大和の国のこころ、万葉のこころ

不肖私がこよなく愛する『万葉集』の鑑賞blogです。

夏蔭の妻屋の下に・・・巻第7-1278

訓読 >>>

夏蔭(なつかげ)の妻屋(つまや)の下(した)に衣(きぬ)裁(た)つ我妹(わぎも) うら設(ま)けて我(あ)がため裁(た)たばやや大(おほ)に裁て

 

要旨 >>>

夏の日をさえぎる木陰の妻屋の下で衣を裁っているわが妻よ。私のために心づもりして裁っているのなら、もう少し大きめに裁ってくれ。

 

鑑賞 >>>

 『柿本人麻呂歌集』に載っている旋頭歌形式(5・7・7・5・7・7)の歌です。夫のために衣を仕立てている妻へ呼びかけたもので、若い夫婦間のやさしい情愛が漂っています。ただ、違った解釈もあり、新婚らしい女の裁縫仕事を見た第三者の男が、夫を気取って、「私のためならもう少し大きめに裁ってくれ」と、からかった歌だとするものもあります。とすると、この男の体は夫より少し大柄だったのでしょう。

 「夏蔭」は夏の木陰。「妻屋」は夫婦の寝室。「うら設けて」の「うら」は心で、心づもりしての意。