大和の国のこころ、万葉のこころ

不肖私がこよなく愛する『万葉集』の鑑賞blogです。

花橘を袖に受けて・・・巻第10-1966

訓読 >>>

風に散る花橘(はなたちばな)を袖(そで)に受けて君がみ跡(あと)と偲(しの)ひつるかも

 

要旨 >>>

風に舞い散る橘の花びらを袖に受け止め、その香りをあなたの形見のように偲んでいます。

 

鑑賞 >>>

 「花を詠む」歌。「橘」は、『日本書紀』によれば、垂仁天皇の代に、非時香菓(ときじくのかくのみ:時を定めずいつも黄金に輝く木の実)を求めよとの命を受けた田道間守(たじまもり)が、常世(仙境)に赴き、10年を経て、労苦の末に持ち帰ったと伝えられる植物です。しかしその時、垂仁天皇はすでに崩御しており、それを聞いた田道間守は、嘆き悲しんで天皇の陵で自殺しました。次代の景行天皇が田道間守の忠を哀しみ、垂仁天皇陵近くに葬ったとされています。そうした伝説が影響してか、宮廷の貴族たちは好んで庭園に橘を植えたといいます。

 

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