大和の国のこころ、万葉のこころ

不肖私がこよなく愛する『万葉集』の鑑賞blogです。

巻第6

かがよふ玉を取らずはやまじ・・・巻第6-950~953

訓読 >>> 950大君(おほきみ)の境(さか)ひたまふと山守(やまもり)据(す)ゑ守(も)るといふ山に入(い)らずはやまじ 951見わたせば近きものから岩隠(いはがく)りかがよふ玉を取らずはやまじ 952韓衣(からころも)着(き)奈良(なら)の里(さ…

橘は実さへ花さへ・・・巻第6-1009

訓読 >>> 橘(たちばな)は実さへ花さへその葉さへ枝(え)に霜(しも)降れどいや常葉(とこは)の木 要旨 >>> 橘という木は、実も花もその葉さえも、冬、枝に霜が降っても枯れることのない常緑の樹である。 鑑賞 >>> 天平8年(736年)11月、葛城…

宴席の歌(6)・・・巻第6-1024~1027

訓読 >>> 1024長門(ながと)なる沖つ借島(かりしま)奥(おく)まへて我(あ)が思ふ君は千年(ちとせ)にもがも 1025奥(おく)まへて我(わ)れを思へる我(わ)が背子(せこ)は千年(ちとせ)五百年(いほとせ)ありこせぬかも 1026ももしきの大宮…

あぢさはふ妹が目離れて・・・巻第6-942~945

訓読 >>> 942あぢさはふ 妹が目(め)離(か)れて しきたへの 枕も巻かず 桜皮(かには)巻き 作れる舟に 真楫(まかぢ)貫(ぬ)き 我(わ)が榜(こ)ぎ来れば 淡路の 野島(のしま)も過ぎ 印南都麻(いなみつま) 辛荷(からに)の島の 島の際(ま)…

あり通ふ難波の宮は・・・巻第6-1062~1064

訓読 >>> 1062やすみしし 我(わ)が大君(おほきみ)の あり通(がよ)ふ 難波(なには)の宮は いさなとり 海(うみ)片付(かたづ)きて 玉(たま)拾(ひり)ふ 浜辺(はまへ)を近み 朝(あさ)羽振(はふ)る 波の音(おと)騒(さわ)き 夕なぎに …

荒墟となった恭仁京を悲しむ歌・・・巻第6-1059~1061

訓読 >>> 1059三香原(みかのはら) 久邇(くに)の都は 山高く 川の瀬清み 住み良しと 人は言へども あり良しと 我(わ)れは思へど 古(ふ)りにし 里にしあれば 国見れど 人も通はず 里見れば 家も荒れたり はしけやし かくありけるか 三諸(みもろ)…

聖武天皇の印南野行幸の折、笠金村が作った歌・・・巻第6-935~937

訓読 >>> 935名寸隅(なきすみ)の 舟瀬(ふなせ)ゆ見ゆる 淡路島 松帆(まつほ)の浦に 朝なぎに 玉藻(たまも)刈りつつ 夕なぎに 藻塩(もしほ)焼きつつ 海人娘子(あまをとめ) ありとは聞けど 見に行(ゆ)かむ よしのなければ ますらをの 心はな…

聖武天皇が難波の宮に行幸あったとき、笠金村が作った歌・・・巻第6-928~929

訓読 >>> 928おしてる 難波(なには)の国は 葦垣(あしかき)の 古(ふ)りにし里と 人皆(ひとみな)の 思ひやすみて つれもなく ありし間(あひだ)に 績麻(うみを)なす 長柄(ながら)の宮に 真木柱(まきばしら) 太高(ふとたか)敷(し)きて 食…

元正天皇の吉野行幸の折、笠金村が作った歌・・・巻第6-910~912

訓読 >>> 910神(かむ)からか見が欲しからむみ吉野の滝の河内(かふち)は見れど飽かぬかも 911み吉野の秋津(あきづ)の川の万代(よろづよ)に絶ゆることなくまたかへり見む 912泊瀬女(はつせめ)の造る木綿花(ゆふばな)み吉野の滝の水沫(みなわ)…

聖武天皇の吉野行幸の折、笠金村が作った歌・・・巻第6-920~922

訓読 >>> 920あしひきの み山もさやに 落ち激(たぎ)つ 吉野の川の 川の瀬の 清きを見れば 上辺(かみへ)には 千鳥しば鳴く 下辺(しもへ)には かはづ妻呼ぶ ももしきの 大宮人(おおみやひと)も をちこちに 繁(しじ)にしあれば 見るごとに あやに…

巌なす常盤にいませ・・・巻第6-988

訓読 >>> 春草(はるくさ)は後(のち)はうつろふ巌(いはほ)なす常盤(ときは)にいませ貴(たふと)き我(あ)が君 要旨 >>> 春草は、どんなに生い茂ってものちには枯れてしまいます。どうか巌のようにいつまでも末永く元気でいて下さい、貴い我が…

天にます月読壮士賄はせむ・・・巻第6-985~986

訓読 >>> 985天にます月読壮士(つくよみをとこ)賄(まひ)はせむ今夜(こよひ)の長さ五百夜(いほよ)継ぎこそ 986はしきやし間近(まちか)き里の君(きみ)来(こ)むとおほのびにかも月の照りたる 要旨 >>> 〈985〉天にいらっしゃる月読壮士よ、…

諸王・諸臣子等を散禁せしむる時の歌・・・巻第6-948~949

訓読 >>> 948ま葛(くず)延(は)ふ 春日(かすが)の山は うちなびく 春さり行くと 山峡(やまかひ)に 霞(かすみ)たなびき 高円(たかまと)に うぐひす鳴きぬ もののふの 八十伴(やそとも)の男(を)は 雁(かり)がねの 来継(きつ)ぐこのころ …

明日よりは下笑ましけむ・・・巻第6-938~941

訓読 >>> 938やすみしし 我が大君(おほきみ)の 神(かむ)ながら 高(たか)知らせる 印南野(いなみの)の 邑美(おふみ)の原の 荒たへの 藤井の浦に 鮪(しび)釣ると 海人船(あまぶね)騒(さわ)き 塩焼くと 人ぞ多(さは)にある 浦を吉(よ)み…

味織あやにともしく鳴る神の・・・巻第6-913~916

訓読 >>> 913味織(うまごり あやにともしく 鳴る神の 音(おと)のみ聞きし み吉野の 真木(まき)立つ山ゆ 見下ろせば 川の瀬ごとに 明け来れば 朝霧(あさぎり)立ち 夕されば かはづ鳴くなへ 紐(ひも)解かぬ 旅にしあれば 我(あ)のみして 清き川…

元正天皇の吉野行幸の折、笠金村が作った歌・・・巻第6-907~909

訓読 >>> 907滝の上(へ)の 御舟(みふね)の山に 瑞枝(みづえ)さし 繁(しじ)に生ひたる 栂(とが)の樹の いやつぎつぎに 万代(よろづよ)に かくし知らさむ み吉野の 蜻蛉(あきづ)の宮は 神柄(かむから)か 貴くあるらむ 国柄(くにから)か …

大夫の寿く豊御酒に・・・巻第6-989

訓読 >>> 焼太刀(やきたち)の稜(かど)打ち放ち大夫(ますらを)の寿(ほ)く豊御酒(とよみき)に我れ酔(え)ひにけり 要旨 >>> 焼いて鍛えた太刀のかどを鋭く打って、雄々しい男子が祈りをこめる立派な酒に、私は酔ってしまった。 鑑賞 >>> …

御民我れ生ける験あり・・・巻第6-996

訓読 >>> 御民(みたみ)我(わ)れ生ける験(しるし)あり天地(あめつち)の栄(さか)ゆる時にあへらく思へば 要旨 >>> 天皇の御民である私は、まことに生きがいを感じております。天も地も一体となって栄えているこの御代に生まれ合わせたことを思…

大伴旅人が遊行女婦、児島の歌に答えた歌・・・巻第6-967~968

訓読 >>> 967倭道(やまとぢ)の吉備(きび)の児島(こじま)を過ぎて行かば筑紫(つくし)の児島(こじま)思ほえむかも968大夫(ますらを)と思へる吾(われ)や水茎(みづくき)の水城(みづき)のうへに涕(なみだ)拭(のご)はむ 要旨 >>> 〈96…

遊行女婦の児島が大伴旅人に贈った歌・・・巻第6-965~966

訓読 >>> 965凡(おほ)ならばかもかも為(せ)むを恐(かしこ)みと振(ふ)り痛(た)き袖(そで)を忍びてあるか966倭道(やまとぢ)は雲隠(くもがく)りたり然(しか)れどもわが振(ふる)る袖(そで)を無礼(なめ)しと思ふな 要旨 >>> 〈965…

雲隠り行くへをなみと・・・巻第6-984

訓読 >>> 雲隠(くもがく)り行くへをなみと我(あ)が恋ふる月をや君が見まく欲(ほ)りする 要旨 >>> 雲に隠れて行方が分からないと、私が心待ちにしている月を、あなたも見たいとお思いでしょうか。 鑑賞 >>> 豊前国の娘子の月の歌。「娘子の字…

言問はぬ木すら妹と兄とあり・・・巻第6-1007

訓読 >>> 言問(ことと)はぬ木すら妹(いも)と兄(せ)とありといふをただ独(ひと)り子にあるが苦しさ 要旨 >>> ものを言わない木にさえも兄弟姉妹があるというのに、私はまったくの一人っ子であるのが悲しい。 鑑賞 >>> 市原王(いちはらのお…

紅に深く染みにし心かも・・・巻第6-1044~1046

訓読 >>> 1044紅(くれなゐ)に深く染(し)みにし心かも奈良の都に年の経(へ)ぬべき 1045世間(よのなか)を常(つね)なきものと今ぞ知る奈良の都のうつろふ見れば 1046岩綱(いはつな)のまた変若(を)ちかへりあをによし奈良の都をまたも見むかも …

久邇の新京を讃むる歌・・・巻第6-1050~1052

訓読 >>> 1050現(あき)つ神 我(わ)が大君(おほきみ)の 天(あめ)の下 八島(やしま)の(うち)に 国はしも さはにあれども 里はしも さはにあれども 山並(やまなみ)の 宜(よろ)しき国と 川なみの 立ち合ふ里と 山背(やましろ)の 鹿背山(か…

奈良の故郷を悲しびて作る歌・・・巻第6-1047~1049

訓読 >>> 1047やすみしし 我(わ)が大君(おほきみ)の 高敷(たかし)かす 大和の国は 皇祖(すめろき)の 神の御代(みよ)より 敷きませる 国にしあれば 生(あ)れまさむ 御子(みこ)の継(つ)ぎ継ぎ 天(あめ)の下 知らしまさむと 八百万(やほ…

若の浦に潮満ち来れば潟を無み・・・巻第6-917~919

訓読 >>> 917やすみしし わご大君(おほきみ)の 常営(とこみや)と 仕へまつれる 雑賀野(さひかの)ゆ 背向(そがひ)に見ゆる 沖つ島 清き渚(なぎさ)に 風吹けば 白波(しらなみ)騒(さわ)き 潮(しほ)干(ふ)れば 玉藻(たまも)刈りつつ 神代…

老人の変若つといふ水ぞ・・・巻第6-1034

訓読 >>> いにしへゆ人の言ひ来(け)る老人(おいひと)の変若(を)つといふ水ぞ名に負(お)ふ瀧(たき)の瀬(せ) 要旨 >>> これが古来言い伝えてきた、老人を若返らせるという水だ。いかにもその名にふさわしい滝の流れよ。 鑑賞 >>> 天平12…

千万の軍なりとも・・・巻第6-971~972

訓読 >>> 971白雲の 龍田(たつた)の山の 露霜(つゆしも)に 色づく時に 打ち越えて 旅行く君は 五百重山(いほへやま) い行きさくみ 賊(あた)守る 筑紫(つくし)に至り 山の極(そき) 野の極(そき)見よと 伴(とも)の部(べ)を 班(あか)ち…

わご大君の高知らす吉野の宮は・・・巻第6-923~925

訓読 >>> 923やすみしし わご大君(おほきみ)の 高知らす 吉野の宮は 畳(たたな)づく 青垣(あをかき)隠(ごも)り 川波の 清き河内(かふち)ぞ 春へは 花咲きををり 秋されば 霧(きり)立ち渡る その山の いやますますに この川の 絶ゆることなく …

高円山に迫めたれば・・・巻第6-1028

訓読 >>> ますらをの高円山(たかまとやま)に迫(せ)めたれば里(さと)に下り来(け)るむざさびぞこれ 要旨 >>> 勇士たちが高円山で追い詰めましたので、里に下りてきたムササビでございます、これは。 鑑賞 >>> 大伴坂上郎女の歌。題詞に次の…