大和の国のこころ、万葉のこころ

不肖私がこよなく愛する『万葉集』の鑑賞blogです。

鳴る神の少し響みて・・・巻第11-2513~2514

訓読 >>>

2513
鳴る神の少し響(とよ)みてさし曇り雨も降らぬか君を留(とど)めむ

2514
鳴る神の少し響(とよ)みて降らずとも我(わ)は留(とど)まらむ妹(いも)し留(とど)めば

 

要旨 >>>

〈2513〉少しでいいから雷が鳴り、空がかき曇って雨でも降ってこないかしら。そうすればあなたをお留めできるのに。

〈2514〉雷が少しばかり鳴って、雨が降るようなことがなくても、私は留まるよ。お前が引き留めてくれるのなら。

 

鑑賞 >>>

 2513が、来ている夫をとどめようとする妻の歌で、2514が、それに答えた夫の歌です。「鳴る神」は雷のこと。2513の「響みて」は、鳴り響かせて。「さし曇り」の「さし」は接頭語。「雨も降らぬか」の「も~ぬか」は願望。2514の「妹し」の「し」は強意の助詞。

 妻が「少し響みて」と言っているのは、あまりひどく雷が鳴ると恐ろしいからで、女性らしく可愛らしい歌です。