大和の国のこころ、万葉のこころ

不肖私がこよなく愛する『万葉集』の鑑賞blogです。

東歌(7)・・・巻第14-3380

訓読 >>>

埼玉(さきたま)の津に居(を)る船の風をいたみ綱は絶ゆとも言(こと)な絶えそね

 

要旨 >>>

風がひどいので、埼玉の船着き場につながれている船の綱が切れるようなことがあっても、あなたの言葉(便り)は絶やさないでください。

 

鑑賞 >>>

 武蔵の国(東京都・神奈川県・埼玉県にまたがる地域)の歌です。男の作とする見方もあるようですが、風がひどくなって、つまり世間の批判が激しくなって、私のもとへ通ってこられなくなっても、せめて便りだけは絶やさないでくださいと言っている女の歌であると解します。

 「埼玉の津」は、埼玉県熊谷市行田市あたりにあったとされる利根川または荒川の渡し場。「言」は、言葉から便り、音信の意味に転じ、さらには広く恋愛関係を指します。

 

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