笠郎女の歌
訓読 >>> 609心ゆも我(わ)は思はずきまたさらに我(わ)が故郷(ふるさと)に帰り来(こ)むとは 610近くあれば見ねどもあるをいや遠く君がいまさば有りかつましじ 要旨 >>> 〈609〉私は思いもよりませんでした、再び故郷に帰ってこようとは。 〈610…
訓読 >>> 1451水鳥(みづどり)の鴨(かも)の羽色(はいろ)の春山(はるやま)のおほつかなくも思ほゆるかも 1616朝ごとに我(わ)が見る宿(やど)のなでしこの花にも君はありこせぬかも 要旨 >>> 〈1451〉水鳥の鴨の羽色のような春の山が、ぼんや…
訓読 >>> 相(あひ)思はぬ人を思ふは大寺(おほてら)の餓鬼(がき)の後(しりへ)に額(ぬか)づくがごと 要旨 >>> 互いに思い合わない人をこちらで思うのは、大寺の餓鬼の像を、それも後ろから拝むようなものです。 鑑賞 >>> 笠郎女が大伴家持…
訓読 >>> 皆人(みなひと)を寝よとの鐘(かね)は打つなれど君をし思へば寐(い)ねかてぬかも 要旨 >>> みなさん、寝る時間ですよと鐘は打たれるけれど、あなたのことを思うと、とても眠れません。 鑑賞 >>> 笠郎女が大伴家持に贈った歌。「皆人…
訓読 >>> 604剣(つるぎ)太刀(たち)身に取り副(そ)ふと夢(いめ)に見つ何の兆(さが)そも君に逢はむため 605天地(あめつち)の神の理(ことわり)なくはこそ我(あ)が思ふ君に逢はず死にせめ 606我(わ)れも思ふ人もな忘れおほなわに浦(うら)…
訓読 >>> 思ふにし死にするものにあらませば千(ち)たびぞ我(わ)れは死に返(かへ)らまし 要旨 >>> 人が恋焦がれて死ぬというのでしたら、私は千度でも死んでまた生き返ることでしょう。 鑑賞 >>> 笠郎女(かさのいらつめ)が大伴家持に贈った…
訓読 >>> 599朝霧(あさぎり)のおほに相(あひ)見し人(ひと)故(ゆゑ)に命(いのち)死ぬべく恋ひわたるかも 600伊勢の海の磯(いそ)もとどろに寄する波(なみ)畏(かしこ)き人に恋ひわたるかも 601心ゆも我(わ)は思はずき山川(やまかは)も隔…
訓読 >>> 590あらたまの年の経(へ)ぬれば今しはとゆめよ我(わ)が背子我(わ)が名(な)告(の)らすな 591我(わ)が思ひを人に知るれや玉櫛笥(たまくしげ)開(ひら)きあけつと夢(いめ)にし見ゆる 592闇(やみ)の夜(よ)に鳴くなる鶴(たづ)…
訓読 >>> 588白鳥(しらとり)の飛羽山(とばやま)松の待ちつつぞ我(あ)が恋ひわたるこの月ごろを 589衣手(ころもで)を打廻(うちみ)の里にある我(わ)れを知らにぞ人は待てど来(こ)ずける 要旨 >>> 〈588〉白鳥の飛ぶ飛羽山の松ではありませ…
訓読 >>> 596八百日(やほか)行く浜の真砂(まなご)も我(あ)が恋にあにまさらじか沖つ島守(しまもり)597うつせみの人目(ひとめ)を繁(しげ)み石橋(いしばし)の間近き君に恋ひわたるかも 598恋にもぞ人は死にする水無瀬川(みなせがは)下(し…
訓読 >>> 我(わ)が形見(かたみ)見つつ偲(しの)はせあらたまの年の緒(を)長く我(あ)れも思はむ 要旨 >>> 私の思い出の品を見ながら、私を思ってください。私もずっと長くあなたを思い続けますから。 鑑賞 >>> 笠郎女が大伴家持に贈った歌…
訓読 >>> 593君に恋ひ甚(いた)も術(すべ)なみ奈良山(ならやま)の小松が下に立ち嘆くかも 594我が屋戸(やど)の夕影草(ゆふかげくさ)の白露の消(け)ぬがにもとな思ほゆるかも 595我が命の全(また)けむ限り忘れめやいや日に異(け)には思ひ増…
訓読 >>> 夕されば物思(ものも)ひ益(ま)さる見し人の言問(ことと)ふ姿(すがた)面影(おもかげ)にして 要旨 >>> 夕方になると物思いがまさってきます。お逢いしたあなたが話しかけてくださった姿が面影となって現れてくるので。 鑑賞 >>> …
訓読 >>> 託馬野(つくまの)に生(お)ふる紫草(むらさき)衣(きぬ)に染(し)めいまだ着ずして色に出(い)でにけり 要旨 >>> 託馬野(つくまの)に生い茂る紫草で着物を染めて、未だに着ていないのに、もう紫の色が人目に立ってしまいました。 …
訓読 >>> 陸奥(みちのく)の真野(まの)の草原(かやはら)遠けども面影(おもかげ)にして見ゆといふものを 要旨 >>> 陸奥(みちのく)の真野の草原は、遠いけれど面影としてはっきり見えるというのに、近くにいるはずのあなたはどうして見えてくれ…