- 巻3-379 ひさかたの天の原より生れ来る神の命奥山の・・・(長歌)
- 巻3-380 木綿たたみ手に取り持ちてかくだにも我れは祈ひなむ君に逢はじかも
- 巻3-401 山守のありける知らにその山に標結ひ立てて結ひの恥しつ
- 巻3-410 橘をやどに植ゑ生ほし立ちて居て後に悔ゆとも験あらめやも
- 巻3-460 栲角の新羅の国ゆ人言をよしと聞かして問ひ放くる・・・(長歌)
- 巻3-461 留めえぬ命にしあれば敷栲の家ゆは出でて雲隠りにき
- 巻4-525 佐保川の小石踏み渡りぬばたまの黒馬の来る夜は年にもあらぬか
- 巻4-526 千鳥鳴く佐保の川瀬のさざれ波やむ時もなし我が恋ふらくは
- 巻4-527 来むと言ふも来ぬ時あるを来じと言ふを来むとは待たじ来じと言ふものを
- 巻4-528 千鳥鳴く佐保の川門の瀬を広み打橋渡す汝が来と思へば
- 巻4-529 佐保河の岸のつかさの柴な刈りそね在りつつも春し来たらば立ち隠るがね
- 巻4-563 黒髪に白髪交り老ゆるまでかかる恋にはいまだ逢はなくに
- 巻4-564 山菅の実ならぬことを我に寄そり言はれし君は誰れとか寝らむ
- 巻4-585 出でて去なむ時しはあらむをことさらに妻恋しつつ立ちて去ぬべしや
- 巻4-586 相見ずは恋ひずあらましを妹を見てもとなかくのみ恋ひばいかにせむ
- 巻4-619 おしてる難波の菅のねもころに君が聞こして年深く・・・(長歌)
- 巻4-620 はじめより長く言ひつつ頼めずはかかる思ひに会はましものか
- 巻4-647 心には忘るる日なく思へども人の言こそ繁き君にあれ
- 巻4-649 夏葛の絶えぬ使のよどめれば事しもあるごと思ひつるかも
- 巻4-651 ひさかたの天の露霜置きにけり家なる人も待ち恋ひぬらむ
- 巻4-652 玉守に玉は授けてかつがつも枕と我れはいざふたり寝む
- 巻4-656 我れのみぞ君には恋ふる我が背子が恋ふといふことは言のなぐさぞ
- 巻4-657 思はじと言ひてしものをはねず色のうつろひやすき我が心かも
- 巻4-658 思へども験もなしと知るものを何かここだく我が恋ひ渡る
- 巻4-659 あらかじめ人言繁しかくしあらばしゑや我が背子奥もいかにあらめ
- 巻4-660 汝をと我を人ぞ放くなるいで我が君人の中言聞こすなゆめ
- 巻4-661 恋ひ恋ひて逢へる時だに愛しき言尽くしてよ長くと思はば
- 巻4-666 相見ぬは幾久さにもあらなくにここだく我れは恋ひつつもあるか
- 巻4-667 恋ひ恋ひて逢ひたるものを月しあれば夜は隠るらむしましはあり待て
- 巻4-673 まそ鏡磨ぎし心をゆるしてば後に言ふとも験あらめやも
- 巻4-674 真玉つくをちこち兼ねて言は言へど逢ひて後こそ悔にはありといへ
- 巻4-683 言ふ言の畏き国ぞ紅の色にな出でそ思ひ死ぬとも
- 巻4-684 今は我は死なむよ我が背生けりとも我れに依るべしと言ふと言はなくに
- 巻4-685 人言を繁みか君が二鞘の家を隔てて恋ひつつまさむ
- 巻4-686 このころは千歳や行きも過ぎぬると我れかしか思ふ見まく欲りかも
- 巻4-687 愛しと我が思ふ心早川の塞きに塞くともなほや崩えなむ
- 巻4-688 青山を横ぎる雲のいちしろく我れと笑まして人に知らゆな
- 巻4-689 海山も隔たらなくに何しかも目言をだにもここだ乏しき
- 巻4-721 あしひきの山にし居れば風流なみ我がする業をとがめたまふな
- 巻4-723 常世にと我が行かなくに小金門にもの悲しらに思へりし・・・(長歌)
- 巻4-724 朝髪の思ひ乱れてかくばかりなねが恋ふれぞ夢に見えける
- 巻4-725 にほ鳥の潜く池水心あらば君に我が恋ふる心示さね
- 巻4-726 外に居て恋ひつつあらずは君が家の池に住むといふ鴨にあらましを
- 巻4-760 うち渡す竹田の原に鳴く鶴の間なく時なしわが恋ふらくは
- 巻4-761 早川の瀬に居る鳥のよしをなみ思ひてありし我が子はもあはれ
- 巻6-963 大汝少彦名の神こそば名付けそめけめ名のみを・・・(長歌)
- 巻6-964 我が背子に恋ふれば苦し暇あらば拾ひて行かむ恋忘貝
- 巻6-979 我が背子が着る衣薄し佐保風はいたくな吹きそ家に至るまで
- 巻6-981 猟高の高円山を高みかも出で来る月の遅く照るらむ
- 巻6-982 ぬばたまの夜霧の立ちておほほしく照れる月夜の見れば悲しさ
- 巻6-983 山の端のささら愛壮士天の原門)渡る光見らくし好しも
- 巻6-992 故郷の飛鳥はあれどあをによし奈良の明日香を見らくしよしも
- 巻6-993 月立ちてただ三日月の眉根掻き日長く恋ひし君に逢へるかも
- 巻6-995 かくしつつ遊び飲みこそ草木すら春は咲きつつ秋は散りゆく
- 巻6-1017 木綿畳手向けの山を今日越えていづれの野辺に廬りせむ我れ
- 巻6-1028 ますらをの高円山に迫めたれば里に下り来るむざさびぞこれ
- 巻8-1432 我が背子が見らむ佐保道の青柳を手折りてだにも見むよしもがも
- 巻8-1433 打ち上る佐保の川原の青柳は今は春へとなりにけるかも
- 巻8-1445 風交り雪は降るとも実にならぬ我家の梅を花に散らすな
- 巻8-1447 世の常に聞けば苦しき呼子鳥声なつかしき時にはなりぬ
- 巻8-1450 心ぐきものにぞありける春霞たなびく時に恋の繁きは
- 巻8-1474 今もかも大城の山に霍公鳥鳴き響むらむ我れなけれども
- 巻8-1475 何しかもここだく恋ふる霍公鳥鳴く声聞けば恋こそまされ
- 巻8-1484 霍公鳥いたくな鳴きそひとり居て寐の寝らえぬに聞けば苦しも
- 巻8-1498 暇なみ来まさぬ君に霍公鳥我れかく恋ふと行きて告げこそ
- 巻8-1500 夏の野の茂みに咲ける姫百合の知らえぬ恋は苦しきものぞ
- 巻8-1502 五月の花橘を君がため玉にこそ貫け散らまく惜しみ
- 巻8-1548 咲く花もをそろはうとしおくてなる長き心になほ及かずけり
- 巻8-1560 (未)
- 巻8-1561 (未)
- 巻8-1592 しかとあらぬ五百代小田を刈り乱り田廬に居れば都し思ほゆ
- 巻8-1593 隠口の泊瀬の山は色づきぬ時雨の雨は降りにけらしも
- 巻8-1620 あらたまの月立つまでに来ませねば夢にし見つつ思ひそ我がせし
- 巻8-1651 (未)
- 巻8-1654 (未)
- 巻8-1656 (未)
- 巻17-3927 草枕旅行く君を幸くあれと斎瓮据ゑつ我が床の辺に
- 巻17-3928 今のごと恋しく君が思ほえばいかにかもせむするすべのなさ
- 巻17-3929 旅に去にし君しも継ぎて夢に見ゆ我が片恋の繁ければかも
- 巻17-3930 道の中国つ御神は旅行きもし知らぬ君を恵みたまはな
- 巻18-4080 常人の恋ふといふよりはあまりにて我れは死ぬべくなりにたらずや
- 巻18-4081 片思ひを馬にふつまに負ほせ持て越辺に遣らば人かたはむかも
- 巻19-4220 (未)
- 巻19-4221 (未)
生没年不詳。父は大伴安麻呂、母は石川郎女。旅人の異母妹で、家持の叔母にあたる。はじめ天武天皇第5皇子の穂積皇子に嫁したが死別。その後、藤原麻呂の寵を受け、さらに後に異母兄の宿奈麻呂の妻となり、坂上大嬢と二嬢の二人の娘を生んだ。佐保の坂上里に住んでいたためこの名で呼ばれる。神亀年間(724~729年)、大宰府にあった旅人の妻の死により筑紫に下り、旅人の身辺の世話をするとともに家持の養育にもあたったらしい。家持の作歌への開眼は、郎女によってなされたろうという。730年(天平2年)に帰京、旅人の死後も家刀自(いえとじ)として大伴家に重きをなした。『万葉集』には長歌6首、短歌77首、旋頭歌1首を残しており、女性歌人としては最多。歌風は理知的、技巧的で、社交的性格が濃く認められる。