大和の国のこころ、万葉のこころ

不肖私がこよなく愛する『万葉集』の鑑賞blogです。

巻第13

幸くあらばまたかへり見む・・・巻第13-3240~3241

訓読 >>> 3240大君(おほきみ)の 命(みこと)畏(かしこ)み 見れど飽かぬ 奈良山越えて 真木(まき)積む 泉(いずみ)の川の 早き瀬を 棹(さを)さし渡り ちはやぶる 宇治(うぢ)の渡りの 激(たき)つ瀬を 見つつ渡りて 近江道(あふみぢ)の 逢坂…

敷島の大和の国に人二人・・・巻第13-3248~3249

訓読 >>> 3248敷島(しきしま)の 大和の国に 人(ひと)多(さは)に 満ちてあれども 藤波(ふぢなみ)の 思ひ纏(まつ)はり 若草の 思ひつきにし 君が目に 恋(こ)ひや明かさむ 長きこの夜(よ)を 3249敷島(しきしま)の大和の国に人(ひと)二人(…

さざれ波浮きて流るる泊瀬川・・・巻第13-3225~3226

訓読 >>> 3225天雲(あまくも)の 影さへ見ゆる 隠(こも)くりの 泊瀬(はつせ)の川は 浦なみか 舟の寄り来(こ)ぬ 磯(いそ)なみか 海人(あま)の釣(つり)せぬ よしゑやし 浦はなくとも よしゑやし 磯はなくとも 沖つ波 競(きほ)ひ漕入(こぎ)…

逢坂をうち出でて見れば・・・巻第13-3236~3238

訓読 >>> 3236そらみつ 大和の国 あをによし 奈良山(ならやま)越えて 山背(やましろ)の 管木(つつき)の原 ちはやぶる 宇治の渡り 岡屋(をかのや)の 阿後尼(あごね)の原を 千歳(ちとせ)に 欠くることなく 万代(よろずよ)に あり通(がよ)は…

くはし妹に鮎を惜しみ・・・巻第13-3330~3332

訓読 >>> 3330こもくりの 泊瀬(はつせ)の川の 上(かみ)つ瀬に 鵜(う)を八(や)つ潜(かづ)け 下(しも)つ瀬に 鵜を八つ潜け 上つ瀬の 鮎(あゆ)を食(く)はしめ 下つ瀬の 鮎を食はしめ くはし妹(いも)に 鮎を惜(を)しみ くはし妹に 鮎を惜…

物思はず道行く行くも・・・巻第13-3305~3308

訓読 >>> 3305物思(ものも)はず 道行く行くも 青山を 振りさけ見れば つつじ花(はな) にほへ娘子(をとめ) 桜花(さくらばな) 栄(さか)へ娘子(をとめ) 汝(な)れをそも 我(わ)れに寄すといふ 我(わ)れをもそ 汝(な)れに寄すといふ 荒山…

いにしへの神の時より逢ひけらし・・・巻第13-3289~3290

訓読 >>> 3289み佩(は)かしを 剣(つるぎ)の池の 蓮葉(はちすば)に 溜(た)まれる水の 行くへなみ 我(わ)がする時に 逢ふべしと 逢ひたる君を な寐寝(いね)そと 母聞こせども 我(あ)が心 清隅(きよすみ)の池の 池の底 我(わ)れは忘れじ …

玉たすき懸けぬ時なく我が思へる・・・巻第13-3286~3287

訓読 >>> 3286玉たすき 懸(か)けぬ時なく 我(あ)が思(おも)へる 君によりては 倭文幣(しつぬさ)を 手に取り持ちて 竹玉(たかたま)を しじに貫(ぬ)き垂(た)れ 天地(あめつち)の 神をそ我(あ)が祈(の)む いたもすべなみ 3287天地(あめ…

心はよしゑ君がまにまに・・・巻第13-3284~3285

訓読 >>> 3284菅(すが)の根の ねもころごろに 我(あ)が思(おも)へる 妹(いも)によりては 言(こと)の忌みも なくありこそと 斎瓮(いはひへ)を 斎(いは)ひ掘り据(す)ゑ 竹玉(たかたま)を 間(ま)なく貫(ぬ)き垂(た)れ 天地(あめつ…

聞かずして黙もあらましを・・・巻第13-3303~3304

訓読 >>> 3303里人(さとびと)の 我(あ)れに告(つ)ぐらく 汝(な)が恋ふる 愛(うるは)し夫(づま)は 黄葉(もみちば)の 散りまがひたる 神奈備(かむなび)の この山辺(やまへ)から[或る本に云く、その山辺] ぬばたまの 黒馬(くろま)に乗…

み雪降る吉野の岳に居る雲の・・・巻第13-3293~3294

訓読 >>> 3293み吉野の 御金(みかね)の岳(たけ)に 間(ま)なくそ 雨は降るといふ 時(とき)じくそ 雪は降るといふ その雨の 間(ま)なきがごとく その雪の 時じきがごと 間(ま)も落ちず 我(あ)れはそ恋ふる 妹(いも)が正香(ただか)に 3294…

この旅の日に妻放くべしや・・・巻第13-3346~3347

訓読 >>> 3346見欲(みほ)しきは 雲居(くもゐ)に見ゆる うるはしき 鳥羽(とば)の松原 童(わらは)ども いざわ出(い)で見む こと放(さ)けは 国に放けなむ こと放けば 家に放けなむ 天地(あめつち)の 神し恨(うら)めし 草枕 この旅の日(け)…

葦原の瑞穂の国に手向けすと・・・巻第13-3227~3229

訓読 >>> 3227葦原(あしはら)の 瑞穂(みずほ)の国に 手向(たむ)けすと 天降(あも)りましけむ 五百万(いほよろづ)千万神(ちよろづかみ)の 神代(かむよ)より 言ひ継ぎ来(きた)る 神(かむ)なびの みもろの山は 春されば 春霞(はるかすみ…

鳴き立てる馬・・・巻第13-3327~3328

訓読 >>> 3327百小竹(ももしの)の 三野(みの)の王(おほきみ) 西の厩(うまや) 立てて飼(か)ふ駒(こま) 東(ひむがし)の厩(うまや) 立てて飼ふ駒 草こそば 取りて飼ふと言へ 水こそば 汲(く)みて飼ふと言へ 何しかも 葦毛(あしげ)の馬の…

かくのみし相思はずあらば・・・巻第13-3258~3259

訓読 >>> 3258あらたまの 年は来(き)去りて 玉梓(たまづさ)の 使ひの来(こ)ねば 霞(かすみ)立つ 長き春日(はるひ)を 天地(あめつち)に 思ひ足(た)らはし たらちねの 母が飼(か)ふ蚕(こ)の 繭隠(まよごも)り 息づき渡り 我(あ)が恋…

汝が母を取らくを知らに・・・巻第13-3239

訓読 >>> 近江(あふみ)の海 泊(とま)り八十(やそ)あり 八十島(やそしま)の 島の崎々(さきざき) あり立てる 花橘(はなたちばな)を ほつ枝(え)に もち引き掛け 中つ枝(え)に 斑鳩(いかるが)懸け 下枝(しづえ)に 比米(ひめ)を懸け 汝…

山ながらかくも現しく・・・巻第13-3332

訓読 >>> 高山(たかやま)と 海とこそば 山ながら かくも現(うつ)しく 海ながら しか真(まこと)ならめ 人は花物(はなもの)そ うつせみ世人(よひと) 要旨 >>> 高い山と海こそは、山であるがゆえに確かに存在し、海であるがゆえにはっきりと存…

水死者を見て詠んだ歌・・・巻第13-3336~3338

訓読 >>> 3336鳥が音(ね)の 神島(かしま)の海に 高山(たかやま)を 隔(へだ)てになして 沖つ藻(も)を 枕(まくら)になし 蛾羽(ひむしは)の 衣(きぬ)だに着ずに いさなとり 海の浜辺(はまへ)に うらもなく 臥(ふ)したる人は 母父(おも…

さし焼かむ小屋の醜屋に・・・巻第13-3270~3271

訓読 >>> 3270さし焼かむ 小屋(こや)の醜屋(しこや)に かき棄(う)てむ 破(や)れ薦(ごも)敷きて うち折らむ 醜(しこ)の醜手(しこて)を さし交(か)へて 寝(ね)らむ君ゆゑ あかねさす 昼はしみらに ぬばたまの 夜(よる)はすがらに この…

君が老ゆらく惜しも・・・巻第13-3247

訓読 >>> 沼名川(ぬなかは)の 底なる玉 求めて 得し玉かも 拾(ひり)ひて 得し玉かも 惜(あたら)しき 君が老ゆらく惜(を)しも 要旨 >>> 沼名川の川底にある玉、探し求めてやっと得た玉よ。拾い求めて持っている玉よ。この玉のようにかけがえも…

馬を買ってください、あなた・・・巻第13-3314~3317

訓読 >>> 3314つぎねふ 山背道(やましろぢ)を 人夫(ひとづま)の 馬より行くに 己夫(おのづま)し 徒歩(かち)より行けば 見るごとに 音(ね)のみし泣かゆ そこ思ふに 心し痛し たらちねの 母が形見と 我(わ)が持てる まそみ鏡に 蜻蛉領巾(あき…

天皇の隠し妻?・・・巻第13-3312~3313

訓読 >>> 3312こもくりの 泊瀬小国(はつせをぐに)に よばひせす 我(わ)が天皇(すめろき)よ 奥床(おくとこ)に 母は寝(い)ねたり 外床(とどこ)に 父は寝(い)ねたり 起き立たば 母知りぬべし 出でて行かば 父知りぬべし ぬばたまの 夜(よ)は…

三重に結ふべく我が身はなりぬ・・・巻第13-3273

訓読 >>> 二つなき恋をしすれば常(つね)の帯(おび)を三重に(みへ)結ふべく我(あ)が身はなりぬ 要旨 >>> 二度とない恋に苦しめられ、普段は一重に結ぶ帯も、三重にも結べる身になってしまった。 鑑賞 >>> 片思いの恋に苦しむあまり、やつれ…

遣唐使を見送る歌・・・巻第13-3253~3254

訓読 >>> 3253葦原(あしはら)の 瑞穂(みずほ)の国は 神(かむ)ながら 言挙(ことあ)げせぬ国 しかれども 言挙げぞ我(わ)がする 言幸(ことさき)く ま幸(さき)くいませと つつみなく 幸(さき)くいまさば 荒磯波(ありそなみ) ありても見むと…

老いゆく夫を悲しむ・・・巻第13-3245~3246

訓読 >>> 3245天橋(あまはし)も 長くもがも 高山(たかやま)も 高くもがも 月読(つくよみ)の 持てる変若水(をちみづ) い取り来て 君に奉(まつ)りて 変若(をち)得てしかも 3246天(あめ)なるや月日(つきひ)のごとく我(あ)が思へる君が日に…