大和の国のこころ、万葉のこころ

不肖私がこよなく愛する『万葉集』の鑑賞blogです。

波羅門の作れる小田を・・・巻第16-3856

訓読 >>>

波羅門(ばらもん)の作れる小田(をだ)を食(は)む烏(からす)瞼(まぶた)腫(は)れて幡桙(はたほこ)に居(を)り

 

要旨 >>>

波羅門さまが耕してらっしゃる田の稲を食い荒らしたカラスは、瞼ががふくれあがって旗竿にとまっている。

 

鑑賞 >>>

 「波羅門」はインド四姓の最高位で、ここでは、天平8年(736年)に中国から渡来したインドの仏教僧で、波羅門僧正とよばれた菩提僊那(ぼだいせんな)を指すとされます。大仏開眼の際に導師を務め、その功により僧正に任ぜられ、荘田を賜わりました。「小田」の「小」は美称。「幡桙」は法事の際に寺の庭に立てる幡(ばん)を支える竿。カラスはもともと瞼が腫れているように見えるのを、仏罰が当たったものと見ています。