大和の国のこころ、万葉のこころ

不肖私がこよなく愛する『万葉集』の鑑賞blogです。

巻第12

吾が齢し衰へぬれば・・・巻第12-2952

訓読 >>> 吾が齢(よはひ)し衰(おとろ)へぬれば白細布(しろたへ)の袖のなれにし君をしぞ思ふ 要旨 >>> おれも年を取って体も衰えてしまったが、今しげしげと通わなくても、長年馴れ親しんだお前のことが思い出されてならない。 鑑賞 >>> 作者…

うつつにか妹が来ませる・・・巻第12-2917

訓読 >>> うつつにか妹(いも)が来ませる夢(いめ)にかも我(わ)れか惑(まど)へる恋の繁(しげ)きに 要旨 >>> 実際に彼女がやってきたのか、それとも夢なのか、あるいは私が取り乱しているのか、恋の激しさのために。 鑑賞 >>> 作者未詳の「…

逢はなくは然もありなむ・・・巻第12-3103~3104

訓読 >>> 3103逢はなくは然(しか)もありなむ玉梓(たまづさ)の使(つかひ)をだにも待ちやかねてむ 3104逢はむとは千度(ちたび)思へどあり通(がよ)ふ人目(ひとめ)を多み恋つつぞ居(を)る 要旨 >>> 〈3103〉逢えないことがあるのは仕方ない…

君が使を待ちし夜のなごりぞ・・・巻第12-2945

訓読 >>> 玉梓(たまづさ)の君が使(つかひ)を待ちし夜(よ)のなごりぞ今も寐(い)ねぬ夜(よ)の多き 要旨 >>> あなたからのお使いを、いつもお待ちしていた夜の名残に違いありません。今でもなお寝られない夜が多いのは。 鑑賞 >>> 「正述心…

あぢさはふ目は飽かざらね・・・巻第12-2934

訓読 >>> あぢさはふ目は飽(あ)かざらね携(たづさは)り言(こと)とはなくも苦しくありけり 要旨 >>> 近くでいつもお見かけしていながら、手を取り合ってお話できないのは苦しいことです。 鑑賞 >>> 「正述心緒(ありのままに思いを述べた歌)…

山河の水陰に生ふる山菅の・・・巻第12-2862

訓読 >>> 山河の水陰(みかげ)に生ふる山菅(やますげ)の止(や)まずも妹(いも)がおもほゆるかも 要旨 >>> 山川の水辺の陰に生えている山菅(やますげ)のように、止まずに私はあなたを思っています。 鑑賞 >>> 『柿本人麻呂歌集』から「寄物…

愛しみ我が念ふ妹を・・・巻第12-2843

訓読 >>> 愛(うつく)しみ我(わ)が念(も)ふ妹(いも)を人みなの行く如(ごと)見めや手にまかずして 要旨 >>> おれの恋しい女が今あちらを歩いているが、それを普通の女と同じに平然と見ていられようか、手にまくことなしに。 鑑賞 >>> 『柿…

我が背子が朝けの形能く見ずて・・・巻第12-2841

訓読 >>> 我(わ)が背子(せこ)が朝けの形(すがた)能(よ)く見ずて今日(けふ)の間(あひだ)を恋ひ暮らすかも 要旨 >>> 私の夫が朝早くお帰りになる時の姿をよく見ずにしまって、一日中物足りなく寂しく思い、恋しく暮らしています。 鑑賞 >>…

妹すらを人妻なりと聞けば悲しも・・・巻第12-3115~3116

訓読 >>> 3115息の緒(を)に我(あ)が息づきし妹(いも)すらを人妻なりと聞けば悲しも3116我(わ)が故(ゆゑ)にいたくなわびそ後(のち)つひに逢はじと言ひしこともあらなくに 要旨 >>> 〈3115〉命のかぎり恋い焦がれて苦しく溜め息ついていたあ…

海石榴市の八十の衢に立ち平し・・・巻第12-2951

訓読 >>> 海石榴市(つばいち)の八十(やそ)の衢(ちまた)に立ち平(なら)し結びし紐(ひも)を解(と)かまく惜しも 要旨 >>> あの海石榴市の里の道のたくさん交わる辻で、あちこち歩き回り出逢ったあの人が、結んでくれた紐を解くのは、あまりに…

逢へる時さへ面隠しする・・・巻第12-2916

訓読 >>> 玉勝間(たまかつま)逢はむといふは誰(たれ)なるか逢へる時さへ面隠(おもかく)しする 要旨 >>> 私に逢おうといったのは一体誰なのだろう、それなのに、せっかく逢ったのに顔を隠したりなんかして。 鑑賞 >>> 男が女に言った歌。「玉…

月草のうつろふ心・・・巻第12-3058~3059

訓読 >>> 3058うちひさす宮にはあれど月草(つきくさ)のうつろふ心(こころ)我(わ)が思はなくに 3059百(もも)に千(ち)に人は言ふとも月草(つきくさ)のうつろふ心 我(わ)れ持ためやも 要旨 >>> 〈3058〉華やかな宮仕えをしていますが、色の…

梓弓末は知らねど・・・巻第12-3149~3150

訓読 >>> 3149梓弓(あづさゆみ)末(すゑ)は知らねど愛(うるは)しみ君にたぐひて山道(やまぢ)越え来(き)ぬ 3150霞(かすみ)立つ春の長日(ながひ)を奥処(おくか)なく知らぬ山道(やまぢ)を恋ひつつか来(こ)む 要旨 >>> 〈3149〉行く末…

我が恋ひ死なば誰が名ならむも・・・巻第12-3105~3106

訓読 >>> 3105人目(ひとめ)多み直(ただ)に逢はずてけだしくも我(あ)が恋ひ死なば誰(た)が名ならむも 3106相(あひ)見まく欲しきがためは君よりも我(わ)れぞまさりていふかしみする 要旨 >>> 〈3105〉人目が多いからといってじかに逢ってく…

一重の衣を一人着て寝れ・・・巻第12-2853

訓読 >>> 真玉(またま)つく遠(をち)をし兼ねて思へこそ一重(ひとへ)の衣(ころも)ひとり着て寝(ぬ)れ 要旨 >>> 私たちの将来のことを考えるからこそ、一重の薄い着物にくるまって一人寂しく着て寝ているのです。 鑑賞 >>> 「真玉つく」は…

紫は灰さすものぞ・・・巻第12-3101~3102

訓読 >>> 3101紫(むらさき)は灰(はひ)さすものぞ海石榴市(つばきち)の八十(やそ)の衢(ちまた)に逢へる子や誰(た)れ 3102たらちねの母が呼ぶ名を申(まを)さめど道行く人を誰(た)れと知りてか 要旨 >>> 〈3101〉紫は灰をさして作るもの…

ありありて後も逢はむと言のみを・・・巻第12-3113~3114

訓読 >>> 3113ありありて後(のち)も逢はむと言(こと)のみを堅(かた)く言ひつつ逢ふとはなしに 3114極(きは)まりて我(わ)れも逢はむと思へども人の言(こと)こそ繁(しげ)き君にあれ 要旨 >>> 〈3113〉ずっとこのままの気持ちでいて、後に…

うつせみの常の辞と思へども・・・巻第12-2961

訓読 >>> うつせみの常(つね)の辞(ことば)と思へども継(つ)ぎてし聞けば心(こころ)惑(まど)ひぬ 要旨 >>> 世間の通りいっぺんの言葉だとは思いますが、続けて何度も聞くと、心は乱れてしまいます。 鑑賞 >>> 女が男の求婚に答えた歌です…

旅にし居れば刈り薦の・・・巻第12-3176

訓読 >>> 草枕(くさまくら)旅にし居(を)れば刈り薦(こも)の乱れて妹(いも)に恋ひぬ日はなし 要旨 >>> 旅にあって寝床のために刈り取った薦が乱れるように、私の心は乱れて妻を恋しく思わない日はない。 鑑賞 >>> 「羈旅発思」(旅にあって…

白栲の袖の別れを難みして・・・巻第12-3215~3216

訓読 >>> 3215白栲(しろたへ)の袖(そで)の別れを難(かた)みして荒津(あらつ)の浜に宿(やど)りするかも 3216草枕(くさまくら)旅行く君を荒津(あらつ)まで送りぞ来(き)ぬる飽(あ)き足(だ)らねこそ 要旨 >>> 〈3215〉このままあの子…

鴨すらもおのが妻どちあさりして・・・巻第12-3091

訓読 >>> 鴨(かも)すらもおのが妻(つま)どちあさりして後(おく)るる間(あひだ)に恋ふといふものを 要旨 >>> 鴨でさえ、妻と一緒に餌をあさっているうちに、妻が少しでも遅れると恋しがるというのに。 鑑賞 >>> 夫から冷たくされている妻が…

桧隈川に馬留め・・・巻第12-3907

訓読 >>> さ桧隈(ひのくま)桧隈川(ひのくまかは)に馬(うま)留(とど)め馬に水(みづ)飼(か)へ我(わ)れ外(よそ)に見む 要旨 >>> 桧隈を流れる桧隈川のほとりに馬をとめて、馬に水をお与え下さい。私はよそながらあなたのお姿を眺めましょ…

ひさかたの雨の降る日を・・・巻第12-3125~3126

訓読 >>> 3125ひさかたの雨の降る日を我(わ)が門(かど)に蓑笠(みのかさ)着(き)ずて来る人や誰(た)れ 3126巻向(まきむく)の穴師(あなし)の山に雲(くも)居(ゐ)つつ雨は降れども濡(ぬ)れつつぞ来し 要旨 >>> 〈3125〉雨が降っている…

袖を笠に着濡れつつぞ来し・・・巻第12-3123~3124

訓読 >>> 3123ただひとり寝(ぬ)れど寝(ね)かねて白栲(しろたへ)の袖(そで)を笠に着(き)濡れつつぞ来(こ)し 3124雨も降り夜(よ)も更(ふ)けにけり今さらに君 去(い)なめやも紐(ひも)解き設(ま)けな 要旨 >>> 〈3123〉たった一人で…

顧みに行けど帰らず・・・巻第12-3132

訓読 >>> な行きそと帰りも来(く)やと顧(かへり)みに行けど帰らず道の長手(ながて)を 要旨 >>> 「行ってはいや」と、見送りの妻が言うために引き返して来るかと、振り返り振り返り行くけれど、とうとう妻は引き返して来ない。これから長い道のり…

夜戸出の姿見てしより・・・巻第12-2950

訓読 >>> 我妹子(わぎもこ)が夜戸出(よとで)の姿見てしより心 空(そら)なり地(つち)は踏めども 要旨 >>> いとしいあの子が、夜、戸を開けて外に出てくる姿を見てからというもの、心は上の空だ、土は踏んでいるけれども。 鑑賞 >>> 「夜戸出…

人妻に言ふは誰が言・・・巻第12-2866

訓読 >>> 人妻に言ふは誰(た)が言(こと)さ衣(ごろも)のこの紐(ひも)解けと言ふは誰が言(こと) 要旨 >>> 人妻である私に言い寄るのは誰のおことば? 下着の紐を解いて寝ようと言い寄るのは誰のおことば? 鑑賞 >>> 「さ衣」の「さ」は接頭…

みをつくし心尽くして・・・巻第12-3162

訓読 >>> みをつくし心尽くして思へかもここにももとな夢(いめ)にし見ゆる 要旨 >>> 家の妻が、身を尽くし心を尽くして私のことを思ってくれているせいか、旅先のここにいても、わけもなく妻の姿が夢に出てくる。 鑑賞 >>> 「羈旅発思」(旅にあ…

年下の男・・・巻第12-2925~2926

訓読 >>> 2925みどり子のためこそ乳母(おも)は求むと言へ乳(ち)飲めや君が乳母(おも)求むらむ 2926悔しくも老いにけるかも我が背子が求むる乳母(おも)に行かましものを 要旨 >>> 〈2925〉幼い子に乳をあたえるために乳母を求めるといいます。…

なかなかに何か知りけむ・・・巻第12-3033

訓読 >>> なかなかに何か知りけむ我が山に燃ゆる煙(けぶり)の外(よそ)に見ましを 要旨 >>> どうして私はあの人と知り合ってしまったのでしょうか。近くの山に立ち上る煙を眺めるように、遠くから見ているだけでよかったのに、私自身に火がついてし…