訓読 >>>
691
ももしきの大宮人(おほみやひと)は多かれど心に乗りて思ほゆる妹(いも)
692
うはへなき妹(いも)にもあるかもかくばかり人の心を尽(つく)さく思へば
要旨 >>>
〈691〉大宮に仕える女官はたくさんいるけれども、私の心に乗りかかってしっかり心惹かれる人は、あなたです。
〈692〉あなたは何て冷たい人であることか。私がこんなに心をすり減らしていることを思うと。
鑑賞 >>>
大伴家持が娘子に贈った歌。691の「ももしきの」は「大宮人」の枕詞。「大宮人」は朝廷に仕える人。ここでは女官。天皇のお側に仕える采女(うねめ)は容姿端麗が要件の一つとされていましたから、采女以外の一般の女官にも美人が多かったのではないでしょうか。692の「うはへなき」は、愛想のない。「かくばかり」は、これほどまでに。691の歌に対して、相手からの返事がなかったのを嘆き悲しんでいます。