大和の国のこころ、万葉のこころ

不肖私がこよなく愛する『万葉集』の鑑賞blogです。

小さなおかみさん・・・巻第16-3880

訓読 >>>

鹿島嶺(かしまね)の 机(つくゑ)の島の しただみを い拾(ひり)ひ持ち来て 石もち つつき破(やぶ)り 速川(はやかは)に 洗ひ濯(すす)ぎ 辛塩(からしほ)に こごと揉(も)み 高坏(たかつき)に盛(も)り 机に立てて 母にあへつや 目豆児(めづこ)の刀自(とじ) 父にあへつや 身女児(みめこ)の刀自

 

要旨 >>>

島の海辺で小さな巻貝を拾い集めてきて、石でこつこつ突き割って、川の流れで洗いすすぎ、辛い塩でごしごし揉んで、高坏の器に盛って食台の上にきちんと並べ、お母さんにご馳走したのかい、可愛いおかみさん、お父さんにご馳走したのかい、小さなおかみさん。

 

鑑賞 >>>

 巻第16の「能登の国の歌」とある3首のうちの1首です。子どもに料理の手順を教える童歌ではないかとされますが、何とも微笑ましく愛らしい歌で、まだ幼い女の子が一生懸命に料理の真似ごとをしている姿が目に浮かぶようです。

 なお、訓読文にある「鹿島嶺」は石川県七尾市付近の山、「机の島」は和倉沖の小島とされます。「しただみ」は円錐形の小さな巻貝。「目豆児」は、可愛い子、珍しい子。幼女を主婦に見立てて「刀自」と呼んでいます。「身女児」は語義未詳ながら、華奢な体つきからとらえた語ではないかとみられます。”めずこ”と”みめこ”、どちらも可愛いらしい呼び名です。

 

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当ブログ制作にあたっての参考文献

『NHK100分de名著ブックス万葉集』~佐佐木幸綱/NHK出版
大伴家持』~藤井一二/中公新書
『古代史で楽しむ万葉集』~中西進/KADOKAWA
『誤読された万葉集』~古橋信孝/新潮社
『新版 万葉集(一~四)』~伊藤博/KADOKAWA
田辺聖子の万葉散歩』~田辺聖子/中央公論新社
超訳 万葉集』~植田裕子/三交社
『日本の古典を読む 万葉集』~小島憲之/小学館
『ねずさんの奇跡の国 日本がわかる万葉集』~小名木善行/徳間書店
『万葉秀歌』~斎藤茂吉/岩波書店
万葉集講義』~上野誠/中央公論新社
万葉集と日本の夜明け』~半藤一利/PHP研究所
萬葉集に歴史を読む』~森浩一/筑摩書房
万葉集のこころ 日本語のこころ』~渡部昇一/ワック
万葉集の詩性』~中西進/KADOKAWA
万葉集評釈』~窪田空穂/東京堂出版
『万葉樵話』~多田一臣/筑摩書房
『万葉の旅人』~清原和義/学生社
『万葉ポピュリズムを斬る』~品田悦一/講談社
『私の万葉集(一~五)』~大岡信/講談社