大和の国のこころ、万葉のこころ

不肖私がこよなく愛する『万葉集』の鑑賞blogです。

東歌(13)・・・巻第14-3403

訓読 >>>

我(あ)が恋はまさかも愛(かな)し草枕(くさまくら)多胡(たご)の入野(いりの)の奥も愛(かな)しも

 

要旨 >>>

私は今も恋しくて切ないけれど、多胡の入野の奥ほど、将来もずっと切ないことだろう。

 

鑑賞 >>>

 上野(かみつけの)の国(群馬県)の歌。「まさか」は現在。「草枕」は「旅」の枕詞であるのを「多」の一音にかけたもの。「多胡」は上野の郡名。「まさか」は現在。「入野」は山間の奥深くの野。「草枕多胡の入野の」は「奥」を導く序詞。「奥」は将来。

 この歌について斎藤茂吉は、「まさかも」、それから「おくも」と続いており、「かなし」を繰り返しているが、このカナシという音は何ともいえぬ響きを伝えている。民謡的に誰がうたってもいい。多胡郡に働く人々の口から口へと伝わったものと見えるが、甘美でもあり切実の悲哀もあり、不思議にも身に沁みるいい歌である、と言っています。