大和の国のこころ、万葉のこころ

不肖私がこよなく愛する『万葉集』の鑑賞blogです。

東歌(3)・・・巻第14-3373

訓読 >>>

多摩川にさらす手作(てづく)りさらさらに何(なに)そこの児(こ)のここだ愛(かな)しき

 

要旨 >>>

多摩川の水にさらさらとさらして仕上げる手織りの布のように、さらにさらにこの娘(こ)をこんなに愛しく思うのか。

 

鑑賞 >>>

 武蔵の国(東京都・神奈川県・埼玉県にまたがる地域)の歌です。作者の恋人は、毎日手織りの布を織ってはさらす仕事をする娘なのでしょう、せっせと働いているその娘が愛しくてたまらないと言っています。

 上2句は「さらさらに」を導く序詞になっています。「さらす」は布を水洗いしたり、日に干したりして、白く仕上げる工程のこと。「ここだ」は、はなはだの意。この歌はきわめて音楽的でリズミカルであり、「多摩川」「手作り」というタ行が響き合い、「さらす」「さらさら」というサ行が呼応し、また「この児」「ここだ」に見られる同音の繰り返しによる強調など、実に見事な歌となっています。あるいは布を川でさらすときに、みんなで歌い合った労働歌だったのかもしれません。

 この時代、多摩川河畔の地域では布生産が盛んに行われおり、手織りの麻布を税の一種である「調」として納めていました。今もその名残である「調布」「砧(きぬた)」などという地名が残っています。

 

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