大和の国のこころ、万葉のこころ

不肖私がこよなく愛する『万葉集』の鑑賞blogです。

誰そかれと我れをな問ひそ・・・巻第10-2240

訓読 >>>

誰(た)そかれと我(わ)れをな問ひそ九月(ながつき)の露(つゆ)に濡れつつ君待つ我(わ)れを

 

要旨 >>>

誰なのか、などと私にお聞きにならないで下さい。九月の冷たい露に濡れながら、あなたを待っている私なのです。

 

鑑賞 >>>

 女が男の来るのを戸外に立って待っていて、男は来たけれども、薄暗い中で、人影を誰とも分からず、訝って尋ねたという歌です。「誰そ彼」は、今では薄暮をいう語になっていますが、ここはその語源的なものです。「な問ひそ」の「な~そ」は禁止。

 なお、解釈について「誰なのかあの人は、などと私に尋ねないで下さい。・・・あの方を待っている私ですのに」として、恋人を見咎めた第三者に対しての言葉とするものもありますが、いかがでしょう。