巻第2
訓読 >>> 141磐代(いわしろ)の浜松が枝(え)を引き結びま幸(さき)くあらばまた還(かへ)り見む 142家にあれば笥(け)に盛る飯(いひ)を草枕(くさまくら)旅にしあれば椎(しひ)の葉に盛る 要旨 >>> 〈141〉自分はこのような身の上で磐代まで…
訓読 >>> 101玉葛(たまかづら)実ならぬ木にはちはやぶる神ぞつくといふならぬ木ごとに 102玉葛(たまかづら)花のみ咲きてならずあるは誰(た)が恋にあらめ我(あ)は恋ひ思(も)ふを 要旨 >>> 〈101〉玉葛のように実の成らない木には神が取り憑く…
訓読 >>> 85君が行き日(け)長くなり山たづね迎へ行かむ待ちにか待たむ 86かくばかり恋ひつつあらずは高山の磐根(いはね)し枕(ま)きて死なましものを 87ありつつも君をば待たむうちなびく我(わ)が黒髪に霜(しも)の置くまでに 88秋の田の穂(ほ)…
訓読 >>> 163神風(かむかぜ)の伊勢の国にもあらましをなにしか来(き)けむ君もあらなくに 164見まく欲(ほ)り我(あ)がする君もあらなくに何しか来(き)けむ馬(うま)疲(つか)るるに 要旨 >>> 〈163〉こんなことなら伊勢の国にいたほうがよか…
訓読 >>> 147天の原ふりさけ見れば大王(おほきみ)の御寿(みいのち)は長く天(あま)足らしたり148青旗(あをはた)の木幡(こはた)の上を通ふとは目には見れども直(ただ)に逢はぬかも149人はよし思ひ止(や)むとも玉蔓(たまかづら)影(かげ)に…
訓読 >>> 217秋山の したへる妹(いも) なよ竹の とをよる子らは いかさまに 思ひ居(を)れか たく繩(なは)の 長き命(いのち)を 露こそは 朝(あした)に置きて 夕(ゆうへ)には 消(き)ゆといへ 霧こそば 夕に立ちて 朝は 失(う)すといへ 梓弓…
訓読 >>> やすみしし 我(わ)が大君(おほきみ)の 夕(ゆふ)されば 見したまふらし 明け来れば 問ひたまふらし 神岳(かみをか)の 山の黄葉(もみち)を 今日(けふ)もかも 問ひたまはまし 明日(あす)もかも 見したまはまし その山を 振り放(さ)…
訓読 >>> 91妹(いも)が家も継(つ)ぎて見ましを大和なる大島の嶺(ね)に家もあらましを 92秋山の樹(こ)の下隠(したがく)り逝(ゆ)く水のわれこそ増さめ思ほすよりは 要旨 >>> 〈91〉逢えないのなら、せめてあなたの家をいつでも見ることがで…
訓読 >>> 230梓弓(あづさゆみ) 手に取り持ちて ますらをの さつ矢 手挟(たばさ)み 立ち向ふ 高円山(たかまとやま)に 春野(はるの)焼く 野火(のひ)と見るまで 燃ゆる火を 何かと問へば 玉鉾(たまほこ)の 道来る人の 泣く涙 こさめに降れば 白…
訓読 >>> 117丈夫(ますらを)や片恋ひせむと嘆けども醜(しこ)のますらをなほ恋ひにけり 118嘆きつつ大夫(ますらを)の恋ふれこそ我(わ)が髪結(かみゆ)ひの漬(ひ)ぢて濡(ぬ)れけれ 要旨 >>> 〈117〉丈夫(ますらお)たるもの、片思いなどす…
訓読 >>> 126遊士(みやびを)とわれは聞けるを屋戸(やど)貸さずわれを還(かへ)せりおその風流士(みやびを) 127遊士(みやびを)にわれはありけり屋戸(やど)貸さず還(かへ)ししわれそ風流士(みやびを)にはある 要旨 >>> 〈126〉みやびなお…
訓読 >>> 105わが背子を大和へ遣(や)るとさ夜深けて暁露(あかときつゆ)にわが立ち濡れし 106二人行けど行き過ぎ難き秋山をいかにか君がひとり越ゆらむ 要旨 >>> 〈105〉私の弟を大和へ帰さなければと、夜が更けて暁の霜が降りるまで、私は立ち尽く…
訓読 >>> 176天地(あめつち)とともに終へむと思ひつつ仕へまつりし心 違(たが)ひぬ 177朝日照る佐田(さだ)の岡辺(をかへ)に群れ居(ゐ)つつ我が泣く涙やむ時もなし 184東(ひむがし)のたぎの御門(みかど)に侍(さもら)へど昨日(きのふ)も…
訓読 >>> 古(ふ)りにし嫗(おみな)にしてやかくばかり恋に沈まむ手童(たわらは)のごと 要旨 >>> 使い古したお婆さんなのに、まあどうしたことでしょう、これほど恋に没頭するなんて。まるで幼子みたい。 鑑賞 >>> 石川郎女(いしかわのいらつ…
訓読 >>> 103わが里に大雪(おほゆき)降れり大原の古(ふ)りにし里に降らまくは後(のち) 104わが岡のおかみに言ひて降らしめし雪のくだけし其処(そこ)に散りけむ 要旨 >>> 〈103〉私の里には大雪が降った。あなたの住む大原の古ぼけた里に降るの…
訓読 >>> 吾(あれ)はもや安見児(やすみこ)得たり皆人(みなひと)の得がてにすとふ安見児得たり 要旨 >>> 私は今まさに、美しい安見児を娶(めと)った。世の人々が容易には得られない、美しい安見児を娶ったぞ! 鑑賞 >>> 藤原鎌足といえば、…
訓読 >>> 123たけばぬれたかねば長き妹(いも)が髪このころ見ぬに掻(か)き入れつらむか124人皆は今は長しとたけと言へど君が見し髪乱れたりとも 125橘(たちばな)の蔭(かげ)踏む道の八衢(やちまた)に物をぞ思ふ妹に逢はずして 要旨 >>> 〈123…
訓読 >>> 96み薦(こも)刈る信濃の真弓(まゆみ)わが引かば貴人(うまひと)さびていなと言はむかも97み薦刈る信濃の真弓引かずして強(し)ひざる行事(わざ)を知るとは言はなくに98梓弓(あづさゆみ)引かばまにまに依(よ)らめども後の心を知りか…