大和の国のこころ、万葉のこころ

不肖私がこよなく愛する『万葉集』の鑑賞blogです。

海は荒るとも採らずはやまじ・・・巻第7-1317

訓読 >>>

海(わた)の底(そこ)沈(しづ)く白玉(しらたま)風吹きて海は荒(あ)るとも採(と)らずはやまじ

 

要旨 >>>

海の底に沈んでいる真珠は、どんなに風が吹き海は荒れても、手に採らずにおくものか。

 

鑑賞 >>>

 「玉に寄せる」歌で、玉(真珠)を深窓の美女に譬えている男の歌です。作歌の田辺聖子さんはこの歌が好きだとして、次のように評しています。

「”採らずはやまじ”という強い表現が、むきだしで飾りけなくていい。民謡風な平明な歌で、ことさら深い味わいの名歌というのではないが、譬喩の真珠と、たくましい海人の男とのとり合せが好もしい。花束を持つのは女より男のほうが似合わしく、お茶の席で男がかしこまって座っているのも、女のそれより好ましい。すべて柔と剛、硬と軟のとり合せはイメージを触発してたのしい」