訓読 >>>
時守(ときもり)の打ち鳴す鼓(つづみ)数(よ)みみれば時にはなりぬ逢はなくもあやし
要旨 >>>
時守の打ち鳴らす太鼓の音を数えてみると、もうその時刻になった。なのにあの方が逢いにやって来ないのはおかしい。
鑑賞 >>>
約束の時刻になっても来ない恋人のことを訝っている女の歌です。「時守」というのは、陰陽寮(おんようりょう)という天文・暦数などを司った役所の役人のことで、水時計の番をし、鐘や太鼓を鳴らして時刻を知らせていました。この時代、すでにそうした公的サービスの制度があったんですね。
そういえば、私が子供のころに住んでいた町でも、毎晩9時になると、役所が鳴らす「ねんねんころりよ」の子守歌の、鐘によるメロディーが流れていたのを覚えています。それを合図に寝床に入るのを習慣にしていましたが、夜に静かに響く鐘の音は、子供心にもなかなか風情があっていいもんでした。