1418番~1663番
- 石ばしる垂水の上のさ蕨の萌え出づる春になりにけるかも
- 神奈備の磐瀬の社の呼子鳥いたくな鳴きそ我が恋まさる
- 沫雪かはだれに降ると見るまでに流らへ散るは何の花ぞも
- 春山の咲きのをゐりに春菜摘む妹が白紐見らくしよしも
- うち靡く春来るらし山の際の遠き木末の咲きゆく見れば
- 去年の春いこじて植ゑし我がやどの若木の梅は花咲きにけり
- 春の野にすみれ採みにと来しわれぞ野をなつかしみ一夜寝にける
- あしひきの山桜花日並べてかく咲きたらばいたく恋ひめやも
- わが背子に見せむと思ひし梅の花それとも見えず雪の降れれば
- 明日よりは春菜摘まむと標めし野に昨日も今日も雪は降りつつ
- おしてる難波を過ぎてうちなびく草香の山を夕暮に・・・(長歌)
- 娘子らがかざしのために風流士の縵のためと敷きませる・・・(長歌)
- 去年の春逢へりし君に恋ひにてし桜の花は迎へ来らしも
- 百済野の萩の古枝に春待つと居りし鶯鳴きにけむかも
- 我が背子が見らむ佐保道の青柳を手折りてだにも見むよしもがも
- 打ち上る佐保の川原の青柳は今は春へとなりにけるかも
- 霜雪もいまだ過ぎねば思はぬに春日の里に梅の花見つ
- 蝦鳴く神奈備川に影見えて今か咲くらむ山吹の花
- 含めりと言ひし梅が枝今朝降りし沫雪にあひて咲きぬらむかも
- 霞立つ春日の里の梅の花山のあらしに散りこすなゆめ
- 霞立つ春日の里の梅の花花に問はむと我が思はなくに
- (未)
- (未)
- うち霧らし雪は降りつつしかすがに吾家の園に鶯鳴くも
- (未)
- (未)
- 山吹の咲きたる野辺のつぼすみれこの春の雨に盛りなりけり
- 風交り雪は降るとも実にならぬ我家の梅を花に散らすな
- 春の野にあさる雉の妻恋ひにおのがあたりを人に知れつつ
- 世の常に聞けば苦しき呼子鳥声なつかしき時にはなりぬ
- 我がやどに蒔きしなでしこいつしかも花に咲きなむなそへつつ見む
- 茅花抜く浅茅の原のつぼすみれ今盛りなり我が恋ふらくは
- 心ぐきものにぞありける春霞たなびく時に恋の繁きは
- 水鳥の鴨の羽色の春山のおほつかなくも思ほゆるかも
- 闇夜ならばうべも来まさじ梅の花咲ける月夜に出でまさじとや
- 玉たすき懸けぬ時なく息の緒に我が思ふ君はうつせみの・・・(長歌)
- 波の上ゆ見ゆる小島の雲隠りあな息づかし相別れなば
- たまきはる命に向ひ恋ひむゆは君が御船の楫柄にもが
- この花の一よのうちに百種の言そ隠れる凡ろかにすな
- この花の一よのうちは百種の言持ちかねて折らえけらずや
- 屋戸にある桜の花は今もかも松風疾み土に散るらむ
- 世の中も常にしあらねば屋戸にある桜の花の散れる頃かも
- 戯奴がため我が手もすまに春の野に抜ける茅花そ食して肥えませ
- 昼は咲き夜は恋ひ寝る合歓木の花君のみ見めや戯奴さへに見よ
- 我が君に戯奴は恋ふらし賜りたる茅花を喫めどいや痩せに痩す
- 我妹子が形見の合歓木は花のみに咲きてけだしく実にならじかも
- 春霞たなびく山の隔れれば妹に逢はずて月そ経にける
- 霍公鳥いたくな鳴きそ汝が声を五月の玉にあへ貫くまでに
- 神奈備の磐瀬の杜の霍公鳥毛無の岳に何時か来鳴かむ
- 霍公鳥無かる国にも行きてしかその鳴く声を聞けば苦しも
- (未)
- (未)
- もののふの石瀬の社の霍公鳥今も鳴かぬか山の常蔭に
- 恋しけば形見にせむと我がやどに植ゑし藤波今咲きにけり
- 霍公鳥来鳴きとよもす卯の花の共にや来しと問はましものを
- 橘の花散る里の霍公鳥片恋しつつ鳴く日しぞ多き
- 今もかも大城の山に霍公鳥鳴き響むらむ我れなけれども
- 何しかもここだく恋ふる霍公鳥鳴く声聞けば恋こそまされ
- (未)
- (未)
- (未)
- (未)
- 我が宿に月おし照れり霍公鳥心あれ今夜来鳴き響もせ
- 我が宿の花橘に霍公鳥今こそ鳴かめ友に逢へる時
- 皆人の待ちし卯の花散りぬとも鳴く霍公鳥我れ忘れめや
- 我が背子が宿の橘花をよみ鳴く霍公鳥見にぞ我が来し
- 霍公鳥いたくな鳴きそひとり居て寐の寝らえぬに聞けば苦しも
- (未)
- (未)
- (未)
- (未)
- (未)
- (未)
- (未)
- 君が家の花橘は成りにけり花なる時に逢はましものを
- 我が宿の花橘を霍公鳥来鳴き響めて本に散らしつ
- (未)
- (未)
- (未)
- 筑波嶺に我が行けりせば霍公鳥山彦響め鳴かましやそれ
- 暇なみ来まさぬ君に霍公鳥我れかく恋ふと行きて告げこそ
- 言繁み君は来まさず霍公鳥汝れだに来鳴け朝戸開かむ
- 夏の野の茂みに咲ける姫百合の知らえぬ恋は苦しきものぞ
- (未)
- 五月の花橘を君がため玉にこそ貫け散らまく惜しみ
- 我妹子が家の垣内のさ百合花ゆりと言へるは否と言ふに似る
- 暇なみ五月をすらに我妹子が花橘を見ずか過ぎなむ
- ほととぎす鳴きしすなはち君が家に行けと追ひしは至りけむかも
- (未)
- いかといかとある我がやどに百枝さし生ふる橘玉に貫く・・・(長歌)
- 望ぐたち清き月夜に我妹子に見せむと思ひしやどの橘
- 妹が見て後も鳴かなむ霍公鳥花橘を地に散らしつ
- なでしこは咲きて散りぬと人は言へど我が標めし野の花にあらめやも
- 夕されば小倉の山に鳴く鹿は今夜は鳴かずい寝にけらしも
- 経もなく緯も定めず娘子らが織る黄葉に霜な降りそね
- 今朝の朝け雁が音聞きつ春日山もみちにけらし我がこころ痛し
- 秋萩は咲くべくあらし我が屋戸の浅茅が花の散りゆく見れば
- 言繁き里に住まずは今朝鳴きし雁にたぐひて行かましものを
- (未)
- (未)
- 天の川相向き立ちてわが恋ひし君来ますなり紐解き設けな
- 久方の天の川瀬に舟浮けて今夜か君が我がり来まさむ
- 彦星は織女と天地の別れし時ゆいなむしろ・・・(長歌)
- 風雲は二つの岸に通へども我が遠妻の言ぞ通はぬ
- たぶてにも投げ越しつべき天の川隔てればかもあまた術なき
- (未)
- (未)
- (未)
- (未)
- (未)
- (未)
- (未)
- をみなへし秋萩交る蘆城の野今日を始めて万世に見む
- 玉櫛笥蘆城の川を今日見ては万代までに忘らえめやも
- 草枕旅ゆく人も行き触ればにほひぬべくも咲ける萩かも
- 伊香山野辺に咲きたる萩見れば君が家なる尾花し思ほゆ
- をみなへし秋萩折れれ玉桙の道行きづとと乞はむ子がため
- (未)
- (未)
- 秋の野に咲きたる花を指折りかき数ふれば七種の花
- 萩の花尾花葛花なでしこの花をみなへしまた藤袴朝顔の花
- 秋の田の穂田を雁がね闇けくに夜のほどろにも鳴き渡るかも
- 今朝の朝明雁が音寒く聞きしなへ野辺の浅茅ぞ色づきにける
- 我が岡にさを鹿来鳴く初萩の花妻どひに来鳴くさを鹿
- 我が岡の秋萩の花風をいたみ散るべくなりぬ見む人もがも
- (未)
- 牽牛の思ひますらむ心より見る我苦し夜の更けゆけば
- 織女の袖つぐ宵の暁は川瀬の鶴は鳴かずともよし
- (未)
- さを鹿の萩に貫き置ける露の白玉あふさわに誰れの人かも手に巻かむちふ
- 咲く花もをそろはうとしおくてなる長き心になほ及かずけり
- (未)
- 秋萩の散りの乱ひに呼び立てて鳴くなる鹿の声の遥けさ
- (未)
- 夕月夜心もしのに白露の置くこの庭に蟋蟀鳴くも
- しぐれの雨間なくし降れば三笠山木末あまねく色づきにけり
- 大君の三笠の山の黄葉は今日の時雨に散りか過ぎなむ
- (未)
- (未)
- 明日香川行き廻る丘の秋萩は今日降る雨に散りか過ぎなむ
- 鶉鳴く古りにし里の秋萩を思ふ人どち相見つるかも
- 秋萩は盛り過ぐるを徒にかざしに挿さず帰りなむとや
- (未)
- (未)
- 誰聞きつこゆ鳴き渡る雁がねの妻呼ぶ声のともしくもあるを
- 聞きつやと妹が問はせる雁がねはまことも遠く雲隠るなり
- 秋づけば尾花が上に置く露の消ぬべくも我は思ほゆるかも
- 我が宿の一群萩を思ふ子に見せずほとほと散らしつるかも
- ひさかたの雨間もおかず雲隠り鳴きぞ行くなる早稲田雁がね
- 雲隠り鳴くなる雁の行きて居む秋田の穂立繁くし思ほゆ
- 雨隠り情いぶせみ出で見れば春日の山は色づきにけり
- 雨晴れて清く照りたるこの月夜またさらにして雲なたなびき
- (未)
- (未)
- 我が宿の尾花が上の白露を消たずて玉に貫くものにもが
- 秋の雨に濡れつつ居ればいやしけど我妹が宿し思ほゆるかも
- (未)
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- あしひきの山の黄葉今夜もか浮かび行くらむ山川の瀬に
- (未)
- (未)
- 十月時雨にあへる黄葉の吹かば散りなむ風のまにまに
- 黄葉の過ぎまく惜しみ思ふどち遊ぶ今夜は明けずもあらぬか
- しかとあらぬ五百代小田を刈り乱り田廬に居れば都し思ほゆ
- 隠口の泊瀬の山は色づきぬ時雨の雨は降りにけらしも
- 時雨の雨間なくな降りそ紅ににほへる山の散らまく惜しも
- (未)
- 妹が家の門田を見むとうち出で来し心もしるく照る月夜かも
- (未)
- (未)
- (未)
- 妻恋ひに鹿鳴く山辺の秋萩は露霜寒み盛り過ぎゆく
- めづらしき君が家なる花すすき穂に出づる秋の過ぐらく惜しも
- (未)
- (未)
- 秋されば春日の山の黄葉見る奈良の都の荒るらく惜しも
- (未)
- (巻第4-488に重出)
- (巻第4-489に重出)
- (未)
- (未)
- 高円の秋野の上のなでしこが花うら若み人のかざししなでしこが花
- (未)
- (未)
- 秋の野を朝ゆく鹿の跡もなく思ひし君に逢へる今宵か
- 九月のその初雁の使にも思ふ心は聞こえ来ぬかも
- 大の浦のその長浜に寄する波ゆたけく君を思ふこのころ
- 朝ごとに我が見る宿のなでしこの花にも君はありこせぬかも
- 秋萩に置きたる露の風吹きて落つる涙は留めかねつも
- (未)
- 玉桙の道は遠けどはしきやし妹を相見に出でてぞ我が来し
- あらたまの月立つまでに来ませねば夢にし見つつ思ひそ我がせし
- (未)
- (未)
- (未)
- 我が蒔ける早稲田の穂立作りたる蘰ぞ見つつ偲はせ我が背
- 我妹子が業と作れる秋の田の早稲穂のかづら見れど飽かぬかも
- 秋風の寒きこのころ下に着む妹が形見とかつも偲はむ
- (未)
- (未)
- ねもころに物を思へば言はむすべ為むすべもなし妹と我れと・・・(長歌)
- 高円の野辺の容花面影に見えつつ妹は忘れかねつも
- (未)
- (未)
- 手もすまに植ゑし萩にやかへりては見れども飽かず心 尽さむ
- 衣手に水渋付くまで植ゑし田を引板我が延へまもれる苦し
- 佐保川の水を堰き上げて植ゑし田を刈れる初飯はひとりなるべし
- 大口の真神の原に降る雪はいたくな降りそ家もあらなくに
- はだすすき尾花逆葺き黒木もち造れる室は万代までに
- あをによし奈良の山なる黒木もち造れる室は座せど飽かぬかも
- 沫雪のほどろほどろに降り敷しけば奈良の都し思ほゆるかも
- 我が岡に盛りに咲ける梅の花残れる雪をまがへつるかも
- (未)
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- 梅の花折りも折らずも見つれども今夜の花になほ如かずけり
- 今のごと心を常に思へらばまづ咲く花の地に散らめやも
- (未)
- 高山の菅の葉しのぎ降る雪の消ぬと言ふべしも恋の繁けく
- (未)
- (未)
- 我が背子と二人見ませば幾許かこの降る雪の嬉しからまし
- 真木の上に降り置ける雪のしくしくも思ほゆるかもさ夜問へ我が背
- 梅の花散らすあらしの音のみに聞きし我妹を見らくしよしも
- ひさかたの月夜を清み梅の花心開けて我が思へる君
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