大和の国のこころ、万葉のこころ

不肖私がこよなく愛する『万葉集』の鑑賞blogです。

巻第12

月草のうつろふ心・・・巻第12-3058~3059

訓読 >>> 3058うちひさす宮にはあれど月草(つきくさ)のうつろふ心(こころ)我(わ)が思はなくに 3059百(もも)に千(ち)に人は言ふとも月草(つきくさ)のうつろふ心 我(わ)れ持ためやも 要旨 >>> 〈3058〉華やかな宮仕えをしていますが、色の…

梓弓末は知らねど・・・巻第12-3149~3150

訓読 >>> 3149梓弓(あづさゆみ)末(すゑ)は知らねど愛(うるは)しみ君にたぐひて山道(やまぢ)越え来(き)ぬ 3150霞(かすみ)立つ春の長日(ながひ)を奥処(おくか)なく知らぬ山道(やまぢ)を恋ひつつか来(こ)む 要旨 >>> 〈3149〉行く末…

我が恋ひ死なば誰が名ならむも・・・巻第12-3105~3106

訓読 >>> 3105人目(ひとめ)多み直(ただ)に逢はずてけだしくも我(あ)が恋ひ死なば誰(た)が名ならむも 3106相(あひ)見まく欲しきがためは君よりも我(わ)れぞまさりていふかしみする 要旨 >>> 〈3105〉人目が多いからといってじかに逢ってく…

一重の衣を一人着て寝れ・・・巻第12-2853

訓読 >>> 真玉(またま)つく遠(をち)をし兼ねて思へこそ一重(ひとへ)の衣(ころも)ひとり着て寝(ぬ)れ 要旨 >>> 私たちの将来のことを考えるからこそ、一重の薄い着物にくるまって一人寂しく着て寝ているのです。 鑑賞 >>> 「真玉つく」は…

紫は灰さすものぞ・・・巻第12-3101~3102

訓読 >>> 3101紫(むらさき)は灰(はひ)さすものぞ海石榴市(つばきち)の八十(やそ)の衢(ちまた)に逢へる子や誰(た)れ 3102たらちねの母が呼ぶ名を申(まを)さめど道行く人を誰(た)れと知りてか 要旨 >>> 〈3101〉紫は灰をさして作るもの…

ありありて後も逢はむと言のみを・・・巻第12-3113~3114

訓読 >>> 3113ありありて後(のち)も逢はむと言(こと)のみを堅(かた)く言ひつつ逢ふとはなしに 3114極(きは)まりて我(わ)れも逢はむと思へども人の言(こと)こそ繁(しげ)き君にあれ 要旨 >>> 〈3113〉ずっとこのままの気持ちでいて、後に…

うつせみの常の辞と思へども・・・巻第12-2961

訓読 >>> うつせみの常(つね)の辞(ことば)と思へども継(つ)ぎてし聞けば心(こころ)惑(まど)ひぬ 要旨 >>> 世間の通りいっぺんの言葉だとは思いますが、続けて何度も聞くと、心は乱れてしまいます。 鑑賞 >>> 女が男の求婚に答えた歌です…

旅にし居れば刈り薦の・・・巻第12-3176

訓読 >>> 草枕(くさまくら)旅にし居(を)れば刈り薦(こも)の乱れて妹(いも)に恋ひぬ日はなし 要旨 >>> 旅にあって寝床のために刈り取った薦が乱れるように、私の心は乱れて妻を恋しく思わない日はない。 鑑賞 >>> 「羈旅発思」(旅にあって…

白栲の袖の別れを難みして・・・巻第12-3215~3216

訓読 >>> 3215白栲(しろたへ)の袖(そで)の別れを難(かた)みして荒津(あらつ)の浜に宿(やど)りするかも 3216草枕(くさまくら)旅行く君を荒津(あらつ)まで送りぞ来(き)ぬる飽(あ)き足(だ)らねこそ 要旨 >>> 〈3215〉このままあの子…

鴨すらもおのが妻どちあさりして・・・巻第12-3091

訓読 >>> 鴨(かも)すらもおのが妻(つま)どちあさりして後(おく)るる間(あひだ)に恋ふといふものを 要旨 >>> 鴨でさえ、妻と一緒に餌をあさっているうちに、妻が少しでも遅れると恋しがるというのに。 鑑賞 >>> 夫から冷たくされている妻が…

桧隈川に馬留め・・・巻第12-3907

訓読 >>> さ桧隈(ひのくま)桧隈川(ひのくまかは)に馬(うま)留(とど)め馬に水(みづ)飼(か)へ我(わ)れ外(よそ)に見む 要旨 >>> 桧隈を流れる桧隈川のほとりに馬をとめて、馬に水をお与え下さい。私はよそながらあなたのお姿を眺めましょ…

ひさかたの雨の降る日を・・・巻第12-3125~3126

訓読 >>> 3125ひさかたの雨の降る日を我(わ)が門(かど)に蓑笠(みのかさ)着(き)ずて来る人や誰(た)れ 3126巻向(まきむく)の穴師(あなし)の山に雲(くも)居(ゐ)つつ雨は降れども濡(ぬ)れつつぞ来し 要旨 >>> 〈3125〉雨が降っている…

袖を笠に着濡れつつぞ来し・・・巻第12-3123~3124

訓読 >>> 3123ただひとり寝(ぬ)れど寝(ね)かねて白栲(しろたへ)の袖(そで)を笠に着(き)濡れつつぞ来(こ)し 3124雨も降り夜(よ)も更(ふ)けにけり今さらに君 去(い)なめやも紐(ひも)解き設(ま)けな 要旨 >>> 〈3123〉たった一人で…

顧みに行けど帰らず・・・巻第12-3132

訓読 >>> な行きそと帰りも来(く)やと顧(かへり)みに行けど帰らず道の長手(ながて)を 要旨 >>> 「行ってはいや」と、見送りの妻が言うために引き返して来るかと、振り返り振り返り行くけれど、とうとう妻は引き返して来ない。これから長い道のり…

夜戸出の姿見てしより・・・巻第12-2950

訓読 >>> 我妹子(わぎもこ)が夜戸出(よとで)の姿見てしより心 空(そら)なり地(つち)は踏めども 要旨 >>> いとしいあの子が、夜、戸を開けて外に出てくる姿を見てからというもの、心は上の空だ、土は踏んでいるけれども。 鑑賞 >>> 「夜戸出…

人妻に言ふは誰が言・・・巻第12-2866

訓読 >>> 人妻に言ふは誰(た)が言(こと)さ衣(ごろも)のこの紐(ひも)解けと言ふは誰が言(こと) 要旨 >>> 人妻である私に言い寄るのは誰のおことば? 下着の紐を解いて寝ようと言い寄るのは誰のおことば? 鑑賞 >>> 「さ衣」の「さ」は接頭…

みをつくし心尽くして・・・巻第12-3162

訓読 >>> みをつくし心尽くして思へかもここにももとな夢(いめ)にし見ゆる 要旨 >>> 家の妻が、身を尽くし心を尽くして私のことを思ってくれているせいか、旅先のここにいても、わけもなく妻の姿が夢に出てくる。 鑑賞 >>> 「羈旅発思」(旅にあ…

年下の男・・・巻第12-2925~2926

訓読 >>> 2925みどり子のためこそ乳母(おも)は求むと言へ乳(ち)飲めや君が乳母(おも)求むらむ 2926悔しくも老いにけるかも我が背子が求むる乳母(おも)に行かましものを 要旨 >>> 〈2925〉幼い子に乳をあたえるために乳母を求めるといいます。…

なかなかに何か知りけむ・・・巻第12-3033

訓読 >>> なかなかに何か知りけむ我が山に燃ゆる煙(けぶり)の外(よそ)に見ましを 要旨 >>> どうして私はあの人と知り合ってしまったのでしょうか。近くの山に立ち上る煙を眺めるように、遠くから見ているだけでよかったのに、私自身に火がついてし…

おのれゆゑ罵らえて居れば・・・巻第12-3098

訓読 >>> おのれ故(ゆゑ)罵(の)らえて居(を)れば青馬(あおうま)の面高(おもたか)夫駄(ぶだ)に乗りて来(く)べしや 要旨 >>> あんたのせいで叱られている折も折、人目につく白い面長の馬に乗って、よくも堂々と訪ねて来れたものですね。 …

胸は破れて砕けて・・・巻第12-2894

訓読 >>> 聞きしより物を思へば我が胸は破(やぶ)れて砕(くだ)けて利心(とごころ)もなし 要旨 >>> 噂に聞いて以来、その人に恋して物思いをしていますので、私の胸は破れて砕けて、理性で判断できる心もありません。 鑑賞 >>> 「聞きしより」…

下紐開けて・・・巻第12-2851

訓読 >>> 人の見る上は結びて人の見ぬ下紐(したひも)開けて恋(こ)ふる日ぞ多き 要旨 >>> 人の見る上着の紐はきちんと結び、人の目に触れない下着の紐をあけて、あなたを恋焦がれる日が重なっています。 鑑賞 >>> 万葉時代の人々は、衣の紐が自…

「妹(いも)」と呼んでみたい・・・巻第12-2915

訓読 >>> 妹(いも)と言はば無礼(なめ)し畏(かしこ)ししかすがに懸けまく欲しき言(こと)にあるかも 要旨 >>> あの娘(こ)のことを妹(いも)と呼んだら失礼だし恐れ多いけれど、そうは言ってもはっきり口に出して言ってみたい言葉だ。 鑑賞 >…