訓読 >>>
な行きそと帰りも来(く)やと顧(かへり)みに行けど帰らず道の長手(ながて)を
要旨 >>>
「行ってはいや」と、見送りの妻が言うために引き返して来るかと、振り返り振り返り行くけれど、とうとう妻は引き返して来ない。これから長い道のりなのに。
鑑賞 >>>
作者未詳の「羈旅発思」(旅にあって思いを発した歌)の歌です。「な行きそ」の「な~そ」は禁止。旅立ちに際して妻に見送られ、いったん別れたものの、また追いかけてくるのを期待しながら、追いかけてこないのに落胆している、ちょっと残念な男の歌です。でも、ひょっとして相手は妻ではなく、旅先の遊行女婦であるかもしれません。