大和の国のこころ、万葉のこころ

不肖私がこよなく愛する『万葉集』の鑑賞blogです。

巻第3

苦しくも降り来る雨か・・・巻第3-265

訓読 >>> 苦しくも降り来る雨か三輪(みわ)の崎(さき)狭野(さの)の渡りに家もあらなくに 要旨 >>> 何と鬱陶しいことに雨が降ってきた。三輪の崎の狭野の渡し場に、雨宿りする家もないのに。 鑑賞 >>> 長忌寸意吉麻呂(ながのいみきおきまろ)…

秋さらば見つつ偲へと・・・巻第3-464~465

訓読 >>> 464秋さらば見つつ偲(しの)へと妹(いも)が植ゑしやどのなでしこ咲きにけるかも 465うつせみの世は常(つね)なしと知るものを秋風 寒(さむ)み偲(しの)ひつるかも 要旨 >>> 〈464〉秋になったらごらんになって私を思い出してください…

今よりは秋風寒く吹きなむを・・・巻第3-462~463

訓読 >>> 462今よりは秋風(あきかぜ)寒く吹きなむを如何(いかに)かひとり長き夜(よ)を寝(ね)む 463長き夜(よ)をひとりや寝(ね)むと君が言へば過ぎにし人の思ほゆらくに 要旨 >>> 〈462〉これから秋風が寒く吹く時節を迎えるのに、どのよう…

昔こそ難波田舎と言はれけめ・・・巻第3-312

訓読 >>> 昔こそ難波田舎(なにはゐなか)と言はれけめ今は都(みやこ)引き都(にやこ)びにけり 要旨 >>> 昔こそは、難波田舎と呼ばれていたであろう。しかし、今では都を引き移してすっかり都らしくなってきた。 鑑賞 >>> 神亀3年(726年)、藤…

妹が名は千代に流れむ・・・巻第3-228~229

訓読 >>> 228妹(いも)が名は千代(ちよ)に流れむ姫島(ひめしま)の小松(こまつ)が末(うれ)に蘿(こけ)生(む)すまでに 229難波潟(なにはがた)潮干(しほひ)なありそね沈みにし妹(いも)が姿を見まく苦しも 要旨 >>> 〈228〉その娘の名は…

橘をやどに植ゑ生ほし・・・巻第3-410~411

訓読 >>> 410橘(たちばな)をやどに植ゑ生(お)ほし立ちて居て後(のち)に悔ゆとも験(しるし)あらめやも 411我妹子(わぎもこ)がやどの橘(たちばな)いと近く植ゑてし故(ゆゑ)に成(な)らずはやまじ 要旨 >>> 〈410〉橘の木を庭に植え育てて…

春日野を背向に見つつ・・・巻第3-460~461

訓読 >>> 460栲角(たくづの)の 新羅(しらき)の国ゆ 人言(ひとごと)を よしと聞かして 問ひ放(さ)くる 親族兄弟(うがらはらがら) なき国に 渡り来まして 大君(おほきみ)の 敷きます国に うちひさす 都しみみに 里家(さといへ)は さはにあれ…

伊予の高嶺の射狭庭の・・・巻第3-322~323

訓読 >>> 322皇神祖(すめろき)の 神の命(みこと)の 敷きいます 国のことごと 湯はしも 多(さは)にあれども 島山の 宜(よろ)しき国と こごしき 伊予の高嶺(たかね)の 射狭庭(いさには)の 岡に立たして うち思(しの)ひ 辞思(ことしの)ひせ…

むささびは木ぬれ求むと・・・巻第3-267

訓読 >>> むささびは木(こ)ぬれ求むとあしひきの山の猟夫(さつを)にあひにけるかも 要旨 >>> むささびが、林間の梢を飛び渡っているうちに、猟師に見つかって獲られてしまった。 鑑賞 >>> 志貴皇子(しきのみこ)の御歌。むささびは高い所から…

その夜の梅を手忘れて・・・巻第3-392

訓読 >>> ぬばたまのその夜の梅を手忘(たわす)れて折らず来(き)にけり思ひしものを 要旨 >>> あの夜に見た梅を、うっかり忘れて手折らずに来てしまった。あの花がよいと、深く心に留めておいたのに。 鑑賞 >>> 宴に侍っていた女性に目をつけて…

わが盛また変若めやも・・・巻第3-331~334

訓読 >>> 331わが盛(さかり)また変若(をち)めやもほとほとに平城(なら)の京(みやこ)を見ずかなりけむ 332わが命(いのち)も常にあらぬか昔見し象(きさ)の小河(をがは)を行きて見むため 333浅茅原(あさぢばら)つばらつばらにもの思(も)へ…

筑波嶺を外のみ見つつありかねて・・・巻第3-382~383

訓読 >>> 382鶏(とり)が鳴く 東(あづま)の国に 高山(たかやま)は さはにあれども 二神(ふたがみ)の 貴(たふと)き山の 並(な)み立ちの 見(み)が欲(ほ)し山と 神代(かみよ)より 人の言ひ継ぎ 国見(くにみ)する 筑波(つくは)の山を 冬…

大君は神にしませば・・・巻第3-235

訓読 >>> 大君(おほきみ)は神にしませば天雲(あまくも)の雷(いかづち)の上に廬(いほ)りせるかも 要旨 >>> 天皇は神でいらっしゃるので、天雲にそそり立つ雷の上に仮の宮殿を造っていらっしゃる。 鑑賞 >>> 題詞に「天皇(すめらみこと)、…

娘子が僧を揶揄した時の歌・・・巻第3-327

訓読 >>> 海神(わたつみ)の沖に持ち行きて放(はな)つともうれむぞこれがよみがへりなむ 要旨 >>> 海の沖に持って行って放してやったとしても、どうして、これが生き返ることがありましょうや。 鑑賞 >>> ある娘子たちが、通観法師(伝未詳)に…

あをによし奈良の都は・・・巻第3-328~331

訓読 >>> 328あをによし奈良の都は咲く花のにほふがごとく今盛りなり 329やすみしし我が大君(おほきみ)の敷きませる国の中(うち)には都し思(おも)ほゆ 330藤波(ふぢなみ)の花は盛りになりにけり奈良の都を思ほすや君 331わが盛(さかり)また変若…

託馬野に生ふる紫草・・・巻第3-395

訓読 >>> 託馬野(つくまの)に生(お)ふる紫草(むらさき)衣(きぬ)に染(し)めいまだ着ずして色に出(い)でにけり 要旨 >>> 託馬野(つくまの)に生い茂る紫草で着物を染めて、未だに着ていないのに、もう紫の色が人目に立ってしまいました。 …

天の探女が岩船の・・・巻第3-292~295

訓読 >>> 292ひさかたの天(あま)の探女(さぐめ)が岩船(いはふね)の泊(は)てし高津(たかつ)はあせにけるかも 293潮干(しほひ)の御津(みつ)の海女(あまめ)のくぐつ持ち玉藻(たまも)刈るらむいざ行きて見む 294風をいたみ沖つ白波(しらな…

ちはやぶる神の社しなかりせば・・・巻第3-404~406

訓読 >>> 404ちはやぶる神の社(やしろ)しなかりせば春日(かすが)の野辺(のへ)に粟(あわ)蒔(ま)かましを 405春日野(かすがの)に粟(あわ)蒔(ま)けりせば鹿(しし)待ちに継(つ)ぎて行かましを社(やしろ)し怨(うら)めし 406我(わ)が…

富士の嶺を高み畏み・・・巻第3-319~321

訓読 >>> 319なまよみの 甲斐(かひ)の国 うち寄する 駿河(するが)の国と 此方此方(こちごち)の 国のみ中ゆ 出(い)で立てる 富士の高嶺(たかね)は 天雲(あまくも)も い行(ゆ)きはばかり 飛ぶ鳥も 飛びものぼらず 燃ゆる火を 雪もち消(け)…

持統天皇と志斐嫗の問答歌・・・巻第3-236~237

訓読 >>> 236否(いな)といへど強ふる志斐(しひ)のが強語(しひがたり)この頃(ころ)聞かずてわれ恋ひにけり 237否(いな)といへど語れ語れと詔(の)らせこそ志斐(しひ)いは奏(まを)せ強語(しひがたり)と詔(の)る 要旨 >>> 〈236〉もう…

名ぐはしき稲見の海の・・・巻第3-303~304

訓読 >>> 303名ぐはしき稲見(いなみ)の海の沖つ波 千重(ちへ)に隠りぬ大和島根(やまとしまね)は 304大君(おほきみ)の遠(とほ)の朝廷(みかど)とあり通(がよ)ふ島門(しまと)を見れば神代(かみよ)し思ほゆ 要旨 >>> 〈303〉名高い稲見…

もののふの八十氏河の・・・巻第3-264

訓読 >>> もののふの八十氏河(やそうじかは)の網代木(あじろき)に いさよふ波の行く方知らずも 要旨 >>> 宇治川の網代木に遮られてただよう水のように、人の行く末とは分からないものだ。 鑑賞 >>> 柿本人麻呂が近江国から大和へ上った時、宇治…

八雲さす出雲の子らが・・・巻第3-429~430

訓読 >>> 429山の際(ま)ゆ出雲(いづも)の子らは霧(きり)なれや吉野の山の嶺(みね)にたなびく 430八雲(やくも)さす出雲(いづも)の子らが黒髪は吉野の川の沖になづさふ 要旨 >>> 〈429〉山の間から湧き立つ雲のように溌剌としていた出雲の娘…

世間を何に譬へむ・・・巻第3-351

訓読 >>> 世間(よのなか)を何に譬(たと)へむ朝開(あさびら)き漕(こ)ぎ去(い)にし船の跡(あと)なきごとし 要旨 >>> 世の中を何に譬えたらよかろう。船が夜明けに漕ぎ去ったあとには何の跡形もなくなってしまう。人生もそんなものだろうか。…

大宮の内まで聞こゆ・・・巻第3-238

訓読 >>> 大宮(おほみや)の内(うち)まで聞こゆ網引(あびき)すと網子(あこ)ととのふる海人(あま)の呼び声 要旨 >>> 大君のおられる御殿の中まで聞こえてくる、網を引こうとして、網子たちを指揮する漁師の威勢のいい掛け声が。 鑑賞 >>> …

隼人の薩摩の瀬戸を・・・巻第3-248

訓読 >>> 隼人(はやひと)の薩摩(さつま)の瀬戸を雲居(くもゐ)なす遠くも我(わ)れは今日(けふ)見つるかも 要旨 >>> 隼人の住む薩摩の瀬戸よ、その瀬戸を、空の彼方の雲のように遙か遠くだが、私は今この目に見納めた。 鑑賞 >>> 長田王(…

我が屋戸に韓藍蒔き生ほし・・・巻第3-384

訓読 >>> 我(わ)が屋戸(やど)に韓藍(からあゐ)蒔(ま)き生(お)ほし枯(か)れぬれど懲(こ)りずてまたも蒔かむとぞ思ふ 要旨 >>> わが家の庭に、鶏頭花を種から育てたところ枯れてしまった。けれども懲りずにまた種を蒔こうと思う。 鑑賞 >…

蜻蛉羽の袖振る妹を・・・巻第3-376

訓読 >>> 蜻蛉羽(あきづは)の袖振る妹(いも)を玉くしげ奥に思ふを見たまへ我(あ)が君 要旨 >>> とんぼの羽のように薄く美しい袖をひるがえして舞うあの子を、私は秘蔵の思いでいとしく思っているのです、よくよく御覧になって下さい、我が君よ。…

大津皇子、涕を流して作りませる御歌・・・巻3-416

訓読 >>> ももづたふ磐余(いはれ)の池に鳴く鴨(かも)を今日(けふ)のみ見てや雲隠(くもがく)りなむ 要旨 >>> 磐余の池に鳴いている鴨を見るのも今日限りで、私は死ぬのだろうか。 鑑賞 >>> 大津皇子(おおつのみこ)は天武天皇の御子で、「…

今は罷らむ子泣くらむ・・・巻第3-337

訓読 >>> 憶良(おくら)らは今は罷(まか)らむ子泣くらむその彼の母も吾(わ)を待つらむぞ 要旨 >>> 私、憶良はもう失礼いたします。今ごろ家では子供が泣いているでしょう、その母親も私を待っていますから。 鑑賞 >>> 題詞には、山上憶良が「…