訓読 >>>
人の見る上は結びて人の見ぬ下紐(したひも)開けて恋(こ)ふる日ぞ多き
要旨 >>>
人の見る上着の紐はきちんと結び、人の目に触れない下着の紐をあけて、あなたを恋焦がれる日が重なっています。
鑑賞 >>>
万葉時代の人々は、衣の紐が自然に解けるのは、恋人に逢うことができる前兆だと考えていました。そのため、自分でわざと紐を解けば、恋人に逢えるのではないかと、この作者の女性は考えたのでしょう。
万葉の恋歌に多く見られる「下紐を解く(開ける)」という表現は、現代風に言えば「下着(パンティー)を脱ぐ」ことであり、この歌の解釈も、ありていに申せば「あなたと早くしたいから、パンティーを脱いで待っています」と言っているのと同じです。当時の下着は「裳」のようなものだったそうですから様子はかなり異なりますが、いずれにしても、熱い欲望の率直な吐露といいますか、かなりエロティックな内容の歌となっています。