大和の国のこころ、万葉のこころ

不肖私がこよなく愛する『万葉集』の鑑賞blogです。

東歌(5)・・・巻第14-3442・3477

訓読 >>>

3442
東道(あづまぢ)の手児(てご)の呼坂(よびさか)越えがねて山にか寝(ね)むも宿りはなしに

3477
東道(あづまぢ)の手児(てご)の呼坂(よびさか)越えて去(い)なば我(あ)れは恋(こ)ひむな後は逢ひぬとも

 

要旨 >>>

〈3442〉東国へ行く道にある手児の呼坂は越えられず、この分だと山中に寝ることになりそうだ。宿を貸してくれる家もないままに。

〈3477〉あの人が東路の手児の呼坂を越えて行ってしまったら、私は恋い焦がれてならないでしょう。たとえ後に逢うことができようとも。

 

鑑賞 >>>

 「手児の呼坂」は、”かわいい女が呼びかける坂”の意で、所在は諸説あり不明ですが、静岡市駿河区富士市の原田公園には「手児の呼坂」の歌碑が建てられています。この名は、男が、急峻な山坂を恐ろしい神に妨げられて越えられないので、女が男の名を呼び叫んだという伝説に基づくとされます。

 かつては東国への官道だった東道の「手児の呼坂」は、江戸時代初期に東海道が開通してからは、次第に知る人も少なくなっていったようです。

 

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