大和の国のこころ、万葉のこころ

不肖私がこよなく愛する『万葉集』の鑑賞blogです。

小さなおかみさん・・・巻第16-3880

訓読 >>>

鹿島嶺(かしまね)の 机(つくゑ)の島の しただみを い拾(ひり)ひ持ち来て 石もち つつき破(やぶ)り 速川(はやかは)に 洗ひ濯(すす)ぎ 辛塩(からしほ)に こごと揉(も)み 高坏(たかつき)に盛(も)り 机に立てて 母にあへつや 目豆児(めづこ)の刀自(とじ) 父にあへつや 身女児(みめこ)の刀自

 

要旨 >>>

島の海辺で小さな巻貝を拾い集めてきて、石でこつこつ突き割って、川の流れで洗いすすぎ、辛い塩でごしごし揉んで、高坏の器に盛って食台の上にきちんと並べ、お母さんにご馳走したのかい、可愛いおかみさん、お父さんにご馳走したのかい、小さなおかみさん。

 

鑑賞 >>>

 巻第16の「能登の国の歌」とある3首のうちの1首です。子どもに料理の手順を教える童歌ではないかとされますが、何とも微笑ましく愛らしい歌で、まだ幼い女の子が一生懸命に料理の真似ごとをしている姿が目に浮かぶようです。

 なお、訓読文にある「鹿島嶺」は石川県七尾市付近の山、「机の島」は和倉沖の小島とされます。「しただみ」は円錐形の小さな巻貝。「目豆児」は、可愛い子、珍しい子。幼女を主婦に見立てて「刀自」と呼んでいます。「身女児」は語義未詳ながら、華奢な体つきからとらえた語ではないかとみられます。”めずこ”と”みめこ”、どちらも可愛いらしい呼び名です。

 

f:id:yukoyuko1919:20211227161745j:plain