大和の国のこころ、万葉のこころ

不肖私がこよなく愛する『万葉集』の鑑賞blogです。

君が老ゆらく惜しも・・・巻第13-3247

訓読 >>>

沼名川(ぬなかは)の 底なる玉 求めて 得し玉かも 拾(ひり)ひて 得し玉かも 惜(あたら)しき 君が老ゆらく惜(を)しも

 

要旨 >>>

沼名川の川底にある玉、探し求めてやっと得た玉よ。拾い求めて持っている玉よ。この玉のようにかけがえもなく大切なあなた、そのあなたが老いていかれるのは、とても切ない。

 

鑑賞 >>>

 老いゆく夫を嘆く妻の歌です。「沼名川」の「沼(ぬ)」は玉の意で「玉の川」、すなわち空想上の川、天上界の川とされます。夫のことを、天上界の川底から得た玉のように得難く、大切な存在だと言っています。また、沼名川は「奴奈川」とも書き、出雲の神オオクニヌシと奴奈川姫(ぬなのかわひめ)との恋の伝説から、新潟県糸魚川市に流れ出る小滝川とする説もあるようです。市中には奴奈川姫の銅像が立っており、小滝川の上流には、ヒスイの原石が多く産出されます。

 

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