大和の国のこころ、万葉のこころ

不肖私がこよなく愛する『万葉集』の鑑賞blogです。

彼方の埴生の小屋に・・・巻第11-2683

訓読 >>>

彼方(をちかた)の埴生(はにふ)の小屋(をや)に小雨降り床(とこ)さへ濡(ぬ)れぬ身に添へ我妹(わぎも)

 

要旨 >>>

人里離れたこの粗末な埴生の家に、小雨が降り床まで濡れてしまった。妻よ私に寄り添ってくれ。

 

鑑賞 >>>

 「彼方」は遠方、向こうの。「埴生の小屋」は土で塗った粗末な小屋。おそらくは耕作地などに建てられた物置き場のような小屋だと考えられます。この時代の男女は、人目につかなければどんな所でも密会の場所となっていたのです。身分のある人とて例外ではなく、庶民ならごくふつうのことだったようです。この歌は、その密会の最中に雨が降り出し、床まで濡れてきたので、男が女をいたわっている歌です。