大和の国のこころ、万葉のこころ

不肖私がこよなく愛する『万葉集』の鑑賞blogです。

雨はな降りそ・・・巻第7-1091

訓読 >>>

通るべく雨はな降りそ我妹子(わぎもこ)が形見の衣(ころも)我(あ)れ下(した)に着(け)り

 

要旨 >>>

下着まで通るほど雨よ降らないでくれ。愛しい彼女の形見の衣を下に着ているのだから。

 

鑑賞 >>>

 「雨を詠む」歌です。彼女の衣を下着に着ているなんて、ひょっとして変態の男の歌か?と思うところですが、決してそうではなく、通い婚時代の恋人や夫婦が、別れて再び逢うまでの間、お互いに下着を交換して着る風習があったのを指しています。下着といっても、当時は「裳」のようなものだったそうですから、それほど抵抗なく交換することができたのでしょう。

 「な降りそ」の「な~そ」は「どうか~してくれるな」という、相手に懇願し、婉曲に禁止の気持を示す語です。また、「形見」は今の意味とは少し異なり、その人のことを思い出させてくれる大事な品物のことです。

 

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