大和の国のこころ、万葉のこころ

不肖私がこよなく愛する『万葉集』の鑑賞blogです。

膝に伏す玉の小琴の・・・巻第7-1328

訓読 >>>

膝(ひざ)に伏(ふ)す玉の小琴(をごと)の殊(こと)なくはいたくここだく我(あ)れ恋ひめやも

 

要旨 >>>

膝の上に載せて弾く大切な琴が、もし格別なものでなかったら、私はこんなにも激しく恋しい思いなどしないのに。

 

鑑賞 >>>

 「日本琴(やまとこと)に寄せる」歌。「日本琴」はわが国固有の六弦の琴。「玉の小琴」の「玉」も「小」も美称。「殊なくは」は、格別でなかったら。「いたくここだく」は、はなはだ多く。「恋ひめやも」の「や」は反語。

 琴を愛する女に喩え、普通の女性たちとは違って殊にすばらしいからこそ、これほどひどく恋しく思われる、と言っています。なお、この解釈とは別に、上2句を単に序詞と捉え、「殊なくは」は「事なくは」で、変事がなかったら、平穏無事の意とし、「事」を結婚妨害などの事態と解する説もあります。というより、そちらの解釈の方が一般的です。