大和の国のこころ、万葉のこころ

不肖私がこよなく愛する『万葉集』の鑑賞blogです。

吾が念ふ妹は早も死ねやも・・・巻第11-2355

訓読 >>>

愛(うつく)しと吾(わ)が念(も)ふ妹(いも)は早(はや)も死ねやも 生けりとも吾(われ)に依(よ)るべしと人の言はなくに

 

要旨 >>>

愛しく思うあの女は、いっそのこと早く死ねばいい。生きていても「私に靡くだろう」と誰も言ってくれないのだから。

 

鑑賞 >>>

 旋頭歌の形式(5・7・7・5・7・7)の歌です。片思いでどうにもならない相手を「早く死ねばいい」などと呪いのように言っているのは、気持ちは分からないではないですが、ずいぶん過激で自己中心的な男の歌です。もっとも、歌人佐佐木幸綱さんは、「この歌、内にこもったところがなく、開けっぴろげで明るい感じがするのは、背景に大勢の笑い声がひびいているからでしょう。歌垣のような場を想像してもいいでしょうが、私は宴席を想像します。酒も入っているのでしょう」と語っています。