大和の国のこころ、万葉のこころ

不肖私がこよなく愛する『万葉集』の鑑賞blogです。

『万葉集』巻第7(索引)

1068番~1417番

  1. 天の海に雲の波立ち月の船星の林に漕ぎ隠る見ゆ
  2. 常はさね思はぬものをこの月の過ぎ隠らまく惜しき宵かも
  3. 大夫の弓末振り起し狩高の野辺さへ清く照る月夜かも
  4. 山の端にいさよふ月を出でむかと待ちつつ居るに夜ぞ更けにける
  5. 明日の宵照らむ月夜は片寄りに今夜に寄りて夜長からなむ
  6. 玉垂の小簾の間通しひとり居て見る験なき夕月夜かも
  7. 春日山押して照らせるこの月は妹が庭にも清けかりけり
  8. 海原の道遠みかも月読の明少なき夜は更けにつつ
  9. ももしきの大宮人の罷り出て遊ぶ今夜の月のさやけさ
  10. ぬばたまの夜渡る月を留めむに西の山辺に関もあらぬかも
  11. この月のここに来たれば今とかも妹が出で立ち待ちつつあるらむ
  12. まそ鏡照るべき月を白栲の雲か隠せる天つ霧かも
  13. ひさかたの天照る月は神代にか出で反るらむ年は経につつ
  14. ぬばたまの夜渡る月をおもしろみ我が居る袖に露ぞ置きにける
  15. 水底の玉さへ清に見つべくも照る月夜かも夜の更けぬれば
  16. 霜曇りすとにかあるらむひさかたの夜渡る月の見えなく思へば
  17. 山の端にいさよふ月を何時とかも我が待ち居らむ夜は更けにつつ
  18. 妹があたり我が袖振らむ木の間より出で来る月に雲なたなびき
  19. 靫懸くる伴の男広き大伴に国栄えむと月は照るらし
  20. 穴師川川波立ちぬ巻向の弓月が岳に雲居立てるらし
  21. あしひきの山川の瀬の響なへに弓月が嶽に雲立ち渡る
  22. 大海に島もあらなくに海原のたゆたふ波に立てる白雲
  23. 我妹子が赤裳の裾のひづつらむ今日の小雨に我れさへ濡れな
  24. 通るべく雨はな降りそ我妹子が形見の衣我れ下に着り
  25. 鳴る神の音のみ聞きし巻向の桧原の山を今日見つるかも
  26. 三諸のその山なみに子らが手を巻向山は継ぎしよろしも
  27. 我が衣色取り染めむ味酒三室の山は黄葉しにけり
  28. 三諸つく三輪山見れば隠口の泊瀬の桧原思ほゆるかも
  29. いにしへのことは知らぬを我れ見ても久しくなりぬ天の香具山
  30. 我が背子をこち巨勢山と人は言へど君も来まさず山の名にあらし
  31. 紀路にこそ妹山ありといへ玉櫛笥二上山も妹こそありけれ
  32. 片岡のこの向つ峰に椎蒔かば今年の夏の蔭にならむか
  33. 巻向の穴師の川ゆ行く水の絶ゆることなくまたかへり見む
  34. ぬばたまの夜さり来れば巻向の川音高しも嵐かも疾き
  35. 大君の御笠の山の帯にせる細谷川の音のさやけさ
  36. 今しくは見めやと思ひしみ吉野の大川淀を今日見つるかも
  37. 馬並めてみ吉野川を見まく欲りうち越え来てぞ滝に遊びつる
  38. 音に聞き目にはいまだ見ぬ吉野川六田の淀を今日見つるかも
  39. かはづ鳴く清き川原を今日見てはいつか越え来て見つつ偲はむ
  40. 泊瀬川白木綿花に落ちたぎつ瀬を清けみと見に来しわれを
  41. 泊瀬川流るる水脈の瀬を早みゐで越す波の音の清けく
  42. (未)
  43. (未)
  44. (未)
  45. (未)
  46. この小川霧ぞ結べるたぎちゆく走井の上に言挙げせねど
  47. 我が紐を妹が手もちて結八川またかへり見む万代までに
  48. 妹が紐結八河内をいにしへのみな人見きとここを誰れ知る
  49. (未)
  50. (未)
  51. いにしへにありけむ人も吾が如か三輪の檜原に挿頭折りけむ
  52. 行く川の過ぎにし人の手折らねばうらぶれ立てり三輪の桧原は
  53. み吉野の青根が峰の蘿席誰れか織りけむ経緯なしに
  54. 妹らがり我が通ひ道の細竹薄我れし通はば靡け細竹原
  55. 山の際に渡る秋沙の行きて居むその川の瀬に波立つなゆめ
  56. 佐保川の清き川原に鳴く千鳥かはづと二つ忘れかねつも
  57. 佐保川に騒ける千鳥さ夜更けて汝が声聞けば寝ねかてなくに
  58. 清き瀬に千鳥妻呼び山の際に霞立つらむ神なびの里
  59. 年月もいまだ経なくに明日香川瀬々ゆ渡しし石橋もなし
  60. (未)
  61. (未)
  62. 琴取れば嘆き先立つけだしくも琴の下樋に妻や隠れる
  63. (未)
  64. (未)
  65. (未)
  66. (未)
  67. (未)
  68. 宇治川は淀瀬なからし網代人舟呼ばふ声をちこち聞こゆ
  69. 宇治川に生ふる菅藻を川早み採らず来にけりつとにせましを
  70. 宇治人の譬への網代我れならば今は寄らまし木屑来ずとも
  71. 宇治川を舟渡せをと呼ばへども聞こえざるらし楫の音もせず
  72. ちはや人宇治川波を清みかも旅行く人の立ちかてにする
  73. しなが鳥猪名野を来れば有馬山夕霧立ちぬ宿りはなくて
  74. 武庫川の水脈を早みと赤駒の足掻く激ちに濡れにけるかも
  75. 命をし幸くよけむと石走る垂水の水をむすびて飲みつ
  76. さ夜更けて堀江漕ぐなる松浦舟楫の音高し水脈早みかも
  77. 悔しくも満ちぬる潮か住吉の岸の浦廻ゆ行かましものを
  78. 妹がため貝を拾ふと茅渟の海に濡れにし袖は干せど乾かず
  79. めづらしき人を我家に住吉の岸の埴生を見むよしもがも
  80. 暇あらば拾ひに行かむ住吉の岸に寄るといふ恋忘れ貝
  81. 馬並めて今日我が見つる住吉の岸の埴生を万代に見む
  82. 住吉に行くといふ道に昨日見し恋忘れ貝言にしありけり
  83. 住吉の岸に家もが沖に辺に寄する白波見つつ偲はむ
  84. 大伴の御津の浜辺をうちさらし寄せ来る波の行くへ知らずも
  85. 楫の音ぞほのかにすなる海人娘子沖つ藻刈りに舟出すらしも
  86. 住吉の名児の浜辺に馬立てて玉拾ひしく常忘らえず
  87. 雨は降る仮廬は作るいつの間に吾児の潮干に玉は拾はむ
  88. (未)
  89. (未)
  90. (未)
  91. (未)
  92. (未)
  93. (未)
  94. 家離り旅にしあれば秋風の寒き夕に雁鳴き渡る
  95. 円方の港の洲鳥波立てや妻呼びたてて辺に近づくも
  96. 年魚市潟潮干にけらし知多の浦に朝漕ぐ舟も沖に寄る見ゆ
  97. 潮干れば共に潟に出で鳴く鶴の声遠ざかる磯廻すらしも
  98. (未)
  99. (未)
  100. (未)
  101. (未)
  102. (未)
  103. 楽浪の連庫山に雲居れば雨ぞ降るちふ帰り来我が背
  104. 大御船泊ててさもらふ高島の三尾の勝野の渚し思ほゆ
  105. いづくにか舟乗りしけむ高島の香取の浦ゆ漕ぎ出来る舟
  106. 飛騨人の真木流すといふ丹生の川言は通へど舟ぞ通はぬ
  107. 霰降り鹿島の崎を波高み過ぎてや行かむ恋しきものを
  108. 足柄の箱根飛び越え行く鶴の羨しき見れば大和し思ほゆ
  109. 夏麻引く海上潟の沖つ洲に鳥はすだけど君は音もせず
  110. 若狭なる三方の海の浜清みい往き還らひ見れど飽かぬかも
  111. (未)
  112. (未)
  113. (未)
  114. (未)
  115. 海人小舟帆かも張れると見るまでに鞆の浦廻に浪立てり見ゆ
  116. ま幸くてまた還り見む丈夫の手に巻き持たる鞆の浦廻を
  117. 鳥じもの海に浮き居て沖つ波騒くを聞けばあまた悲しも
  118. 朝なぎに真楫漕ぎ出て見つつ来し御津の松原波越しに見ゆ
  119. あさりする海人娘子らが袖通り濡れにし衣干せど乾かず
  120. 網引する海人とか見らむ飽の浦の清き荒磯を見に来し我れを
  121. (未)
  122. (未)
  123. (未)
  124. 妹が門出入の川の瀬を早み我が馬つまづく家思ふらしも
  125. 白栲ににほふ真土の山川にわが馬なづむ家恋ふらしも
  126. 背の山に直に向へる妹の山事許せやも打橋渡す
  127. 紀の国の雑賀の浦に出で見れば海人の燈火波の間ゆ見ゆ
  128. 麻衣着ればなつかし紀の国の妹背の山に麻蒔け我妹
  129. (未)
  130. (未)
  131. (未)
  132. 藻刈り舟沖漕ぎ来らし妹が島形見の浦に鶴翔る見ゆ
  133. 我が舟は沖ゆな離り迎へ舟片待ちがてり浦ゆ漕ぎ逢はむ
  134. (未)
  135. (未)
  136. (未)
  137. (未)
  138. (未)
  139. (未)
  140. (未)
  141. 妹に恋ひ我が越え行けば背の山の妹に恋ひずてあるが羨しさ
  142. 人ならば母の最愛子ぞ麻もよし紀の川の辺の妹と背の山
  143. 我妹子に我が恋ひ行けば羨しくも並び居るかも妹と背の山
  144. 妹があたり今ぞ我が行く目のみだに我れに見えこそ言問はずとも
  145. 足代過ぎて糸鹿の山の桜花散らずもあらなむ帰り来るまで
  146. 名草山言にしありけり我が恋ふる千重の一重も慰めなくに
  147. 安太へ行く小為手の山の真木の葉も久しく見ねば蘿生しにけり
  148. 玉津島よく見ていませあをによし奈良なる人の待ち問はばいかに
  149. 潮満たばいかにせむとか海神の神が手渡る海人娘子ども
  150. 玉津島見てし良けくも我れはなし都に行きて恋ひまく思へば
  151. 黒牛の海紅にほふももしきの大宮人し漁りすらしも
  152. 若の浦に白波立ちて沖つ風寒き夕は大和し思ほゆ
  153. 妹がため玉を拾ふと紀の国の由良のみ崎にこの日暮らしつ
  154. 我が舟の楫はな引きそ大和より恋ひ来し心いまだ飽かなくに
  155. 玉津島見れども飽かずいかにして包み持ち行かむ見ぬ人のため
  156. 海の底沖漕ぐ舟を辺に寄せむ風も吹かぬか波立てずして
  157. 大葉山霞たなびきさ夜更けて我が舟泊てむ泊り知らずも
  158. さ夜更けて夜中の方におほほしく呼びし舟人泊てにけむかも
  159. (未)
  160. (未)
  161. (未)
  162. 我が舟は明石の水門に漕ぎ泊てむ沖辺な離りさ夜更けにけり
  163. ちはやぶる金の岬を過ぐれどもわれは忘れじ志賀の皇神
  164. 天霧らひ日方吹くらし水茎の岡の水門に波立ちわたる
  165. 大海の波は畏ししかれども神を斎祀りて舟出せばいかに
  166. 娘子らが織る機の上を真櫛もち掻上げ栲島波の間ゆ見ゆ
  167. 潮早み磯廻に居れば潜きする海人とや見らむ旅行く我れを
  168. 波高しいかに楫取り水鳥の浮き寝やすべきなほや漕ぐべき
  169. 夢のみに継ぎて見えつつ小竹島の磯越す波のしくしく思ほゆ
  170. (未)
  171. (未)
  172. (未)
  173. (未)
  174. (未)
  175. (未)
  176. (未)
  177. 娘子らが放りの髪を由布の山雲なたなびき家のあたり見む
  178. 志賀の海人の釣舟の綱堪へなくに心に思ひて出でて来にけり
  179. 志賀の海人の塩焼く煙風をいたみ立ちは上らず山にたなびく
  180. 大汝少御神の作らしし妹背の山を見らくしよしも
  181. 我妹子と見つつ偲はむ沖つ藻の花咲きたらば我れに告げこそ
  182. 君がため浮沼の池の菱摘むと我が染めし袖濡れにけるかも
  183. 妹がため菅の実摘みに行きし我れ山道に惑ひこの日暮らしつ
  184. 佐保川に鳴くなる千鳥何しかも川原を偲ひいや川上る
  185. 人こそばおほにも言はめ我がここだ偲ふ川原を標結ふなゆめ
  186. 楽浪の志賀津の海人は我れなしに潜きはなせそ波立たずとも
  187. 大船に楫しもあらなむ君なしに潜きせめやも波立たずとも
  188. 月草に衣ぞ染むる君がため斑の衣摺らむと思ひて
  189. 春霞井の上ゆ直に道はあれど君に逢はむとた廻り来も
  190. 道の辺の草深百合の花笑みに笑みしがからに妻と言ふべしや
  191. 黙あらじと言のなぐさに言ふことを聞き知れらくは悪しくはありけり
  192. 佐伯山卯の花持ちし愛しきが手をし取りてば花は散るとも
  193. 時ならぬ斑の衣着欲しきか島の榛原時にあらねども
  194. (未)
  195. (未)
  196. 暁と夜烏鳴けどこの岡の木末の上はいまだ静けし
  197. 西の市にただ独り出でて目並べず買ひてし絹の商じこりかも
  198. 今年行く新島守が麻衣肩のまよひは誰れか取り見む
  199. (未)
  200. (未)
  201. 子らが手を巻向山は常にあれど過ぎにし人に行き巻かめやも
  202. 巻向の山辺響みて行く水の水沫のごとし世の人我れは
  203. こもりくの泊瀬の山に照る月は満ち欠けしけり人の常なき
  204. 遠くありて雲居に見ゆる妹が家に早く至らむ歩め黒駒
  205. 大刀の後鞘に入野に葛引く我妹真袖もち着せてむとかも夏草刈るも
  206. 住吉の波豆麻の君が馬乗衣さひづらふ漢女を据ゑて縫へる衣ぞ
  207. 住吉の出見の浜の柴な刈りそね娘子らが赤裳の裾の濡れて行かむ見む
  208. 住吉の小田を刈らす子奴かもなき奴あれど妹がみためと私田刈る
  209. 池の辺の小槻の下の細竹な刈りそね其をだに君が形見に見つつ偲はむ
  210. 天にある日売菅原の草な刈りそね蜷の腸か黒き髪に芥し付くも
  211. 夏蔭の妻屋の下に衣裁つ我妹うら設けて我がため裁たばやや大に裁て
  212. 梓弓引津の辺なる名告藻の花摘むまでに逢はずあらめやも名告藻の花
  213. うちひさす宮道を行くに我が裳は破れぬ玉の緒の思ひ乱れて家にあらましを
  214. 君がため手力疲れ織りたる衣ぞ春さらばいかなる色に擢りてば良けむ
  215. 梯立の倉橋山に立てる白雲見まく欲り我がするなへに立てる白雲
  216. 梯立の倉橋川の石の橋はも男盛りに我が渡りてし石の橋はも
  217. 梯立の倉橋川の川の静菅我が刈りて笠にも編まぬ川の静菅
  218. 春日すら田に立ち疲れ君は悲しも若草の妻なき君が田に立ち疲る
  219. 山背の久世の社の草な手折りそ我が時と立ち栄ゆとも草な手折りそ
  220. 青みづら依網の原に人も逢はぬかも石走る近江県の物語りせむ
  221. 水門の葦の末葉を誰れか手折りし我が背子が振る手を見むと我れぞ手折りし
  222. 垣越しに犬呼び越して鳥猟する君青山の茂き山辺に馬休め君
  223. 海の底沖つ玉藻の名告藻の花妹と我れとここにしありと名告藻の花
  224. (未)
  225. (未)
  226. (未)
  227. (未)
  228. 春日なる御笠の山に月の舟出づ遊士の飲む酒杯に影に見えつつ
  229. 今作る斑の衣は面影に我れに思ほゆ未だ着ねども
  230. 紅に衣染めまく欲しけども着てにほはばか人の知るべき
  231. かにかくに人は言ふとも織り継がむ我が機物の白き麻衣
  232. あぢ群のとをよる海に舟浮けて白玉採ると人に知らゆな
  233. をちこちの礒の中なる白玉を人に知らえず見むよしもがも
  234. (未)
  235. (未)
  236. (未)
  237. (未)
  238. (未)
  239. (未)
  240. (未)
  241. 大海を候ふ港事しあらばいづへゆ君は我を率しのがむ
  242. 風吹きて海は荒るとも明日と言はば久しくあるべし君がまにまに
  243. 雲隠る小島の神の畏けば目こそば隔て心隔てや
  244. 橡の衣は人皆事なしと言ひし時より着欲しく思ほゆ
  245. おほろかに我れし思はば下に着てなれにし衣を取りて着めやも
  246. 紅の深染めの衣下に着て上に取り着ば言なさむかも
  247. 橡の解き洗ひ衣のあやしくもことに着欲しきこの夕かも
  248. 橘の島にし居れば川遠みさらさず縫ひし我が下衣
  249. 河内女の手染めの糸を繰り返し片糸にあれど絶えむと思へや
  250. 海の底沈く白玉風吹きて海は荒るとも採らずはやまじ
  251. 底清み沈ける玉を見まく欲り千たびぞ告りし潜きする海人
  252. 大海の水底照らし沈く玉斎ひて採らむ風な吹きそね
  253. 水底に沈く白玉誰が故に心尽して我が思はなくに
  254. 世の中は常かくのみか結びてし白玉の緒の絶ゆらく思へば
  255. (未)
  256. (未)
  257. 葦の根のねもころ思ひて結びてし玉の緒といはば人解かめやも
  258. 白玉を手には巻かずに箱のみに置けりし人ぞ玉嘆かする
  259. (未)
  260. (未)
  261. 膝に伏す玉の小琴の殊なくはいたくここだく我れ恋ひめやも
  262. 陸奥の安達太良真弓弦着けて引かばか人の我を言なさむ
  263. 南淵の細川山に立つ檀弓束巻くまで人に知らえじ
  264. 磐畳恐き山と知りつつも吾れは恋ふるか同等ならなくに
  265. 岩が根の凝しき山に入り初めて山なつかしみ出でかてぬかも
  266. 佐保山を凡に見しかど今見れば山なつかしも風吹くなゆめ
  267. 奥山の岩に苔生し畏けど思ふ心をいかにかもせむ
  268. 思ひあまりいたもすべ無み玉たすき畝傍の山に我れ標結ひつ
  269. 冬ごもり春の大野を焼く人は焼き足らねかも我が情焼く
  270. 葛城の高間の茅野早知りて標指さましを今ぞ悔しき
  271. 我が屋前に生ふる土針心ゆも思はぬ人の衣に摺らゆな
  272. 月草に衣色どり摺らめどもうつろふ色と言ふが苦しさ
  273. 紫の糸をぞ我が搓るあしひきの山橘を貫かむと思ひて
  274. 真玉つく越智の菅原我れ刈らず人の刈らまく惜しき菅原
  275. 山高み夕日隠りぬ浅茅原後見むために標結はましを
  276. 言痛くはかもかもせむを岩代の野辺の下草我れし刈りてば
  277. 真鳥棲む雲梯の杜の菅の根を衣にかき付け着せむ子もがも
  278. 常ならぬ人国山の秋津野のかきつはたをし夢に見しかも
  279. をみなへし佐紀沢の辺の真葛原いつかも繰りて我が衣に着む
  280. 君に似る草と見しより我が標めし野山の浅茅人な刈りそね
  281. 三島江の玉江の薦を標めしより己がとぞ思ふ未だ刈らねど
  282. かくしてやなほや老いなむみ雪降る大荒木野の小竹にあらなくに
  283. 近江のや八橋の小竹を矢はがずてまことありえむや恋しきものを
  284. 月草に衣は摺らむ朝露に濡れての後はうつろひぬとも
  285. 我が心ゆたにたゆたに浮蓴辺にも沖にも寄りかつましじ
  286. 石上布留の早稲田を秀でずとも縄だに延へよ守りつつ居らむ
  287. 白菅の真野の榛原心ゆも思はぬ我れし衣に摺りつ
  288. 真木柱作る杣人いささめに仮廬のためと作りけめやも
  289. 向つ峰に立てる桃の木ならむやと人ぞささやく汝が心ゆめ
  290. たらちねの母がその業る桑すらに願へば衣に着るといふものを
  291. はしきやし我家の毛桃本茂く花のみ咲きて成らずあらめやも
  292. 向つ峰の若桂の木下枝取り花待つい間に嘆きつるかも
  293. 息の緒に思へる我れを山ぢさの花にか君がうつろひぬらむ
  294. 住吉の浅沢小野の杜若衣に摺りつけ着む日知らずも
  295. 秋さらば移しもせむと我が蒔きし韓藍の花を誰れか摘みけむ
  296. 春日野に咲きたる萩は片枝はいまだ含めり言な絶えそね
  297. 見まく欲り恋ひつつ待ちし秋萩は花のみ咲きて成らずかもあらむ
  298. 我妹子が屋前の秋萩花よりは実になりてこそ恋ひまさりけれ
  299. 明日香川七瀬の淀に住む鳥も心あれこそ波立てざらめ
  300. 三国山木末に住まふむささびの鳥待つごとく我れ待ち痩せむ
  301. 岩倉の小野ゆ秋津に立ち渡る雲にしもあれや時をし待たむ
  302. 天雲に近く光りて鳴る神の見れば恐し見ねば悲しも
  303. はなはだも降らぬ雨故にはたつみいたくな行きそ人の知るべく
  304. ひさかたの雨には着ぬを怪しくも我が衣手は干る時なきか
  305. み空行く月読壮士夕去らず目には見れども寄る縁もなし
  306. (未)
  307. (未)
  308. (未)
  309. (未)
  310. (未)
  311. (未)
  312. 絶えず行く明日香の川の淀めらば故しもある如人の見まくに
  313. 明日香川瀬々に玉藻は生ひたれどしがらみあれば靡きあはなくに
  314. 広瀬川袖漬くばかり浅きをや心深めて我が思へるらむ
  315. (未)
  316. (未)
  317. (未)
  318. (未)
  319. (未)
  320. (未)
  321. (未)
  322. (未)
  323. (未)
  324. (未)
  325. (未)
  326. (未)
  327. (未)
  328. (未)
  329. (未)
  330. (未)
  331. 楽浪の志賀津の浦の舟乗りに乗りにし心常忘らえず
  332. 百伝ふ八十の島廻を漕ぐ舟に乗りにし心忘れかねつも
  333. 島伝ふ足早の小舟風守り年はや経なむ逢ふとはなしに
  334. 水霧らふ沖つ小島に風をいたみ舟寄せかねつ心は思へど
  335. こと放けば沖ゆ放けなむ港より辺著かふ時に放くべきものか
  336. 御幣取り三輪の祝が斎ふ杉原薪伐りほとほとしくに手斧取らえぬ
  337. 鏡なす我が見し君を阿婆の野の花橘の玉に拾ひつ
  338. 秋津野を人の懸くれば朝撒きし君が思ほえて嘆きはやまず
  339. 秋津野に朝ゐる雲の失せゆけば昨日も今日も亡き人念ほゆ
  340. 隠口の泊瀬の山に霞立ちたなびく雲は妹にかもあらむ
  341. 狂言か逆言か隠口の泊瀬の山に廬すといふ
  342. (未)
  343. (未)
  344. 幸ひのいかなる人か黒髪の白くなるまで妹が音を聞く
  345. 吾背子を何処行かめとさき竹の背向に宿しく今し悔しも
  346. 庭つ鳥鶏の垂り尾の乱れ尾の長き心も思ほえぬかも
  347. (未)
  348. (未)
  349. (未)
  350. (未)

 

主な歌人の歌(索引)