大和の国のこころ、万葉のこころ

不肖私がこよなく愛する『万葉集』の鑑賞blogです。

遣新羅使人の歌(3)・・・巻第15-3584~3585

訓読 >>>

3584
別れなばうら悲(がな)しけむ我(あ)が衣 下(した)にを着(き)ませ直(ただ)に逢ふまでに

3585
我妹子(わぎもこ)が下(した)にも着よと贈りたる衣の紐(ひも)を我(あ)れ解(と)かめやも

 

要旨 >>>

〈3584〉お別れしたら、さぞもの悲しいことでしょう。私のこの着物を肌身に着ていらしてください、直接お逢い出来る日が来るまで。

〈3585〉愛しいお前が、肌身離さずといって贈ってくれたこの着物の紐、それを解くことなどありましょうか。

 

鑑賞 >>>

 3584が妻の歌。3585が夫の歌。「衣の紐を我れ解かめやも」と、貞操を守ることを誓っています。

 天平8年(736年)夏6月に新羅へ派遣された使者たちは、秋には帰国する予定でしたが、途上で暴風にあい、また疫病で仲間を失い、さらには新羅との交渉も不調に終わるなど、散々な旅となり、ようやく帰国できたのは翌年の春でした。