大和の国のこころ、万葉のこころ

不肖私がこよなく愛する『万葉集』の鑑賞blogです。

遣新羅使人の歌(14)・・・巻第15-3595~3599

訓読 >>> 3652志賀(しか)の海人(あま)の一日(ひとひ)もおちず焼く塩のからき恋をも我(あ)れはするかも 3653志賀の浦に漁(いざ)りする海人(あま)家人(いへびと)の待ち恋ふらむに明かし釣(つ)る魚(うを) 3654可之布江(かしふえ)に鶴(…

柿本人麻呂、泊瀬部皇女と忍坂部皇子に献る歌・・・巻第2-194~195

訓読 >>> 194飛ぶ鳥の 明日香(あすか)の川の 上(かみ)つ瀬に 生(お)ふる玉藻(たまも)は 下(しも)つ瀬に 流れ触(ふ)らばふ 玉藻なす か寄りかく寄り 靡(なび)かひし 夫(つま)の命(みこと)の たたなづく 柔肌(にきはだ)すらを 剣大刀(…

もののふの石瀬の社の・・・巻第8-1470

訓読 >>> もののふの石瀬(いはせ)の社(もり)の霍公鳥(ほととぎす)今も鳴かぬか山の常蔭(とかげ)に 要旨 >>> 石瀬の社にいるホトトギスが、今の今鳴いた。この山の陰で。 鑑賞 >>> 刀理宣令(とりのせんりょう)の歌。刀理宣令は渡来系の人…

若草の新手枕をまきそめて・・・巻第11-2542

訓読 >>> 若草の新手枕(にひたまくら)をまきそめて夜(よ)をや隔てむ憎くあらなくに 要旨 >>> 新妻の手枕をまき始めて、これから幾夜も逢わずにいられようか、可愛くて仕方ないのに。 鑑賞 >>> 「正述心緒(ありのままに思いを述べた歌)」。「…

夜のほどろ我が出でて来れば・・・巻第4-754

訓読 >>> 夜(よ)のほどろ我(わ)が出(い)でて来れば我妹子(わぎもこ)が思へりしくし面影(おもかげ)に見ゆ 要旨 >>> 夜がほのぼのと明けるころ、別れて私が出てくるとき、名残惜しそうにしていたあなたの姿が面影に見えてなりません。 鑑賞 >…

幸くあらばまたかへり見む・・・巻第13-3240~3241

訓読 >>> 3240大君(おほきみ)の 命(みこと)畏(かしこ)み 見れど飽かぬ 奈良山越えて 真木(まき)積む 泉(いずみ)の川の 早き瀬を 棹(さを)さし渡り ちはやぶる 宇治(うぢ)の渡りの 激(たき)つ瀬を 見つつ渡りて 近江道(あふみぢ)の 逢坂…

入唐使に贈る歌・・・巻第19-4245~4246

訓読 >>> 4245そらみつ 大和(やまと)の国 あをによし 奈良の都ゆ おしてる 難波(なには)に下(くだ)り 住吉(すみのえ)の 御津(みつ)に船乗(ふなの)り 直(ただ)渡り 日の入る国に 任(ま)けらゆる 我(わ)が背(せ)の君を かけまくの ゆゆ…

射ゆ鹿を認ぐ川辺の・・・巻第16-3874

訓読 >>> 射(い)ゆ鹿(しし)を認(つな)ぐ川辺(かはへ)のにこ草(ぐさ)の身の若(わか)かへにさ寝(ね)し子らはも 要旨 >>> 射られた手負い鹿の跡を追っていくと、川辺ににこ草が生えていた。そのにこ草のように若かった日に、あの子と寝たの…

うち靡く春来るらし・・・巻第8-1422

訓読 >>> うち靡(なび)く春(はる)来(きた)るらし山の際(ま)の遠き木末(こぬれ)の咲きゆく見れば 要旨 >>> どうやら春がやってきたらしい。遠い山際の木々の梢に次々と花が咲いていくのを見みると。 鑑賞 >>> 尾張連(おわりのむらじ)の…

春山の咲きのをゐりに・・・巻第8-1421

訓読 >>> 春山の咲きのをゐりに春菜(はるな)摘(つ)む妹(いも)が白紐(しらひも)見らくしよしも 要旨 >>> 春の山の花が咲き乱れているあたりで菜を摘んでいる子、その子のくっきりした白い紐を見るのはいいものだ。 鑑賞 >>> 尾張連(おわり…

足柄の箱根飛び越え・・・巻第7-1175

訓読 >>> 足柄(あしがら)の箱根(はこね)飛び越え行く鶴(たづ)の羨(とも)しき見れば大和し思ほゆ 要旨 >>> 足柄の箱根の山を飛び越えて行く鶴の、その羨ましいのを見ると、大和が恋しく思われる。 鑑賞 >>> 「覊旅(旅情を詠む)」歌。「足…

天の原振り放け見れば・・・巻第3-289~290

訓読 >>> 289天(あま)の原(はら)振(ふ)り放(さ)け見れば白真弓(しらまゆみ)張りて懸(か)けたり夜道(よみち)はよけむ 290倉橋(くらはし)の山を高みか夜隠(よごもり)に出で来(く)る月の光(ひかり)乏(とも)しき 要旨 >>> 〈289〉…

春柳葛城山に立つ雲の・・・巻第11-2453

訓読 >>> 春柳(はるやなぎ)葛城山(かづらきやま)に立つ雲の立ちても居(ゐ)ても妹(いも)をしぞ思ふ 要旨 >>> 春柳をかずらにする葛城山に湧き立つ雲のように、立っても座っても妻のことが思われてならない。 鑑賞 >>> 『柿本人麻呂歌集』か…

はしきやし栄えし君のいましせば・・・巻第3-454~458

訓読 >>> 454はしきやし栄(さか)えし君のいましせば昨日(きのう)も今日(きょう)も我(わ)を召さましを 455かくのみにありけるものを萩(はぎ)の花咲きてありやと問ひし君はも 456君に恋ひいたもすべなみ蘆鶴(あしたづ)の音(ね)のみし泣かゆ朝…

桜花咲きかも散ると見るまでに・・・巻第12-3129

訓読 >>> 桜花(さくらばな)咲きかも散ると見るまでに誰(た)れかも此所(ここ)に見えて散り行く 要旨 >>> まるで桜の花が咲いてすぐに散っていくように、誰も彼も、現れたかと思うとすぐまた散り散りになっていく。 鑑賞 >>> 『柿本人麻呂歌集…

山部赤人が真間の娘子の墓に立ち寄ったときに作った歌・・・巻第3-431~433

訓読 >>> 431古(いにしえ)に ありけむ人の 倭文機(しつはた)の 帯(おび)解(と)き替へて 伏屋(ふせや)立て 妻問(つまど)ひしけむ 葛飾(かつしか)の 真間(まま)の手児名(てごな)が 奥(おく)つ城(き)を こことは聞けど 真木(まき)の…

一本のなでしこ植ゑしその心・・・巻第18-4070~4072

訓読 >>> 4070一本(ひともと)のなでしこ植ゑしその心(こころ)誰(た)れに見せむと思ひそめけむ 4071しなざかる越(こし)の君らとかくしこそ柳(やなぎ)かづらき楽しく遊ばめ 4072ぬばたまの夜(よ)渡る月を幾夜(いくよ)経(ふ)と数(よ)みつ…

防人の歌(24)・・・巻第20-4349

訓読 >>> 百隈(ももくま)の道は来(き)にしをまた更(さら)に八十島(やそしま)過ぎて別れか行(ゆ)かむ 要旨 >>> 多くの曲がりくねった道をここまではるばる来たのに、さらにまた多くの島をめぐって漕いで別れて行かねばならないのか。 鑑賞 >…

いにしへの古き堤は年深み・・・巻第3-378

訓読 >>> いにしへの古き堤(つつみ)は年深み池の渚(なぎさ)に水草(みくさ)生(お)ひにけり 要旨 >>> 昔栄えた邸の庭の古い堤は、長い年月を重ね、池のみぎわには水草が生い繁っている。 鑑賞 >>> 題詞に「故(すぎにし)太政大臣藤原家の山…

御食向ふ南淵山の・・・巻第9-1709

訓読 >>> 御食(みけ)向(むか)ふ南淵山(みなぶちやま)の巌(いはほ)には降りしはだれか消え残りたる 要旨 >>> 南淵山の山肌の巌には、はらはらと降った淡雪がまだ消えずに残っている。 鑑賞 >>> 『柿本人麻呂歌集』から、「弓削皇子に献上し…

世の常に聞けば苦しき呼子鳥・・・巻第8-1447

訓読 >>> 世の常(つね)に聞けば苦しき呼子鳥(よぶこどり)声なつかしき時にはなりぬ 要旨 >>> ふだんは切なく苦しく聞こえる呼子鳥の、その鳴き声もなつかしく聞かれる春になってきた。 鑑賞 >>> 大伴坂上郎女の歌。「呼子鳥」は、カッコウとさ…

我が背子はいづく行くらむ・・・巻第1-43~44

訓読 >>> 43我(わ)が背子(せこ)はいづく行くらむ沖つ藻(も)の名張(なばり)の山を今日(けふ)か越ゆらむ 44我妹子(わぎもこ)をいざ見(み)の山を高みかも大和(やまと)の見えぬ国遠みかも 要旨 >>> 〈43〉今ごろ夫はどのあたりを旅してい…

朝床に聞けば遥けし・・・巻第19-4150

訓読 >>> 朝床(あさとこ)に聞けば遥(はる)けし射水川(いみづがは)朝漕ぎしつつ唄(うた)ふ舟人 要旨 >>> うつらうつらとする朝床の中で耳を澄ますと、遙かな射水川を、朝漕ぎしながら唄う舟人の声が聞こえてくる。 鑑賞 >>> 大伴家持が越中…

防人の歌(23)・・・巻第20-4369

訓読 >>> 筑波嶺(つくはね)のさ百合(ゆる)の花の夜床(ゆとこ)にも愛(かな)しけ妹(いも)ぞ昼も愛(かな)しけ 要旨 >>> 筑波の嶺に咲くさ百合の花ではないが、夜床(ゆとこ)で可愛くてならない彼女は、昼間でも可愛くてならない。 鑑賞 >>…

人魂のさ青なる君が・・・巻第16-3887~3889

訓読 >>> 3887天(あめ)にあるやささらの小野(をの)に茅草(ちがや)刈り草(かや)刈りばかに鶉(うづら)を立つも3888沖つ国うしはく君の塗(ぬ)り屋形(やかた)丹塗(にぬ)りの屋形(やかた)神の門(と)渡る3889人魂(ひとだま)のさ青(を)…

池神の力士舞かも・・・巻第16-3831

訓読 >>> 池神(いけがみ)の力士舞(りきしまひ)かも白鷺(しらさぎ)の桙(ほこ)啄(く)ひ持ちて飛び渡(わた)るらむ 要旨 >>> 池の神が演じる力士舞なのだろうか。白鷺が桙を持つように枝をくわえて飛んでいくよ。 鑑賞 >>> 長忌寸意吉麻呂…

かくしてやなほや老いなむ・・・巻第7-1349~1352

訓読 >>> 1349かくしてやなほや老いなむみ雪降る大荒木野(おひあらきの)の小竹(しの)にあらなくに 1350近江のや八橋(やばせ)の小竹(しの)を矢はがずてまことありえむや恋(こほ)しきものを 1351月草(つきくさ)に衣(ころも)は摺(す)らむ朝…

吾が齢し衰へぬれば・・・巻第12-2952

訓読 >>> 吾が齢(よはひ)し衰(おとろ)へぬれば白細布(しろたへ)の袖のなれにし君をしぞ思ふ 要旨 >>> おれも年を取って体も衰えてしまったが、今しげしげと通わなくても、長年馴れ親しんだお前のことが思い出されてならない。 鑑賞 >>> 作者…

石麻呂に我れ物申す・・・巻第16-3853~3854

訓読 >>> 3853石麻呂(いしまろ)に我(わ)れ物申す夏痩(なつや)せによしといふものぞ鰻(むなぎ)捕(と)り食(め)せ 3854痩(や)す痩すも生けらばあらむをはたやはた鰻(むなぎ)を捕ると川に流るな 要旨 >>> 〈3853〉石麻呂さんにあえて物申…

天雲のそきへの極み・・・巻第19-4247

訓読 >>> 天雲(あまくも)のそきへの極(きは)み我(あ)が思へる君に別れむ日近くなりぬ 要旨 >>> 天雲の果てまでも限りなく思っている母上に、お別れしなければならない日が近くなりました。 鑑賞 >>> 阿倍朝臣老人(あべのあそみおゆひと:伝…