1664番~1811番
- 夕されば小倉の山に伏す鹿の今夜は鳴かず寝ねにけらしも
- 妹がため我れ玉拾ふ沖辺なる玉寄せ持ち来沖つ白波
- 朝霧に濡れにし衣干さずしてひとりか君が山路越ゆらむ
- 妹がため我れ玉求む沖辺なる白玉寄せ来沖つ白波
- 白崎は幸くあり待て大船に真梶しじ貫きまたかへり見む
- 南部の浦潮な満ちそね鹿島なる釣りする海人を見て帰り来む
- 朝開き漕ぎ出て我れは由良の崎釣りする海人を見て帰り来む
- 由良の崎潮干にけらし白神の磯の浦廻をあへて漕ぐなり
- 黒牛潟潮干の浦を紅の玉裳裾ひき行くは誰が妻
- 風莫の浜の白波いたづらにここに寄せ来る見る人なしに
- 我が背子が使来むかと出立のこの松原を今日か過ぎなむ
- 藤白のみ坂を越ゆと白栲のわが衣手は濡れにけるかも
- 背の山に黄葉常敷く神岡の山の黄葉は今日か散るらむ
- 大和には聞こえも行くか大我野の竹葉刈り敷き廬りせりとは
- 紀の国の昔弓雄の鳴り矢もち鹿取り靡べし坂の上にぞある
- 紀の国にやまず通はむ妻の杜妻寄しこせに妻といひながら
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- あぶり干す人もあれやも濡れ衣を家には遣らな旅のしるしに
- 荒磯辺につきて漕がさね杏人の浜を過ぐれば恋しくありなり
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- 巨椋の入江響むなり射目人の伏見が田居に雁渡るらし
- 秋風に山吹の瀬の鳴るなへに天雲翔る雁に逢へるかも
- さ夜中と夜は更けぬらし雁が音の聞こゆる空に月渡る見ゆ
- 妹があたり繁き雁が音夕霧に来鳴きて過ぎぬすべなきまでに
- 雲隠り雁鳴く時は秋山の黄葉片待つ時は過ぐれど
- ふさ手折り多武の山霧繁みかも細川の瀬に波の騒ける
- 冬こもり春へを恋ひて植ゑし木の実になる時を片待つ吾等ぞ
- ぬばたまの夜霧は立ちぬ衣手を高屋の上にたなびくまでに
- 山背の久世の鷺坂神代より春は張りつつ秋は散りけり
- 春草を馬咋山ゆ越え来なる雁の使ひは宿り過ぐなり
- 御食向ふ南淵山の巌には降りしはだれか消え残りたる
- 我妹子が赤裳ひづちて植ゑし田を刈りて収めむ倉無の浜
- 百伝ふ八十の島廻を漕ぎ来れど粟の小島は見れど飽かぬかも
- 天の原雲なき夕にぬばたまの夜渡る月の入らまく惜しも
- 滝の上の三船の山ゆ秋津べに来鳴きわたるは誰呼子鳥
- 落ち激ち流るる水の磐に触り淀める淀に月の影見ゆ
- 楽浪の比良山風の海吹けば釣りする海人の袖返る見ゆ
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- 暁の夢に見えつつ梶島の礒越す波のしきてし思ほゆ
- 山科の石田の小野の柞原見つつか君が山道越ゆらむ
- 山科の石田の杜に幣置かばけだし我妹に直に逢はむかも
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- 春の日の霞める時に墨吉の岸に出でゐて釣船の・・・(長歌)
- 常世辺に住むべきものを剣刀己が心から鈍やこの君
- 級照る片足羽川のさ丹塗りの大橋の上ゆ紅の・・・(長歌)
- 大橋の頭に家あらばま悲しく独り行く児に宿貸さましを
- 埼玉の小埼の沼に鴨ぞ羽霧る己が尾に降り置ける霜を掃ふとにあらし
- 三栗の那賀に向へる曝井の絶えず通はむそこに妻もが
- 遠妻し多珂にありせば知らずとも手綱の浜の尋ね来なまし
- 白雲の龍田の山の瀧の上の小椋の嶺に咲きををる・・・(長歌)
- わが行きは七日は過ぎじ竜田彦ゆめこの花を風にな散らし
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- 衣手常陸の国の二並ぶ筑波の山を見まく欲り・・・(長歌)
- 今日の日にいかにか及かむ筑波嶺に昔の人の来けむその日も
- 鴬の卵の中に霍公鳥独り生れて己が父に・・・(長歌)
- かき霧らし雨の降る夜をほととぎす鳴きて行くなりあはれその鳥
- 草枕旅の憂へを慰もる事もありやと筑波嶺に・・・(長歌)
- 筑波嶺の裾廻の田井に秋田刈る妹がり遣らむ黄葉手折らな
- 鷲の住む筑波の山の裳羽服津のその津の上に率ひて・・・(長歌)
- 男の神に雲立ちのぼり時雨ふり濡れ通るともわれ帰らめや
- 三諸の神奈備山に立ち向かふ御垣の山に秋萩の・・・(長歌)
- 明日の宵逢はざらめやもあしひきの山彦響め呼びたて鳴くも
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- 我妹子は釧にあらなむ左手の我が奥の手に巻きて去なましを
- 豊国の香春は我家紐児にいつがり居れば香春は我家
- 石上布留の早稲田の穂には出でず心のうちに恋ふるこのころ
- かくのみし恋ひし渡ればたまきはる命も我れは惜しけくもなし
- みもろの神の帯ばせる泊瀬川水脈し絶えずは我れ忘れめや
- 後れ居て我れはや恋ひむ春霞たなびく山を君が越え去なば
- 後れ居て我れはや恋ひむ印南野の秋萩見つつ去なむ子ゆゑに
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- たらちねの母の命の言にあらば年の緒長く頼め過ぎむや
- 泊瀬川夕渡り来て我妹子が家の金門に近づきにけり
- 絶等寸の山の峰の上の桜花咲かむ春へは君し偲はむ
- 君なくはなぞ身装はむ櫛笥なる黄楊の小櫛も取らむとも思はず
- 明日よりは我れは恋ひむな名欲山岩踏み平し君が越え去なば
- 命をしま幸くもがも名欲山岩踏み平しまたまたも来む
- 牡牛の三宅の潟にさし向かふ鹿島の崎にさ丹塗りの・・・(長歌)
- 海つ道の凪ぎなむ時も渡らなむかく立つ波に船出すべしや
- 雪こそは春日消ゆらめ心さへ消え失せたれや言も通はぬ
- 松返りしひてあれやは三栗の中上り来ぬ麻呂といふ奴
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- 人となることは難きをわくらばになれる我が身は死にも生きも・・・(長歌)
- み越路の雪降る山を越えむ日は留まれるわれを懸けて偲はせ
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- 秋萩を妻問う鹿こそ独子に子持てりといへ鹿児じもの・・・(長歌)
- 旅人の宿りせむ野に霜降らば我が子羽ぐくめ天の鶴群
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- 妹らがり今木の嶺に茂り立つ夫松の木は古人見けむ
- もみち葉の過ぎにし児らと携はり遊びし磯を見れば悲しも
- 潮気立つ荒磯にはあれど行く水の過ぎにし妹が形見とそ来し
- 古に妹と我が見しぬばたまの黒牛潟を見れば寂しも
- 玉津島礒の浦廻の真砂にもにほひて行かな妹も触れけむ
- 小垣内の麻を引き干し妹なねが作り着せけむ白栲の・・・(長歌)
- 古のますら壮士の相競ひ妻問ひしけむ葦屋の・・・(長歌)
- 古の信太壮士の妻問ひし菟原処女の奥つ城ぞこれ
- 語り継ぐからにもここだ恋しきを直目に見けむ古壮士
- 父母が成しのまにまに箸向かふ弟の命は朝露の・・・(長歌)
- 別れてもまたも逢ふべく思ほえば心乱れて我れ恋ひめやも
- あしひきの荒山中に送り置きて帰らふ見れば心苦しも
- 鶏が鳴く吾妻の国に古にありける事と今までに・・・(長歌)
- 勝鹿の真間の井を見れば立ち平し水汲ましけむ手児奈し思ほゆ
- 葦屋の菟原処女の八年子の片生ひの時ゆ小放りに・・・(長歌)
- 葦屋の菟原処女の奥津城を行き来と見れば哭のみし泣かゆ
- 墓の上の木の枝靡けり聞きし如茅渟壮士にし寄りにけらしも