大和の国のこころ、万葉のこころ

不肖私がこよなく愛する『万葉集』の鑑賞blogです。

顧みに行けど帰らず・・・巻第12-3132

訓読 >>>

な行きそと帰りも来(く)やと顧(かへり)みに行けど帰らず道の長手(ながて)を

 

要旨 >>>

「行ってはいや」と、見送りの妻が言うために引き返して来るかと、振り返り振り返り行くけれど、とうとう妻は引き返して来ない。これから長い道のりなのに。

 

鑑賞 >>>

 作者未詳の「羈旅発思」(旅にあって思いを発した歌)の歌です。「な行きそ」の「な~そ」は禁止。旅立ちに際して妻に見送られ、いったん別れたものの、また追いかけてくるのを期待しながら、追いかけてこないのに落胆している、ちょっと残念な男の歌です。でも、ひょっとして相手は妻ではなく、旅先の遊行女婦であるかもしれません。