大和の国のこころ、万葉のこころ

不肖私がこよなく愛する『万葉集』の鑑賞blogです。

巻第13

赤駒を廏に立て黒駒を・・・巻第13-3278~3279

訓読 >>> 3278赤駒(あかごま)を 廏(うまや)に立て 黒駒(くろこま)を 廏に立てて それを飼ひ 我(わ)が行くごとく 思ひ妻(づま) 心に乗りて 高山(たかやま)の 峰(みね)のたをりに 射目(いめ)立てて 鹿猪(しし)待つごとく 床(とこ)敷(…

父母に知らせぬ子ゆゑ・・・巻第13-3295~3296

訓読 >>> 3295うちひさつ 三宅(みやけ)の原ゆ 直土(ひたつち)に 足踏み貫(ぬ)き 夏草を 腰になづみ いかなるや 人の子ゆゑぞ 通(かよ)はすも我子(あご) うべなうべな 母は知らじ うべなうべな 父は知らじ 蜷(みな)の腸(わた) か黒(ぐろ)…

小冶田の年魚道の水を・・・巻第13-3260~3262

訓読 >>> 3260小冶田(をはりだ)の 年魚道(あゆぢ)の水を 間(ま)なくそ 人は汲(く)むといふ 時(とき)じくそ 人は飲むといふ 汲む人の 間(ま)なきがごと 飲む人の 時じきがごと 我妹子(わぎもこ)に 我(あ)が恋ふらくは 止(や)む時もなし …

帰りにし人を思ふと・・・巻第13-3268~3269

訓読 >>> 3268三諸(みもろ)の 神奈備山(かむなびやま)ゆ との曇(ぐも)り 雨は降り来(き)ぬ 天霧(あまぎ)らひ 風さへ吹きぬ 大口(おほくち)の 真神(まかみ)の原ゆ 思ひつつ 帰りにし人 家に至りきや 3269帰りにし人を思ふとぬばたまのその夜…

この月は君来まさむと・・・巻第13-3344~3345

訓読 >>> 3344この月は 君(きみ)来(き)まさむと 大船(おほふね)の 思ひ頼みて いつしかと 我(わ)が待ち居(を)れば 黄葉(もみちば)の 過ぎてい行くと 玉梓(たまづさ)の 使ひの言へば 蛍(ほたる)なす ほのかに聞きて 大地(おほつち)を 炎…

三諸は人の守る山・・・巻第13-3222

訓読 >>> 三諸(みもろ)は 人の守(も)る山 本辺(もとへ)には 馬酔木(あしび)花咲き 末辺(すゑへ)には 椿(つばき)花咲く うらぐはし 山そ 泣く子守(も)る山 要旨 >>> みもろの山は、人々が大切に守っている山だ。麓のあたりには馬酔木の花…

隠口の泊瀬の川の上つ瀬に・・・巻第13-3263~3265

訓読 >>> 3263隠口(こもりく)の 泊瀬(はつせ)の川の 上(かみ)つ瀬に 斎杭(いくひ)を打ち 下(しも)つ瀬に 真杭(まくひ)を打ち 斎杭には 鏡を掛(か)け 真杭には 真玉(またま)を掛け 真玉なす 我(あ)が思(おも)ふ妹(いも)も 鏡なす 我…

我が背子は待てど来まさず・・・巻第13-3280~3283

訓読 >>> 3280我(わ)が背子(せこ)は 待てど来まさず 天(あま)の原 振り放(さ)け見れば ぬばたまの 夜(よ)も更(ふ)けにけり さ夜(よ)ふけて あらしの吹けば 立ち待てる 我(わ)が衣手(ころもで)に 降る雪は 凍(こほ)りわたりぬ 今さら…

百足らず山田の道を・・・巻第13-3276~3277

訓読 >>> 3276百(もも)足らず 山田(やまだ)の道を 波雲(なみくも)の 愛(うつく)し妻(づま)と 語らはず 別れし来れば 早川の 行きも知らず 衣手(ころもで)の 帰りも知らず 馬(うま)じもの 立ちてつまづき 為(せ)むすべの たづきを知らに …

為むすべのたづきを知らに・・・巻第13-3274~3275

訓読 >>> 3274為(せ)むすべの たづきを知らに 岩が根の こごしき道を 岩床(いはとこ)の 根延(ねば)へる門(かど)を 朝(あした)には 出(い)で居(ゐ)て嘆き 夕(ゆふへ)には 入り居て偲(しの)ひ 白たへの 我(わ)が衣手(ころもで)を 折…

うつせみの命を長くありこそと・・・巻第13-3291~3292

訓読 >>> 3291み吉野の 真木(まき)立つ山に 青く生(お)ふる 山菅(やますが)の根の ねもころに 我(あ)が思(おも)ふ君は 大君(おほきみ)の 任(ま)けのまにまに〈或る本に云ふ、大君の命(みこと)恐(かしこ)み〉 鄙離(ひなざか)る 国 治…

幸くあらばまたかへり見む・・・巻第13-3240~3241

訓読 >>> 3240大君(おほきみ)の 命(みこと)畏(かしこ)み 見れど飽かぬ 奈良山越えて 真木(まき)積む 泉(いずみ)の川の 早き瀬を 棹(さを)さし渡り ちはやぶる 宇治(うぢ)の渡りの 激(たき)つ瀬を 見つつ渡りて 近江道(あふみぢ)の 逢坂…

敷島の大和の国に人二人・・・巻第13-3248~3249

訓読 >>> 3248敷島(しきしま)の 大和の国に 人(ひと)多(さは)に 満ちてあれども 藤波(ふぢなみ)の 思ひ纏(まつ)はり 若草の 思ひつきにし 君が目に 恋(こ)ひや明かさむ 長きこの夜(よ)を 3249敷島(しきしま)の大和の国に人(ひと)二人(…

さざれ波浮きて流るる泊瀬川・・・巻第13-3225~3226

訓読 >>> 3225天雲(あまくも)の 影さへ見ゆる 隠(こも)りくの 泊瀬(はつせ)の川は 浦(うら)無(な)みか 舟の寄り来(こ)ぬ 磯(いそ)無(な)みか 海人(あま)の釣(つり)せぬ よしゑやし 浦は無くとも よしゑやし 磯は無くとも 沖つ波 競(…

逢坂をうち出でて見れば・・・巻第13-3236~3238

訓読 >>> 3236そらみつ 大和の国 あをによし 奈良山(ならやま)越えて 山背(やましろ)の 管木(つつき)の原 ちはやぶる 宇治の渡り 岡屋(をかのや)の 阿後尼(あごね)の原を 千歳(ちとせ)に 欠くることなく 万代(よろずよ)に あり通(がよ)は…

くはし妹に鮎を惜しみ・・・巻第13-3330~3332

訓読 >>> 3330こもくりの 泊瀬(はつせ)の川の 上(かみ)つ瀬に 鵜(う)を八(や)つ潜(かづ)け 下(しも)つ瀬に 鵜を八つ潜け 上つ瀬の 鮎(あゆ)を食(く)はしめ 下つ瀬の 鮎を食はしめ くはし妹(いも)に 鮎を惜(を)しみ くはし妹に 鮎を惜…

物思はず道行く行くも・・・巻第13-3305~3308

訓読 >>> 3305物思(ものも)はず 道行く行くも 青山を 振りさけ見れば つつじ花(はな) にほへ娘子(をとめ) 桜花(さくらばな) 栄(さか)へ娘子(をとめ) 汝(な)れをそも 我(わ)れに寄すといふ 我(わ)れをもそ 汝(な)れに寄すといふ 荒山…

いにしへの神の時より逢ひけらし・・・巻第13-3289~3290

訓読 >>> 3289み佩(は)かしを 剣(つるぎ)の池の 蓮葉(はちすば)に 溜(た)まれる水の 行くへなみ 我(わ)がする時に 逢ふべしと 逢ひたる君を な寐寝(いね)そと 母聞こせども 我(あ)が心 清隅(きよすみ)の池の 池の底 我(わ)れは忘れじ …

玉たすき懸けぬ時なく我が思へる・・・巻第13-3286~3287

訓読 >>> 3286玉たすき 懸(か)けぬ時なく 我(あ)が思(おも)へる 君によりては 倭文幣(しつぬさ)を 手に取り持ちて 竹玉(たかたま)を しじに貫(ぬ)き垂(た)れ 天地(あめつち)の 神をそ我(あ)が祈(の)む いたもすべなみ 3287天地(あめ…

心はよしゑ君がまにまに・・・巻第13-3284~3285

訓読 >>> 3284菅(すが)の根の ねもころごろに 我(あ)が思(おも)へる 妹(いも)によりては 言(こと)の忌みも なくありこそと 斎瓮(いはひへ)を 斎(いは)ひ掘り据(す)ゑ 竹玉(たかたま)を 間(ま)なく貫(ぬ)き垂(た)れ 天地(あめつ…

冬ごもり春さり来れば・・・巻第13-3221

訓読 >>> 冬こもり 春さり来れば 朝(あした)には 白露(しらつゆ)置き 夕(ゆうへ)には 霞たなびく 風の吹く 木末(こぬれ)が下(した)に うぐひす鳴くも 要旨 >>> 春がやって来ると、朝方には白露が置き、夕方には霞たなびく。風が吹く山の梢の…

聞かずして黙もあらましを・・・巻第13-3303~3304

訓読 >>> 3303里人(さとびと)の 我(あ)れに告(つ)ぐらく 汝(な)が恋ふる 愛(うるは)し夫(づま)は 黄葉(もみちば)の 散りまがひたる 神奈備(かむなび)の この山辺(やまへ)から[或る本に云く、その山辺] ぬばたまの 黒馬(くろま)に乗…

み雪降る吉野の岳に居る雲の・・・巻第13-3293~3294

訓読 >>> 3293み吉野の 御金(みかね)の岳(たけ)に 間(ま)なくそ 雨は降るといふ 時(とき)じくそ 雪は降るといふ その雨の 間(ま)なきがごとく その雪の 時じきがごと 間(ま)も落ちず 我(あ)れはそ恋ふる 妹(いも)が正香(ただか)に 3294…

この旅の日に妻放くべしや・・・巻第13-3346~3347

訓読 >>> 3346見欲(みほ)しきは 雲居(くもゐ)に見ゆる うるはしき 鳥羽(とば)の松原 童(わらは)ども いざわ出(い)で見む こと放(さ)けは 国に放けなむ こと放けば 家に放けなむ 天地(あめつち)の 神し恨(うら)めし 草枕 この旅の日(け)…

葦原の瑞穂の国に手向けすと・・・巻第13-3227~3229

訓読 >>> 3227葦原(あしはら)の 瑞穂(みずほ)の国に 手向(たむ)けすと 天降(あも)りましけむ 五百万(いほよろづ)千万神(ちよろづかみ)の 神代(かむよ)より 言ひ継ぎ来(きた)る 神(かむ)なびの みもろの山は 春されば 春霞(はるかすみ…

鳴き立てる馬・・・巻第13-3327~3328

訓読 >>> 3327百小竹(ももしの)の 三野(みの)の王(おほきみ) 西の厩(うまや) 立てて飼(か)ふ駒(こま) 東(ひむがし)の厩(うまや) 立てて飼ふ駒 草こそば 取りて飼ふと言へ 水こそば 汲(く)みて飼ふと言へ 何しかも 葦毛(あしげ)の馬の…

かくのみし相思はずあらば・・・巻第13-3258~3259

訓読 >>> 3258あらたまの 年は来(き)去りて 玉梓(たまづさ)の 使ひの来(こ)ねば 霞(かすみ)立つ 長き春日(はるひ)を 天地(あめつち)に 思ひ足(た)らはし たらちねの 母が飼(か)ふ蚕(こ)の 繭隠(まよごも)り 息づき渡り 我(あ)が恋…

汝が母を取らくを知らに・・・巻第13-3239

訓読 >>> 近江(あふみ)の海 泊(とま)り八十(やそ)あり 八十島(やそしま)の 島の崎々(さきざき) あり立てる 花橘(はなたちばな)を ほつ枝(え)に もち引き掛け 中つ枝(え)に 斑鳩(いかるが)懸け 下枝(しづえ)に 比米(ひめ)を懸け 汝…

水死者を見て詠んだ歌・・・巻第13-3336~3338

訓読 >>> 3336鳥が音(ね)の 神島(かしま)の海に 高山(たかやま)を 隔(へだ)てになして 沖つ藻(も)を 枕(まくら)になし 蛾羽(ひむしは)の 衣(きぬ)だに着ずに いさなとり 海の浜辺(はまへ)に うらもなく 臥(ふ)したる人は 母父(おも…

さし焼かむ小屋の醜屋に・・・巻第13-3270~3271

訓読 >>> 3270さし焼かむ 小屋(こや)の醜屋(しこや)に かき棄(う)てむ 破(や)れ薦(ごも)敷きて うち折らむ 醜(しこ)の醜手(しこて)を さし交(か)へて 寝(ね)らむ君ゆゑ あかねさす 昼はしみらに ぬばたまの 夜(よる)はすがらに この…