大和の国のこころ、万葉のこころ

不肖私がこよなく愛する『万葉集』の鑑賞blogです。

巻第4

我が恋は千引の石を・・・巻第4-743

訓読 >>> 我(あ)が恋は千引(ちびき)の石(いし)を七(なな)ばかり首に懸(か)けむも神のまにまに 要旨 >>> 私の恋は、千人がかりで引く巨岩を七つも首にかけているほど苦しく重い。それも神の思し召しとあれば耐えなければならない。 鑑賞 >>…

夜のほどろ我が出でて来れば・・・巻第4-754

訓読 >>> 夜(よ)のほどろ我(わ)が出(い)でて来れば我妹子(わぎもこ)が思へりしくし面影(おもかげ)に見ゆ 要旨 >>> 夜がほのぼのと明けるころ、別れて私が出てくるとき、名残惜しそうにしていたあなたの姿が面影に見えてなりません。 鑑賞 >…

常世にと我が行かなくに・・・巻第4-723~724

訓読 >>> 723常世(とこよ)にと 我(わ)が行かなくに 小金門(をかなと)に もの悲(がな)しらに 思へりし 我(あ)が子の刀自(とじ)を ぬばたまの 夜昼(よるひる)といはず 思ふにし 我(あ)が身は痩せ(や)せぬ 嘆くにし 袖(そで)さへ濡(ぬ…

忘れ草我が下紐に付けたれど・・・巻第4-727~728

訓読 >>> 727忘れ草 我(わ)が下紐(したひも)に付けたれど醜(しこ)の醜草(しこくさ)言(こと)にしありけり 728人もなき国もあらぬか我妹子(わぎもこ)とたづさはり行きて副(たぐ)ひて居(を)らむ 要旨 >>> 〈727〉苦しみを忘れるために、…

み空行く月の光にただ一目・・・巻第4-710

訓読 >>> み空行く月の光にただ一目(ひとめ)相(あひ)見し人の夢(いめ)にし見ゆる 要旨 >>> 月明かりの下でたったひと目見かけただけの人、そのお方の姿が夢に出てきます。 鑑賞 >>> 作者の安都扉娘子(あとのとびらのをとめ)は伝未詳ながら…

今更に妹に逢はめやと・・・巻第4-611~612

訓読 >>> 611今更(いまさら)に妹(いも)に逢はめやと思へかもここだわが胸いぶせくあるらむ 612なかなかに黙(もだ)もあらましを何すとか相(あひ)見そめけむ遂げざらまくに 要旨 >>> 〈611〉今はもう重ねてあなたに逢えないと思うからでしょうか…

近くあれば見ねどもあるを・・・巻第4-609~610

訓読 >>> 609心ゆも我(わ)は思はずきまたさらに我(わ)が故郷(ふるさと)に帰り来(こ)むとは 610近くあれば見ねどもあるをいや遠く君がいまさば有りかつましじ 要旨 >>> 〈609〉私は思いもよりませんでした、再び故郷に帰ってこようとは。 〈610…

餓鬼の後に額づくがごと・・・巻第4-608

訓読 >>> 相(あひ)思はぬ人を思ふは大寺(おほてら)の餓鬼(がき)の後(しりへ)に額(ぬか)づくがごと 要旨 >>> 互いに思い合わない人をこちらで思うのは、大寺の餓鬼の像を、それも後ろから拝むようなものです。 鑑賞 >>> 笠郎女が大伴家持…

寝よとの鐘は打つなれど・・・巻第4-607

訓読 >>> 皆人(みなひと)を寝よとの鐘(かね)は打つなれど君をし思へば寐(い)ねかてぬかも 要旨 >>> みなさん、寝る時間ですよと鐘は打たれるけれど、あなたのことを思うと、とても眠れません。 鑑賞 >>> 笠郎女が大伴家持に贈った歌。「皆人…

大伴旅人の帰京時に大宰府の官人たちが作った歌・・・巻第4-568~571

訓読 >>> 568み崎廻(さきみ)の荒磯(ありそ)に寄する五百重波(いほへなみ)立ちても居(ゐ)ても我(あ)が思へる君 569韓人(からひと)の衣(ころも)染(そ)むといふ紫(むらさき)の心に染(し)みて思ほゆるかも 570大和へに君が発(た)つ日の…

大伴家持と紀女郎の歌(4)・・・巻第4-777~781

訓読 >>> 777我妹子(わぎもこ)がやどの籬(まがき)を見に行かばけだし門(かど)より帰してむかも 778うつたへに籬(まがき)の姿(すがた)見まく欲(ほ)り行かむと言へや君を見にこ 779板葺(いたぶき)の黒木(くろき)の屋根は山近し明日(あす)…

大伴家持と紀女郎の歌(3)・・・巻第4-775~776

訓読 >>> 775鶉(うづら)鳴く古(ふ)りにし郷(さと)ゆ思へどもなにそも妹(いも)に逢ふよしもなき 776言出(ことで)しは誰(た)が言(こと)なるか小山田(をやまだ)の苗代水(なわしろみづ)の中淀(なかよど)にして 要旨 >>> 〈775〉古さび…

大伴家持と紀女郎の歌(2)・・・巻第4-769

訓読 >>> ひさかたの雨の降る日をただひとり山辺(やまへ)に居(を)ればいぶせかりけり 要旨 >>> 雨が降る中、あなたのいない山裾でひとり過ごしていると、何とも心が晴れません。 鑑賞 >>> 大伴家持が紀女郎に答えて贈った歌とありますが、紀女…

大伴家持と紀女郎の歌(1)・・・巻第4-762~764

訓読 >>> 762神(かむ)さぶと否(いな)にはあらずはたやはたかくして後(のち)に寂(さぶ)しけむかも 763玉の緒(を)を沫緒(あわを)に搓(よ)りて結(むす)べらばありて後(のち)にも逢はざらめやも 764百年(ももとせ)に老舌(おいした)出(…

剣太刀身に取り副ふと・・・巻第4-604~606

訓読 >>> 604剣(つるぎ)太刀(たち)身に取り副(そ)ふと夢(いめ)に見つ何の兆(さが)そも君に逢はむため 605天地(あめつち)の神の理(ことわり)なくはこそ我(あ)が思ふ君に逢はず死にせめ 606我(わ)れも思ふ人もな忘れおほなわに浦(うら)…

いつもいつも来ませわが背子・・・巻第4-490~491

訓読 >>> 490真野(まの)の浦の淀(よど)の継橋(つぎはし)心ゆも思へや妹(いも)が夢(いめ)にし見ゆる 491川の上(へ)のいつ藻(も)の花のいつもいつも来(き)ませわが背子(せこ)時じけめやも 要旨 >>> 〈490〉真野の浦の継橋のように、絶…

我が背子は相思はずとも・・・巻第4-613~617

訓読 >>> 613もの思(も)ふと人に見えじとなまじひに常(つね)に思へり在(あ)りぞかねつる 614相思(あひおも)はぬ人をやもとな白栲(しろたへ)の袖(そで)漬(ひ)つまでに音(ね)のみし泣くも 615我(わ)が背子(せこ)は相思(あふおも)はず…

思ふにし死にするものにあらませば・・・巻第4-603

訓読 >>> 思ふにし死にするものにあらませば千(ち)たびぞ我(わ)れは死に返(かへ)らまし 要旨 >>> 人が恋焦がれて死ぬというのでしたら、私は千度でも死んでまた生き返ることでしょう。 鑑賞 >>> 笠郎女(かさのいらつめ)が大伴家持に贈った…

大原のこの市柴の何時しかと・・・巻第4-513

訓読 >>> 大原のこの市柴(いちしば)の何時(いつ)しかと我(わ)が思(も)ふ妹(いも)に今夜(こよひ)逢へるかも 要旨 >>> 大原のこの柴の木のようにいつしか逢えると思っていた人に、今夜という今夜はとうとう逢えることができた。 鑑賞 >>>…

朝霧のおほに相見し人故に・・・巻第4-599~601

訓読 >>> 599朝霧(あさぎり)のおほに相(あひ)見し人(ひと)故(ゆゑ)に命(いのち)死ぬべく恋ひわたるかも 600伊勢の海の磯(いそ)もとどろに寄する波(なみ)畏(かしこ)き人に恋ひわたるかも 601心ゆも我(わ)は思はずき山川(やまかは)も隔…

遠妻のここにしあらねば・・・巻第4-534~535

訓読 >>> 534遠妻(とほづま)の ここにしあらねば 玉桙(たまほこ)の 道をた遠(どほ)み 思ふそら 安けなくに 嘆くそら 苦しきものを み空行く 雲にもがも 高飛ぶ 鳥にもがも 明日(あす)行きて 妹(いも)に言問(ことど)ひ 我(あ)がために 妹も…

世間の女にしあらば・・・巻第4-643~645

訓読 >>> 643世間(よのなか)の女(をみな)にしあらば我(わ)が渡る痛背(あなせ)の河を渡りかねめや 644今は吾(あ)は侘(わ)びそしにける息(いき)の緒(を)に思ひし君をゆるさく思へば 645白妙(しろたへ)の袖(そで)別るべき日を近み心にむ…

ゆめよ我が背子我が名告らすな・・・巻第4-590~592

訓読 >>> 590あらたまの年の経(へ)ぬれば今しはとゆめよ我(わ)が背子我(わ)が名(な)告(の)らすな 591我(わ)が思ひを人に知るれや玉櫛笥(たまくしげ)開(ひら)きあけつと夢(いめ)にし見ゆる 592闇(やみ)の夜(よ)に鳴くなる鶴(たづ)…

我が恋ひわたるこの月ごろを・・・巻第4-588~589

訓読 >>> 588白鳥(しらとり)の飛羽山(とばやま)松の待ちつつぞ我(あ)が恋ひわたるこの月ごろを 589衣手(ころもで)を打廻(うちみ)の里にある我(わ)れを知らにぞ人は待てど来(こ)ずける 要旨 >>> 〈588〉白鳥の飛ぶ飛羽山の松ではありませ…

何かここだく我が恋ひ渡る・・・巻第4-656~658

訓読 >>> 656我(わ)れのみぞ君には恋ふる我(わ)が背子(せこ)が恋ふといふことは言(こと)のなぐさぞ657思はじと言ひてしものをはねず色のうつろひやすき我(あ)が心かも658思へども験(しるし)もなしと知るものを何かここだく我(あ)が恋ひ渡る…

石橋の間近き君に・・・巻第4-596~598

訓読 >>> 596八百日(やほか)行く浜の真砂(まなご)も我(あ)が恋にあにまさらじか沖つ島守(しまもり)597うつせみの人目(ひとめ)を繁(しげ)み石橋(いしばし)の間近き君に恋ひわたるかも 598恋にもぞ人は死にする水無瀬川(みなせがは)下(し…

刈り薦の乱れて思ふ君が直香ぞ・・・巻第4-697~699

訓読 >>> 697我(わ)が聞(き)きに懸(か)けてな言ひそ刈(か)り薦(こも)の乱れて思ふ君が直香(ただか)ぞ698春日野(かすがの)に朝(あさ)居(ゐ)る雲のしくしくに我(あ)れは恋ひ増す月に日に異(け)に699一瀬(ひとせ)には千(ち)たび障…

石上降るとも雨につつまめや・・・巻第4-664

訓読 >>> 石上(いそのかみ)降るとも雨につつまめや妹(いも)に逢はむと言ひてしものを 要旨 >>> 石上の布留(ふる)ではないが、いくら降っても、雨に妨げられてなどいようか。妻にに逢おうと約束しているのだから。 鑑賞 >>> 大伴像見(おおと…

事しあらば火にも水にも・・・巻第4-505~506

訓読 >>> 505今さらに何をか思はむ打ち靡(なび)き心は君に縁(よ)りにしものを 506我(わ)が背子(せこ)は物な思ひこそ事しあらば火にも水にも我(わ)がなけなくに 要旨 >>> 〈505〉今さら何をくよくよと思いましょう、私の心はすっかり靡いてあ…

我が形見見つつ偲はせ・・・巻第4-587

訓読 >>> 我(わ)が形見(かたみ)見つつ偲(しの)はせあらたまの年の緒(を)長く我(あ)れも思はむ 要旨 >>> 私の思い出の品を見ながら、私を思ってください。私もずっと長くあなたを思い続けますから。 鑑賞 >>> 笠郎女が大伴家持に贈った歌…