大和の国のこころ、万葉のこころ

不肖私がこよなく愛する『万葉集』の鑑賞blogです。

巻第14

東歌(37)・・・巻第14-3499

訓読 >>> 岡に寄せ我(わ)が刈る萱(かや)のさね萱(かや)のまことなごやは寝(ね)ろとへなかも 要旨 >>> 陸の方に引き寄せながら刈っている萱のように、あの娘は、ほんに素直に私に寝ようと言ってくれない。 鑑賞 >>> 上3句は「なごや」を導く…

防人の歌(33)・・・巻第14-3569~3571

訓読 >>> 3569防人(さきもり)に立ちし朝明(あさけ)の金門出(かなとで)に手離(たばな)れ惜しみ泣きし児(こ)らはも 3570葦(あし)の葉に夕霧(ゆふぎり)立ちて鴨(かも)が音(ね)の寒き夕(ゆふへ)し汝(な)をば偲(しの)はむ 3571己妻(…

東歌(36)・・・巻第14-3465

訓読 >>> 高麗錦(こまにしき)紐(ひも)解き放(さ)けて寝(ぬ)るがへに何(あ)どせろとかもあやに愛(かな)しき 要旨 >>> 華麗な高麗錦の紐を解き放って共寝をしたけれど、この上どうしろというのだ。無性に可愛いくてたまらない。 鑑賞 >>>…

東歌(35)・・・巻第14-3529

訓読 >>> 等夜(とや)の野に兎(をさぎ)狙(ねら)はりをさをさも寝なへ児(こ)ゆゑに母にころはえ 要旨 >>> 等夜(とや)の野に兎を狙っているわけではないが、ろくすっぽ寝てもいないあの子なのに、母親にこっぴどく叱られてしまった。 鑑賞 >>…

東歌(34)・・・巻第14-3544

訓読 >>> 阿須可川(あすかがは)下(した)濁(にご)れるを知らずして背(せ)ななと二人さ寝(ね)て悔しも 要旨 >>> 阿須可川の底が濁っていること、そう、心が濁っているのを知らずに、あんな人と寝てしまって、なんて悔しい。 鑑賞 >>> 女の歌…

東歌(33)・・・巻第14-3491~3493

訓読 >>> 3491柳(やなぎ)こそ伐(き)れば生(は)えすれ世の人の恋に死なむをいかにせよとぞ 3492小山田(をやまだ)の池の堤(つつみ)にさす柳(やなぎ)成りも成らずも汝(な)と二人はも 3493遅速(おそはや)も汝(な)をこそ待ため向(むか)つ…

東歌(32)・・・巻第14-3565

訓読 >>> かの子ろと寝(ね)ずやなりなむはだすすき宇良野(うらの)の山に月(つく)片寄るも 要旨 >>> 今夜はあの子と共寝することなく終わりそうだ。はだすすきの繁る宇良野の山に月が傾いてきた。 鑑賞 >>> 「はだすすき」は穂を出した薄で、…

東歌(31)・・・巻第14-3424~3425

訓読 >>> 3424下(しも)つ毛野(けの)三毳(みかも)の山のこ楢(なら)のす目(ま)ぐはし児(こ)ろは誰(た)が笥(け)か持たむ 3425下(しも)つ毛野(けの)安蘇(あそ)の川原(かはら)よ石踏まず空(そら)ゆと来(き)ぬよ汝(な)が心 告(…

東歌(30)・・・巻第14-3574~3576

訓読 >>> 3574小里(をさと)なる花橘(はなたちばな)を引き攀(よ)ぢて折らむとすれどうら若(わか)みこそ 3575美夜自呂(みやじろ)のすかへに立てるかほが花な咲き出(い)でそね隠(こ)めて偲(しの)はむ 3576苗代(なはしろ)の小水葱(こなぎ…

東歌(29)・・・巻第14-3358~3360

訓読 >>> 3358さ寝(ぬ)らくは玉の緒(を)ばかり恋ふらくは富士の高嶺(たかね)の鳴沢(なるさは)のごと 3359駿河(するが)の海おし辺(へ)に生(お)ふる浜つづら汝(いまし)を頼み母に違(たが)ひぬ [一云 親に違ひぬ] 3360伊豆(いづ)の海に…

東歌(28)・・・巻第14-3353~3354

訓読 >>> 3353麁玉(あらたま)の伎倍(きへ)の林に汝(な)を立てて行きかつましじ寐(い)を先立(さきだ)たね 3354伎倍人(きへひと)の斑衾(まだらぶすま)に綿(わた)さはだ入りなましもの妹(いも)が小床(をどこ)に 要旨 >>> 〈3353〉麁…

東歌(27)・・・巻第14-3459

訓読 >>> 稲つけば皹(かか)る我(あ)が手を今夜(こよひ)もか殿(との)の若子(わくご)が取りて嘆かむ 要旨 >>> 稲をついて赤くひび割れた私の手を、今夜もまたお屋敷の若様がお取りになって、かわいそうにとお嘆きになるのでしょうか。 鑑賞 >…

東歌(26)・・・巻第14-3455

訓読 >>> 恋(こひ)しけば来ませ我が背子(せこ)垣(かき)つ柳(やぎ)末(うれ)摘(つ)み枯らし我(わ)れ立ち待たむ 要旨 >>> 私が恋しいと言うのなら、いらして下さい、あなた。垣根の柳の枝先を枯れてしまうほど摘みながら、立ち続けてお待ち…

東歌(25)・・・巻第14-3413

訓読 >>> 利根川(とねがは)の川瀬も知らず直(ただ)渡り波にあふのす逢へる君かも 要旨 >>> 利根川を渡る浅瀬の場所も分からないままむやみに渡り、だしぬけに波に遭ったように、思いがけずも逢っているあなたであるよ。 鑑賞 >>> 上野(かみつ…

東歌(24)・・・巻第14-3412

訓読 >>> 上(かみ)つ毛野(けの)久路保(くろほ)の嶺(ね)ろの葛葉(くずは)がた愛(かな)しけ子らにいや離(ざか)り来(く)も 要旨 >>> 久路保の嶺の葛葉の蔓(つる)が別れて伸びていくように、愛しい妻といよいよ遠ざかって行くことだ。 …

東歌(23)・・・巻第14-3411

訓読 >>> 多胡(たご)の嶺(ね)に寄(よ)せ綱(づな)延(は)へて寄すれどもあに来(く)やしづしその顔(かほ)よきに 要旨 >>> 多胡の嶺に綱をかけて引き寄せようとしても、ああ悔しい、びくともしない、その顔が美人ゆえに。 鑑賞 >>> 上野…

東歌(22)・・・巻第14-3436~3437

訓読 >>> 3436しらとほふ小新田山(をにひたやま)の守(も)る山のうら枯(が)れせなな常葉(とこは)にもがも 3437陸奥(みちのく)の安達太良(あだたら)真弓(まゆみ)はじき置きて反(せ)らしめきなば弦(つら)はかめかも 要旨 >>> 〈3436〉…

東歌(21)・・・巻第14-3386

訓読 >>> にほ鳥の葛飾(かづしか)早稲(わせ)を饗(にへ)すともその愛(かな)しきを外(と)に立てめやも 要旨 >>> 葛飾の早稲を神に捧げる新嘗祭の夜であっても、愛しいあの人を外に立たせておくことなどできない。 鑑賞 >>> 下総の国の歌。…

東歌(20)・・・巻第14-3439

訓読 >>> 鈴が音(ね)の早馬駅家(はゆまうまや)の堤井(つつみゐ)の水を賜(たま)へな妹(いも)が直手(ただて)よ 要旨 >>> 駅鈴(えきれい)の音が聞こえる早馬のいる駅家の、湧き井戸の水を下さい、娘さん、あなたの素手で直接に。 鑑賞 >>…

東歌(19)・・・巻第14-3496~3498

訓読 >>> 3496橘(たちばな)の古婆(こば)の放髪(はなり)が思ふなむ心うつくしいで我(あ)れは行かな 3497川上(かはかみ)の根白高萱(ねじろたかがや)あやにあやにさ寝(ね)さ寝てこそ言(こと)に出(で)にしか 3498海原(うなはら)の根(ね…

東歌(18)・・・巻第14-3368~3371

訓読 >>> 3368足柄(あしがり)の土肥(とひ)の河内(かふち)に出(い)づる湯の世(よ)にもたよらに子ろが言はなくに 3369足柄(あしがり)の麻万(まま)の小菅(こすげ)の菅枕(すがまくら)あぜかまかさむ子ろせ手枕(たまくら) 3370足柄(あし…

東歌(17)・・・巻第14-3572

訓読 >>> あど思(も)へか阿自久麻山(あじくまやま)の弓絃葉(ゆづるは)の含(ふふ)まる時に風吹かずかも 要旨 >>> いったい何をぐずぐずしているのか、阿自久麻山のユズリハがまだ蕾(つぼみ)の時だからといって、風が吹かないなんてことがある…

東歌(16)・・・巻第14-3430

訓読 >>> 志太(しだ)の浦を朝(あさ)漕(こ)ぐ船は由(よし)なしに漕ぐらめかもよ由(よし)こさるらめ 要旨 >>> 志太の浦を朝早く漕いで行く舟は、わけもなくあんなに急いで漕いでいるのだろうか。そんな筈はない、きっとわけがあって漕いでいる…

東歌(15)・・・巻第14-3410

訓読 >>> 伊香保(いかほ)ろの沿(そ)ひの榛原(はりはら)ねもころに奥(おく)をな兼(か)ねそまさかしよかば 要旨 >>> 伊香保の山裾の榛原、その榛(はん)の木の入り組んだ根のように、くよくよと二人の先のことまで心配しなくていい。今の今が…

東歌(14)・・・巻第14-3515~3516

訓読 >>> 3515我(あ)が面(おも)の忘れむしだは国 溢(はふ)り嶺(ね)に立つ雲を見つつ偲(しの)はせ 3516対馬(つしま)の嶺(ね)は下雲(したぐも)あらなふ可牟(かむ)の嶺(ね)にたなびく雲を見つつ偲(しの)はも 要旨 >>> 〈3515〉私の…

東歌(13)・・・巻第14-3403

訓読 >>> 我(あ)が恋はまさかも愛(かな)し草枕(くさまくら)多胡(たご)の入野(いりの)の奥も愛(かな)しも 要旨 >>> 私は今も恋しくて切ないけれど、多胡の入野の奥ほど、将来もずっと切ないことだろう。 鑑賞 >>> 上野(かみつけの)の…

東歌(12)・・・巻第14‐3529

訓読 >>> 等夜(とや)の野に兎(をさぎ)狙(ねら)はりをさをさも寝なへ児(こ)ゆゑに母にころはえ 要旨 >>> 等夜(とや)の野に兎を狙っているわけではないが、ろくすっぽ寝てもいないあの子なのに、母親にこっぴどく叱られてしまった。 鑑賞 >>…

東歌(10)・・・巻第14-3577

訓読 >>> 愛(かな)し妹(いも)をいづち行かめと山菅(やますげ)の背向(そがひ)に寝(ね)しく今し悔(くや)しも 要旨 >>> 愛しい妻が死んでしまうとは思わないで、山菅の葉のように背を向け合って寝たことが、今となっては悔やまれてならない。…

東歌(9)・・・巻第14-3537

訓読 >>> 柵越(くへご)しに麦(むぎ)食(は)む小馬(こうま)のはつはつに相見(あひみ)し児(こ)らしあやに愛(かな)しも (或本の歌に曰はく)馬柵(うませ)越し麦(むぎ)食)は)む駒(こま)のはつはつに新肌(にひはだ)触れし児(こ)ろし…

東歌(8)・・・巻第14-3388

訓読 >>> 筑波嶺(つくはね)の嶺(ね)ろに霞(かすみ)居(ゐ)過ぎかてに息づく君を率寝(ゐね)て遣(や)らさね 要旨 >>> 筑波嶺の嶺にかかった霞が動かないように門前を立ち去れず、ため息をついているあの人を、引っ張ってきて共寝してやりなさ…