大和の国のこころ、万葉のこころ

不肖私がこよなく愛する『万葉集』の鑑賞blogです。

東歌(10)・・・巻第14-3577

訓読 >>>

愛(かな)し妹(いも)をいづち行かめと山菅(やますげ)の背向(そがひ)に寝(ね)しく今し悔(くや)しも

 

要旨 >>>

愛しい妻が死んでしまうとは思わないで、山菅の葉のように背を向け合って寝たことが、今となっては悔やまれてならない。

 

鑑賞 >>>

 「山菅の」は「背向」の枕詞。「背向」は背中合わせ。「今し悔しも」の「し」は強意で、今は残念なことだ。妻を亡くした夫の悲しみの歌で、ささいなことでケンカした夜のことを思い出して悔やんでいます。

 なお、この歌は、巻第7-1412にある「吾が背子を何処行かめとさき竹の背向に宿しく今し悔しも」によったもので、いささか内容を変えて自身の歌にしています。別伝とある歌はたいていこのようなものです。