大和の国のこころ、万葉のこころ

不肖私がこよなく愛する『万葉集』の鑑賞blogです。

天霧らひ日方吹くらし・・・巻第7-1231

訓読 >>>

天霧(あまぎ)らひ日方(ひかた)吹くらし水茎(みづくき)の岡(をか)の水門(みなと)に波立ちわたる

 

要旨 >>>

空一面に霧がかかってきて、東風が吹いているのか、岡の港に波が押し寄せてきた。

 

鑑賞 >>>

 「覊旅(きりょ)」の歌。巻第7には旅の歌が多くあり、なかでも舟旅の歌では、波の高さや風の強さ、あるいは海の難所に不安を抱いている歌が多くみられます。船の構造も頑丈ではなかったため、航路は海岸沿いに進むのがふつうだったようです。

 「天霧らひ」空一面に霧がかかって。「日方」は日の方から吹く風で、東南風とされますが、異説もあります。「水茎の」は瑞々しい茎が生えている意で「岡」の枕詞。「岡の水門」は福岡県の遠賀川河口の港で、良港だったといいます。