訓読 >>>
天霧(あまぎ)らひ日方(ひかた)吹くらし水茎(みづくき)の岡(をか)の水門(みなと)に波立ちわたる
要旨 >>>
空一面に霧がかかってきて、東風が吹いているのか、岡の港に波が押し寄せてきた。
鑑賞 >>>
「覊旅(きりょ)」の歌。巻第7には旅の歌が多くあり、なかでも舟旅の歌では、波の高さや風の強さ、あるいは海の難所に不安を抱いている歌が多くみられます。船の構造も頑丈ではなかったため、航路は海岸沿いに進むのがふつうだったようです。
「天霧らひ」空一面に霧がかかって。「日方」は日の方から吹く風で、東南風とされますが、異説もあります。「水茎の」は瑞々しい茎が生えている意で「岡」の枕詞。「岡の水門」は福岡県の遠賀川河口の港で、良港だったといいます。