大和の国のこころ、万葉のこころ

不肖私がこよなく愛する『万葉集』の鑑賞blogです。

海は死にますか・・・巻第16-3852

訓読 >>>

鯨魚(いさな)取り海や死にする山や死にする 死ぬれこそ海は潮干(しほひ)て山は枯れすれ

 

要旨 >>>

海は死んだりするだろうか。山は死んだりするだろうか。いや、死ぬからこそ、海は干上がり、山は枯れ山になる。

 

鑑賞 >>>

 旋頭歌形式(5・7・7・5・7・7)の歌で、問答を1首にしたもの。「鯨魚取り」は「海」の枕詞。「海や死にする」の「や」は、疑問の係助詞で、反語となるもの。海が死のうか、死にはしない。「山や死にする」も同じ。しかし、常住不変に見える海や山でさえも、衰亡を免れることができないと歌い、もともと常住の存在でない人のはななさをより際立たせています。深い無常観が窺われる歌です。

 なお、シンガーソングライターのさだまさしさんの代表曲の一つに『防人の詩』というのがあり、映画『二百三高地』の主題歌にもなりましたが、その詞の原案となったのが、この詠み人知らずの歌です。

 

さだまさし作詞『防人の詩

おしえてください
この世に生きとし生けるものの
すべての生命に限りがあるのならば
海は死にますか 山は死にますか
風はどうですか 空もそうですか
おしえてください

 

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