大和の国のこころ、万葉のこころ

不肖私がこよなく愛する『万葉集』の鑑賞blogです。

巻第7

見れば恐し見ねば悲しも・・・巻第7-1369

訓読 >>> 天雲(あまくも)に近く光りて鳴る神の見れば恐(かしこ)し見ねば悲しも 要旨 >>> 遙か遠い天雲の近くで光って鳴る雷は、見るからに恐ろしいけれど、見なければ見ないで悲しい。 鑑賞 >>> 「天雲」は空にある雲。「鳴る神」は「雷」のこ…

琴取れば嘆き先立つ・・・巻第7-1129

訓読 >>> 琴(こと)取れば嘆き先立つけだしくも琴の下樋(したひ)に妻や隠(こも)れる 要旨 >>> 琴を弾こうと手にすると、先ず嘆きが先に立つ。ひょっとして亡き妻が下樋の中にこもっているのであろうか。 鑑賞 >>> 題詞に「倭琴(やまとごと)…

馬休め君・・・巻第7-1289

訓読 >>> 垣越(かきご)しに犬呼び越(こ)して鳥猟(とがり)する君(きみ) 青山(あおやま)の茂(しげ)き山辺(やまへ)に馬(うま)休め君 要旨 >>> 垣根の外から犬を呼び寄せて鷹狩をする若君よ、青山の葉が茂る山のほとりで馬を休めなさい、…

膝に伏す玉の小琴の・・・巻第7-1328

訓読 >>> 膝(ひざ)に伏(ふ)す玉の小琴(をごと)の殊(こと)なくはいたくここだく我(あ)れ恋ひめやも 要旨 >>> 膝の上に載せて弾く大切な琴が、もし格別なものでなかったら、私はこんなにも激しく恋しい思いなどしないのに。 鑑賞 >>> 「日…

潮満たばいかにせむとか・・・巻第7-1216

訓読 >>> 潮(しほ)満(み)たばいかにせむとか海神(わたつみ)の神が手(て)渡る海人娘子(あまをとめ)ども 要旨 >>> 潮が満ちて来たらば、どうするつもりなのだろうか。海神の支配する恐ろしい場所を渡っている海人の娘たちは。 鑑賞 >>> 海…

向つ峰に立てる桃の木・・・巻第7-1356

訓読 >>> 向(むか)つ峰(を)に立てる桃(もも)の木ならむやと人ぞささやく汝(な)が心ゆめ 要旨 >>> 向こうの高所に立っている桃の木は、実などなるものかと人が噂している。尻込みなどしてはならないぞ。 鑑賞 >>> 作者未詳歌。「向つ峰」は…

紀の国の雑賀の浦に・・・巻第7-1194~1195

訓読 >>> 1194紀の国の雑賀(さひか)の浦に出(い)で見れば海人(あま)の燈火(ともしび)波の間(ま)ゆ見ゆ 1195麻衣(あさごろも)着ればなつかし紀の国の妹背(いもせ)の山に麻(あさ)蒔(ま)け我妹(わぎも) 要旨 >>> 〈1194〉紀伊の国の…

誰れか織りけむ経緯なしに・・・巻第7-1120

訓読 >>> み吉野の青根(あをね)が峰(みね)の蘿席(こけむしろ)誰(た)れか織(お)りけむ経緯(たてぬき)なしに 要旨 >>> 吉野の青根が岳の美しい蘿(こけ)のむしろは、いったい誰が織り上げたのだろう、縦糸と横糸もなしに。 鑑賞 >>> 作…

いにしへにありけむ人も・・・巻第7-1118~1119

訓読 >>> 1118いにしへにありけむ人も吾(わ)が如(ごと)か三輪(みわ)の檜原(ひはら)に挿頭(かざし)折(を)りけむ 1119行く川の過ぎにし人の手折(たを)らねばうらぶれ立てり三輪の桧原(ひはら)は 要旨 >>> 〈1118〉昔の人も今の私と同じ…

星の林に漕ぎ隠る・・・巻第7-1068

訓読 >>> 天(あめ)の海に雲の波立ち月の船(ふね)星の林に漕(こ)ぎ隠(かく)る見ゆ 要旨 >>> 天の海に雲の白波が立ち、その海を月の船が漕ぎ渡り、星の林に隠れていくのが見える。 鑑賞 >>> 巻7の雑歌の冒頭に収められている「天(あめ)を詠…

二上山も妹こそありけれ・・・巻第7-1098

訓読 >>> 紀路(きぢ)にこそ妹山(いもやま)ありといへ玉櫛笥(たまくしげ)二上山(ふたかみやま)も妹(いも)こそありけれ 要旨 >>> 紀州には妹山という名高い山がある、という人の噂だが、大和の二上山にだって男山と女山が並んでいて、女山はあ…

夏蔭の妻屋の下に・・・巻第7-1278

訓読 >>> 夏蔭(なつかげ)の妻屋(つまや)の下(した)に衣(きぬ)裁(た)つ我妹(わぎも) うら設(ま)けて我(あ)がため裁(た)たばやや大(おほ)に裁て 要旨 >>> 夏の日をさえぎる木陰の妻屋の下で衣を裁っているわが妻よ。私のために心づ…

幸ひのいかなる人か・・・巻第7-1411

訓読 >>> 幸(さきは)ひのいかなる人か黒髪(くろかみ)の白くなるまで妹(いも)が音(こゑ)を聞く 要旨 >>> 自分は恋しい妻をもう亡くしたが、白髪になるまで二人とも健やかで、妻の声を聞くことができる人は何と幸せな人だろう、うらやましいこと…

海は荒るとも採らずはやまじ・・・巻第7-1317

訓読 >>> 海(わた)の底(そこ)沈(しづ)く白玉(しらたま)風吹きて海は荒(あ)るとも採(と)らずはやまじ 要旨 >>> 海の底に沈んでいる真珠は、どんなに風が吹き海は荒れても、手に採らずにおくものか。 鑑賞 >>> 「玉に寄せる」歌で、玉(…

天霧らひ日方吹くらし・・・巻第7-1231

訓読 >>> 天霧(あまぎ)らひ日方(ひかた)吹くらし水茎(みづくき)の岡(をか)の水門(みなと)に波立ちわたる 要旨 >>> 空一面に霧がかかってきて、東風が吹いているのか、岡の港に波が押し寄せてきた。 鑑賞 >>> 「覊旅(きりょ)」の歌。巻…

君なくはなぞ身 装はむ・・・巻第9-1776~1777

訓読 >>> 1776絶等寸(たゆらき)の山の峰(をのへ)の上の桜花咲かむ春へは君し偲(しの)はむ 1777君なくはなぞ身 装(よそ)はむ櫛笥(くしげ)なる黄楊(つげ)の小櫛(をぐし)も取らむとも思はず 要旨 >>> 〈1766〉たゆらきの山の頂の桜が咲く春…

花よりは実になりてこそ・・・巻第7-1364~1365

訓読 >>> 1364見まく欲(ほ)り恋ひつつ待ちし秋萩(あきはぎ)は花のみ咲きて成(な)らずかもあらむ 1365我妹子(わぎもこ)が屋前(やど)の秋萩(あきはぎ)花よりは実になりてこそ恋ひまさりけれ 要旨 >>> 〈1364〉見たい見たいと待ち続けていた…

梯立の倉橋川の・・・巻第7-1283~1284

訓読 >>> 1283梯立(はしたて)の倉橋川(くらはしがは)の石(いし)の橋はも 男盛(をざか)りに我(わ)が渡りてし石の橋はも 1284梯立(はしたて)の倉橋川(くらはしがは)の川の静菅(しづすげ) 我(わ)が刈りて笠にも編(あ)まぬ川の静菅 要旨 …

娘子らが赤裳の裾の濡れて・・・巻第7-1274

訓読 >>> 住吉(すみのえ)の出見(いでみ)の浜の柴な刈りそね 娘子(おとめ)らが赤裳(あかも)の裾(すそ)の濡れて行(ゆ)かむ見む 要旨 >>> 住吉の出見の浜の柴は刈らないでくれ。乙女らが赤い裳裾を濡らしたまま行くのをそっと見たいと思うか…

妻といふべしや・・・巻第7-1257

訓読 >>> 道の辺(へ)の草深百合(くさぶかゆり)の花笑(はなゑ)みに笑みしがからに妻と言ふべしや 要旨 >>> 道のほとりの繁みに咲く百合の花のように、ちょっと微笑みかけたからといって、妻とは決めてかからないでください。 鑑賞 >>> ちょっ…

命をし幸くよけむと・・・巻第7-1142

訓読 >>> 命(いのち)をし幸(さき)くよけむと石走(いはばし)る垂水(たるみ)の水をむすびて飲みつ 要旨 >>> 我が命が長く幸福であれと願い、激しくを流れる滝の水を両手にすくって飲んだよ。 鑑賞 >>> 「石走る」は「垂水」の枕詞。「垂水」…

弓月が嶽に雲立ち渡る・・・巻第7-1087~1088

訓読 >>> 1087穴師川(あなしがは)川波立ちぬ巻向(まきむく)の弓月(ゆつき)が岳に雲居(くもゐ)立てるらし 1088あしひきの山川の瀬の響(なる)なへに弓月(ゆつき)が嶽(たけ)に雲立ち渡る 要旨 >>> 〈1087〉穴師川に川波が立っている。巻向…

雨はな降りそ・・・巻第7-1091

訓読 >>> 通るべく雨はな降りそ我妹子(わぎもこ)が形見の衣(ころも)我(あ)れ下(した)に着(け)り 要旨 >>> 下着まで通るほど雨よ降らないでくれ。愛しい彼女の形見の衣を下に着ているのだから。 鑑賞 >>> 「雨を詠む」歌です。彼女の衣を…

しまった、とんだ女だった!・・・巻第7-1264

訓読 >>> 西の市(いち)にただ独り出でて目並(めなら)べず買ひてし絹の商(あき)じこりかも 要旨 >>> 西の市にたった一人で出かけて、見比べもせずに自分だけで見て買ってしまった絹は、買い損ないの大誤算だったよ。 鑑賞 >>> 「商じこり」は…

鞆の浦・・・巻第7-1182~1183

訓読 >>> 1182海人(あま)小舟(をぶね)帆(ほ)かも張れると見るまでに鞆(とも)の浦廻(うらみ)に浪立てり見ゆ 1183ま幸(さき)くてまた還(かへ)り見む丈夫(ますらを)の手に巻き持たる鞆(とも)の浦廻(うらみ)を 要旨 >>> 〈1182〉漁師…