訓読 >>>
1364
見まく欲(ほ)り恋ひつつ待ちし秋萩(あきはぎ)は花のみ咲きて成(な)らずかもあらむ
1365
我妹子(わぎもこ)が屋前(やど)の秋萩(あきはぎ)花よりは実になりてこそ恋ひまさりけれ
要旨 >>>
〈1364〉見たい見たいと待ち続けていた秋萩は、花だけ咲いて実にはならないのだろうか。
〈1365〉愛しいあの子の庭の秋萩は、花の頃よりは、実になってからの方がいっそう恋心がつのって仕方がない。
鑑賞 >>>
1364の「見まく欲り」は、見たいと思って。「成らずかもあらむ」は実を結ばないのだろうか。「成る」は結婚の成立の譬え。いつまでも恋愛状態のままで、結婚できないのかと不安に思っている男の歌です。
1365の「屋前」は敷地、庭。「花」は結婚前、「実」は結婚後を譬えています。華やかに感じられた恋愛時代よりも、結婚してから地味になった今のほうがずっと恋しいとのろけている歌です。