大和の国のこころ、万葉のこころ

不肖私がこよなく愛する『万葉集』の鑑賞blogです。

明石の浦に燭す火の・・・巻第3-326

訓読 >>>

見渡せば明石(あかし)の浦に燭(とも)す火の穂(ほ)にぞ出(い)でぬる妹(いも)に恋(こ)ふらく

 

要旨 >>>

遠く見渡すと、明石の浦に海人(あま)の燭す漁火(いさりび)が見える。その火のようにおもてに出てしまった、あの娘に恋い焦がれる思いが。

 

鑑賞 >>>

 門部王(かどべのおおきみ)が難波(なにわ)にいて、漁火を見て作った歌です。上3句は「穂にぞ出でぬる」を導く序詞。「穂にぞ出でぬる」は、隠れていたものが人目につくようになる意。

 門部王は、万葉第3期の歌人で、天武天皇の曽孫、長皇子の孫にあたりますが、臣籍に下り大原真人と名乗りました。養老3年(719年)に伊勢守、按察使(あぜち)を兼任。神亀のころ、六人部王(むとべのおう)らとともに風流侍従とよばれ、『万葉集』には5首の歌を残しています。

 

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