係なく泣いています。 鑑賞 >>> カナカナ蝉とも呼ば…

六月の地さへ裂けて・・・巻第10-1995

訓読 >>> 六月(みなづき)の地(つち)さへ裂(さ)けて照る日にも我(わ)が袖(そで)干(ひ)めや君に逢はずして 要旨 >>> 六月の、地面さえ裂けて照りつける日射しにも、私の着物の袖は涙で乾くことがありません。あなたにお逢いできないので。 …

誰そかれと我れをな問ひそ・・・巻第10-2240

訓読 >>> 誰(た)そかれと我(わ)れをな問ひそ九月(ながつき)の露(つゆ)に濡れつつ君待つ我(わ)れを 要旨 >>> 誰なのか、などと私にお聞きにならないで下さい。九月の冷たい露に濡れながら、あなたを待っている私なのです。 鑑賞 >>> 女が…

我が宿の花橘は・・・巻第10-1969

訓読 >>> 我が宿(やど)の花橘(はなたちばな)は散りにけり悔(くや)しき時に逢へる君かも 要旨 >>> 我が家の庭の花橘は散ってしまいました。こんな時にあなたにお逢いするのがとても残念です。 鑑賞 >>> 類想の多い歌であり、来訪した客に対し…

卯の花の咲き散る岡ゆ・・・巻第10-1976~1977

訓読 >>> 1976卯(う)の花の咲き散る岡ゆ霍公鳥(ほととぎす)鳴きてさ渡る君は聞きつや 1977聞きつやと君が問はせる霍公鳥(ほととぎす)しののに濡れてこゆ鳴き渡る 要旨 >>> 〈1976〉卯の花が咲き散る岡の上を、霍公鳥が鳴いて渡っていきましたよ…