〈前半〉2351番~2596番
- 新室の壁草刈りにいましたまはね草のごと寄り合ふ娘子は君がまにまに
- 新室を踏み鎮む子し手玉鳴らすも玉の如照りたる君を内へと白せ
- 長谷の五百槻が下に吾が隠せる妻茜さし照れる月夜に人見てむかも
- ますらをの思ひ乱れて隠せるその妻天地に通り照るともあらはれめやも
- 愛しと吾が念ふ妹は早も死ねやも生けりとも吾に依るべしと人の言はなくに
- 高麗錦紐の片方ぞ床に落ちにける明日の夜し来なむと言はば取り置きて待たむ
- 朝戸出の君が足結を濡らす露原早く起き出でつつ我れも裳裾濡らさな
- 何せむに命をもとな長く欲りせむ生けりとも我が思ふ妹にやすく逢はなくに
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- 天にある一つ棚橋いかにか行かむ若草の妻がりと言はば足飾りせむ
- 山背の久世の若子が欲しと言ふ我れあふさわに我れを欲しと言ふ山背の久世
- 岡の崎廻みたる道を人な通ひそありつつも君が来まさむ避道にせむ
- 玉垂の小簾の隙に入り通ひ来ねたらちねの母が問はさば風と申さむ
- うちひさす宮道に逢ひし人妻ゆゑに玉の緒の思ひ乱れて寝る夜しぞ多き
- まそ鏡見しかと思ふ妹も逢はぬかも玉の緒の絶えたる恋の繁きこのころ
- 海原の道に乗りてや我が恋ひ居らむ大船のゆたにあるらむ人の子ゆゑに
- たらちねの母が手離れ斯くばかり術なき事はいまだ為なくに
- 人の寝る味寐は寝ずて愛しきやし君が目すらを欲りし嘆かふ
- 恋ひ死なば恋ひも死ねとや玉桙の道行く人の言も告らなく
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- 我れゆ後生まれむ人は我がごとく恋する道に逢ひこすなゆめ
- ますらをの現し心も我れはなし夜昼といはず恋ひしわたれば
- 何せむに命継ぎけむ我妹子に恋ひぬ前にも死なましものを
- よしゑやし来まさぬ君を何せむにいとはず我れは恋ひつつ居らむ
- 見わたせば近き渡りをた廻り今か来ますと恋ひつつぞ居る
- はしきやし誰が障ふれかも玉桙の道見忘れて君が来まさぬ
- 君が目を見まく欲りしてこの二夜千年のごとも我は恋ふるかも
- うち日さす宮道を人は満ち行けど我が思ふ君はただひとりのみ
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- あらたまの五年経れど我が恋の跡なき恋のやまなくあやし
- 巌すら行き通るべきますらをも恋といふことは後悔いにけり
- 日並べば人知りぬべし今日の日は千年のごともありこせぬか
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- ぬばたまのこの夜な明けそ赤らひく朝行く君を待たば苦しも
- 恋するに死するものにあらませば我が身は千たび死に返らまし
- 玉かぎる昨日の夕見しものを今日の朝に恋ふべき
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- しましくも見ねば恋ほしき我妹子を日に日に来なば言の繁けく
- たまきはる代までと定め頼みたる君によりてし言の繁けく
- 朱らひく膚に触れずて寝たれども心を異しく我が念はなくに
- いで何かここだ甚だ利心の失するまで思ふ恋ゆゑにこそ
- 恋ひ死なば恋ひも死ねとや我妹子が吾家の門を過ぎて行くらむ
- 妹があたり遠くも見れば怪しくも我れはそ恋ふる逢ふよしをなみ
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- 高麗錦紐解き開けて夕だに知らざる命恋ひつつあらむ
- 百積の船隠り入る八占さし母は問ふともその名は告らじ
- 眉根掻き鼻ひ紐解け待つらむかいつかも見むと思へる我れを
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- 白玉を巻きてぞ持てる今よりは我が玉にせむ知れる時だに
- 白玉を手に巻きしより忘れじと思ひけらくは何か終らむ
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- 雲だにも著くし立たば慰めて見つつも居らむ直に逢ふまでに
- 春柳葛城山に立つ雲の立ちても居ても妹をしぞ思ふ
- 春日山雲居隠りて遠けども家は思はず君をしぞ思ふ
- 我がゆゑに言はれし妹は高山の嶺の朝霧過ぎにけむかも
- ぬばたまの黒髪山の山菅に小雨降りしきしくしく思ほゆ
- 大野らに小雨降りしく木の下に時と寄り来ね我が思ふ人
- 朝霜の消なば消ぬべく思ひつついかにこの夜を明かしてむかも
- 我が背子が浜行く風のいや急に急事増して逢はずかもあらむ
- 遠き妹が振り放け見つつ偲ふらむこの月の面に雲なたなびき
- 山の端を追ふ三日月のはつはつに妹をぞ見つる恋ほしきまでに
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- 橘の本に我を立て下枝取り成らむや君と問ひし子らはも
- 天雲に翼打ちつけて飛ぶ鶴のたづたづしかも君しまさねば
- 妹に恋ひ寐ねぬ朝明に鴛鴦のこゆかく渡る妹が使か
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- 剣大刀諸刃の利きに足踏みて死なば死なむよ君によりては
- 我妹子に恋ひしわたれば剣大刀名の惜しけくも思ひかねつも
- 朝月の日向黄楊櫛古りぬれど何しか君が見れど飽かざらむ
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- 言霊の八十の街に夕占問ふ占まさに告る妹は相寄らむ
- 玉桙の道行き占に占なへば妹は逢はむと我れに告りつも
- すめろぎの神の御門を畏みとさもらふ時に逢へる君かも
- まそ鏡見とも言はめや玉かぎる岩垣淵の隠りてある妻
- 赤駒が足掻速けば雲居にも隠り行かむぞ袖まけ我妹
- こもりくの豊泊瀬道は常滑のかしこき道ぞ汝が心ゆめ
- 味酒の三諸の山に立つ月の見が欲し君が馬の音ぞする
- 鳴る神の少し響みてさし曇り雨も降らぬか君を留めむ
- 鳴る神の少し響みて降らずとも我は留まらむ妹し留めば
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- 誰れそこのわが屋戸来喚ぶたらちねの母にころはえ物思ふわれを
- さ寝ぬ夜は千夜にありとも我が背子が思ひ悔ゆべき心は持たじ
- 家人は道もしみみに通へども我が待つ妹が使来ぬかも
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- ひとり寝と薦朽ちめやも綾席緒になるまでに君をし待たむ
- 相見ては千年や去ぬるいなをかも我れや然思ふ君待ちかてに
- 振分の髪を短み春草を髪に束くらむ妹をしぞおもふ
- た廻り行箕の里に妹を置きて心空にあり地は踏めども
- 若草の新手枕をまきそめて夜をや隔てむ憎くあらなくに
- 我が恋ひしことも語らひ慰めむ君が使ひを待ちやかねてむ
- うつつには逢ふよしもなし夢にだに間なく見え君恋ひに死ぬべし
- 誰そ彼と問はば答へむ術をなみ君が使を帰しやりつも
- 念はぬに到らば妹が歓しみと笑まむ眉引おもほゆるかも
- 斯くばかり恋ひむものぞと念はねば妹が袂をまかぬ夜もありき
- かくだにも我れは恋ひなむ玉梓の君が使を待ちやかねてむ
- 妹に恋ひ我が泣く涙敷栲の木枕通り袖さへ濡れぬ
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- 心には千重しくしくに思へども使を遣らむすべの知らなく
- 夢のみに見てすらここだ恋ふる我はうつつに見てばましていかにあらむ
- 相見ては面隠さるるものからに継ぎて見まくの欲しき君かも
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- 花ぐはし葦垣越しにただ一目相見し子ゆゑ千たび嘆きつ
- 色に出でて恋ひば人見て知りぬべし心のうちの隠り妻はも
- 相見ては恋慰むと人は言へど見て後にぞも恋まさりける
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- 偽も似つきてぞする何時よりか見ぬ人恋ふに人の死せし
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- 今だにも目な乏しめそ相見ずて恋ひむ年月久しけまくに
- 朝寝髪われは梳らじ愛しき君が手枕触れてしものを
- 早行きて何時しか君を相見むと念ひし情今ぞ和ぎぬる
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- 大原の古りにし里に妹を置きて我れ寐ねかねつ夢に見えこそ
- 夕されば君来まさむと待ちし夜のなごりぞ今も寐寝かてにする
- 相思はず君はあるらしぬばたまの夢にも見えずうけひて寝れど
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