大和の国のこころ、万葉のこころ

不肖私がこよなく愛する『万葉集』の鑑賞blogです。

防人の歌(7)・・・巻第20-4342

訓読 >>>

真木柱(まけばしら)讃(ほ)めて造れる殿(との)のごといませ母刀自(ははとじ)面変(おめが)はりせず

 

要旨 >>>

立派な木材を寿いで建てた御殿のように、母上、いつまでも元気でいて下さい、面やつれなどせずに。

 

鑑賞 >>>

 駿河国の防人、坂田部首麻呂(さかたべのおびとまろ)の歌です。「真木柱」は杉や檜などを材とした家の中心になる太い柱。この時代の建築では、家の中心となる柱は、特に高く太く、良い木材を用いました。「讃めて造れる」は、寿詞を唱え、神を祭って造ったところの。「殿」は、身分ある人の家に対する敬称。作者がかつて建築に携わったことのある、土地の豪族などの屋敷のことを言っているようです。「母刀自」は母の敬称。刀自は家の内を取り仕切る主婦の意。「面変はり」は年をとるなどして顔つきが変わること。「おめ」は「おも」の方言。