大和の国のこころ、万葉のこころ

不肖私がこよなく愛する『万葉集』の鑑賞blogです。

二上山も妹こそありけれ・・・巻第7-1098

訓読 >>>

紀路(きぢ)にこそ妹山(いもやま)ありといへ玉櫛笥(たまくしげ)二上山(ふたかみやま)も妹(いも)こそありけれ

 

要旨 >>>

紀州には妹山という名高い山がある、という人の噂だが、大和の二上山にだって男山と女山が並んでいて、女山はあるのだ。

 

鑑賞 >>>

 「紀路」は紀州国または紀州国へ行く道。「妹山」は、古くは名のない山で、紀の川の南岸の「背の山」に向き合う山として名付けられたといいます。「玉櫛笥」は「二上山」の枕詞。「二上山」は大和国原の真西にあり、男嶽(おだけ・515m)と女嶽(めだけ・474m)と頂上が二つに分かれています。フタカミは二つの神の意で、「あめのふたかみ」と呼び、「天二上嶽」と書きます。古くから神の山としてあがめられていました。

 この歌は、「妹」への憧れの気持ちを山に寄せてあらわしていて、妹を求めている若者の謡い物であっただろうといいます。なお、非業の死を遂げた大津皇子の墓があるのは二上山の男嶽です。