大和の国のこころ、万葉のこころ

不肖私がこよなく愛する『万葉集』の鑑賞blogです。

巻第7

楽浪の連庫山に雲居れば・・・巻第7-1170

訓読 >>> 楽浪(ささなみ)の連庫山(なみくらやま)に雲(くも)居(ゐ)れば雨ぞ降るちふ帰り来(こ)我(わ)が背(せ) 要旨 >>> 楽浪の連庫山に雲がかかると雨が降るといいます。帰ってきてください、あなた。 鑑賞 >>> 「覊旅(旅情を詠む)…

ぬばたまの夜渡る月を留めむに・・・巻第7-1077

訓読 >>> ぬばたまの夜(よ)渡る月を留(とど)めむに西の山辺(やまへ)に関(せき)もあらぬかも 要旨 >>> 夜空を渡る美しい月を押しとどめるために、西の山辺に関所でもないものだろうか。 鑑賞 >>> 「月を詠む」歌。「ぬばたまの」は「夜」の…

をちこちの礒の中なる・・・巻第7-1300

訓読 >>> をちこちの礒(いそ)の中なる白玉(しらたま)を人に知らえず見むよしもがも 要旨 >>> あちこちの海辺の石の中にひそむ美しい玉(真珠)を、どうかして他人に知られず見ることができないだろうか。 鑑賞 >>> 『柿本人麻呂歌集』から「玉…

天にある日売菅原の・・・巻第7-1277

訓読 >>> 天(あめ)にある日売菅原(ひめすがはら)の草な刈りそね 蜷(みな)の腸(わた)か黒(ぐろ)き髪に芥(あくた)し付くも 要旨 >>> 天にある日に因む、この日賣菅原の草を刈らないでくれ。せっかくの美しい黒髪にゴミが付いてしまうではな…

我が紐を妹が手もちて・・・巻第7-1114~1115

訓読 >>> 1114我(わ)が紐(ひも)を妹(いも)が手もちて結八川(ゆふやがは)またかへり見む万代(よろづよ)までに 1115妹(いも)が紐(ひも)結八河内(ゆふやかふち)をいにしへのみな人(ひと)見きとここを誰(た)れ知る 要旨 >>> 〈1114〉…

この小川霧ぞ結べる・・・巻第7-1113

訓読 >>> この小川(をがは)霧(きり)ぞ結べるたぎちゆく走井(はしりゐ)の上に言挙(ことあ)げせねど 要旨 >>> この小川に白い霧が立ち込めている。たぎり落ちる湧き水のところで、言挙げなどしていないのに。 鑑賞 >>> 「河を詠む」歌。「走…

春日なる御笠の山に・・・巻第7-1295

訓読 >>> 春日(かすが)なる御笠(みかさ)の山に月の舟(ふね)出(い)づ遊士(みやびを)の飲む酒杯(さかづき)に影に見えつつ 要旨 >>> 春日の三笠の山に、船のような月が出た。風流な人たちが飲む酒杯の中に映り見えながら。 鑑賞 >>> 巻第7…

足柄の箱根飛び越え・・・巻第7-1175

訓読 >>> 足柄(あしがら)の箱根(はこね)飛び越え行く鶴(たづ)の羨(とも)しき見れば大和し思ほゆ 要旨 >>> 足柄の箱根の山を飛び越えて行く鶴の、その羨ましいのを見ると、大和が恋しく思われる。 鑑賞 >>> 「覊旅(旅情を詠む)」歌。「足…

かくしてやなほや老いなむ・・・巻第7-1349~1352

訓読 >>> 1349かくしてやなほや老いなむみ雪降る大荒木野(おひあらきの)の小竹(しの)にあらなくに 1350近江のや八橋(やばせ)の小竹(しの)を矢はがずてまことありえむや恋(こほ)しきものを 1351月草(つきくさ)に衣(ころも)は摺(す)らむ朝…

山の際に渡る秋沙の・・・巻第7-1122~1124

訓読 >>> 1122山の際(ま)に渡る秋沙(あきさ)の行きて居(ゐ)むその川の瀬に波立つなゆめ 1123佐保川(さほがは)の清き川原に鳴く千鳥(ちどり)かはづと二つ忘れかねつも 1124佐保川に騒(さは)ける千鳥さ夜(よ)更けて汝(な)が声聞けば寝(い…

ぬばたまの夜さり来れば・・・巻第7-1101

訓読 >>> ぬばたまの夜さり来れば巻向(まきむく)の川音(かはと)高しも嵐(あらし)かも疾(と)き 要旨 >>> 暗闇の夜がやってくると、巻向川の川音が高くなった。嵐が来ているのだろうか。 鑑賞 >>> 『柿本人麻呂歌集』から1首。「ぬばたまの」…

大海に島もあらなくに・・・巻第7-1089

訓読 >>> 大海(おほうみ)に島もあらなくに海原(うなばら)のたゆたふ波に立てる白雲(しらくも) 要旨 >>> 大海には島一つ見えないことよ、そして漂う波の上には白雲が立っている。 鑑賞 >>> 伊勢従駕の折の、作者未詳歌。「大海に島もあらなく…

春日山おして照らせるこの月は・・・巻第7-1074

訓読 >>> 春日山(かすがやま)おして照らせるこの月は妹(いも)が庭にも清(さや)けかりけり 要旨 >>> 春日山の一面に照り渡っているこの月は、私の恋人の庭にもさやかに照っていることだよ。 鑑賞 >>> 「月を詠む歌」、作者未詳。「春日山」は…

海原の道遠みかも・・・巻第7-1075

訓読 >>> 海原(うなはら)の道(みち)遠(とほ)みかも月読(つくよみ)の明(あかり)少なき夜(よ)は更けにつつ 要旨 >>> 海原を渡ってくる道が遠いせいか、月の光が少ししか届かない。夜はもう更けてきたというのに。 鑑賞 >>> 「月を詠む歌…

肩のまよひは誰れか取り見む・・・巻第7-1265

訓読 >>> 今年行く新防人(にひさきもり)が麻衣(あさごろも)肩のまよひは誰(た)れか取り見む 要旨 >>> 今年送られていく新しい防人の麻の衣の肩のほつれは、いったい誰が繕ってやるのだろうか。 鑑賞 >>> 「新防人」は、新しく徴発されて筑紫…

大海を候ふ港事しあらば・・・巻第7-1308~1310

訓読 >>> 1308大海(おほうみ)を候(さもら)ふ港(みなと)事(こと)しあらばいづへゆ君は我(わ)を率(ゐ)しのがむ 1309風吹きて海は荒(あ)るとも明日(あす)と言はば久しくあるべし君がまにまに 1310雲(くも)隠(がく)る小島(こしま)の神…

我れなしに潜きはなせそ・・・巻第7-1253~1254

訓読 >>> 1253楽浪(ささなみ)の志賀津(しがつ)の海人(あま)は我(あ)れなしに潜(かづ)きはなせそ波立たずとも 1254大船(おほふね)に楫(かぢ)しもあらなむ君なしに潜(かづ)きせめやも波立たずとも 要旨 >>> 〈1253〉楽浪の志賀津の海人…

こもりくの泊瀬の山に照る月は・・・巻第7-1270

訓読 >>> こもりくの泊瀬(はつせ)の山に照る月は満ち欠けしけり人の常(つね)なき 要旨 >>> あの泊瀬の山に照る月は、満ちたり欠けたりしている。人もまた不変ではない。 鑑賞 >>> 「こもりくの」は「泊瀬」の枕詞。「泊瀬の山」は奈良県桜井市…

鳴る神の音のみ聞きし巻向の・・・巻第7-1092~1094

訓読 >>> 1092鳴る神の音(おと)のみ聞きし巻向(まきむく)の桧原(ひはら)の山を今日(けふ)見つるかも1093三諸(みもろ)のその山なみに子らが手を巻向山(まきむくやま)は継ぎしよろしも1094我(わ)が衣(ころも)色取り染(そ)めむ味酒(うま…

背の山に直に向へる妹の山・・・巻第7-1193

訓読 >>> 背(せ)の山に直(ただ)に向(むか)へる妹(いも)の山(やま)事(こと)許せやも打橋(うちはし)渡す 要旨 >>> 背の山に向かい立つ妹の山は、背の山の求婚を承諾したのだろうか。隔てる川に打橋が渡してある。 鑑賞 >>> 「背の山」…

君がため手力疲れ・・・巻第7-1281

訓読 >>> 君がため手力(たぢから)疲れ織りたる衣(きぬ)ぞ 春さらばいかなる色に擢(す)りてば良けむ 要旨 >>> あなたのために腕も疲れて織った着物です、春になったらどんな色に染めたらよいでしょう。 鑑賞 >>> 旋頭歌(5・7・7・5・7・7)の形式…

見れば恐し見ねば悲しも・・・巻第7-1369

訓読 >>> 天雲(あまくも)に近く光りて鳴る神の見れば恐(かしこ)し見ねば悲しも 要旨 >>> 遙か遠い天雲の近くで光って鳴る雷は、見るからに恐ろしいけれど、見なければ見ないで悲しい。 鑑賞 >>> 「天雲」は空にある雲。「鳴る神」は「雷」のこ…

琴取れば嘆き先立つ・・・巻第7-1129

訓読 >>> 琴(こと)取れば嘆き先立つけだしくも琴の下樋(したひ)に妻や隠(こも)れる 要旨 >>> 琴を弾こうと手にすると、先ず嘆きが先に立つ。ひょっとして亡き妻が下樋の中にこもっているのであろうか。 鑑賞 >>> 題詞に「倭琴(やまとごと)…

馬休め君・・・巻第7-1289

訓読 >>> 垣越(かきご)しに犬呼び越(こ)して鳥猟(とがり)する君(きみ) 青山(あおやま)の茂(しげ)き山辺(やまへ)に馬(うま)休め君 要旨 >>> 垣根の外から犬を呼び寄せて鷹狩をする若君よ、青山の葉が茂る山のほとりで馬を休めなさい、…

膝に伏す玉の小琴の・・・巻第7-1328

訓読 >>> 膝(ひざ)に伏(ふ)す玉の小琴(をごと)の殊(こと)なくはいたくここだく我(あ)れ恋ひめやも 要旨 >>> 膝の上に載せて弾く大切な琴が、もし格別なものでなかったら、私はこんなにも激しく恋しい思いなどしないのに。 鑑賞 >>> 「日…

潮満たばいかにせむとか・・・巻第7-1216

訓読 >>> 潮(しほ)満(み)たばいかにせむとか海神(わたつみ)の神が手(て)渡る海人娘子(あまをとめ)ども 要旨 >>> 潮が満ちて来たらば、どうするつもりなのだろうか。海神の支配する恐ろしい場所を渡っている海人の娘たちは。 鑑賞 >>> 海…

向つ峰に立てる桃の木・・・巻第7-1356

訓読 >>> 向(むか)つ峰(を)に立てる桃(もも)の木ならむやと人ぞささやく汝(な)が心ゆめ 要旨 >>> 向こうの高所に立っている桃の木は、実などなるものかと人が噂している。尻込みなどしてはならないぞ。 鑑賞 >>> 作者未詳歌。「向つ峰」は…

紀の国の雑賀の浦に・・・巻第7-1194~1195

訓読 >>> 1194紀の国の雑賀(さひか)の浦に出(い)で見れば海人(あま)の燈火(ともしび)波の間(ま)ゆ見ゆ 1195麻衣(あさごろも)着ればなつかし紀の国の妹背(いもせ)の山に麻(あさ)蒔(ま)け我妹(わぎも) 要旨 >>> 〈1194〉紀伊の国の…

誰れか織りけむ経緯なしに・・・巻第7-1120

訓読 >>> み吉野の青根(あをね)が峰(みね)の蘿席(こけむしろ)誰(た)れか織(お)りけむ経緯(たてぬき)なしに 要旨 >>> 吉野の青根が岳の美しい蘿(こけ)のむしろは、いったい誰が織り上げたのだろう、縦糸と横糸もなしに。 鑑賞 >>> 作…

いにしへにありけむ人も・・・巻第7-1118~1119

訓読 >>> 1118いにしへにありけむ人も吾(わ)が如(ごと)か三輪(みわ)の檜原(ひはら)に挿頭(かざし)折(を)りけむ 1119行く川の過ぎにし人の手折(たを)らねばうらぶれ立てり三輪の桧原(ひはら)は 要旨 >>> 〈1118〉昔の人も今の私と同じ…