大和の国のこころ、万葉のこころ

不肖私がこよなく愛する『万葉集』の鑑賞blogです。

馬休め君・・・巻第7-1289

訓読 >>>

垣越(かきご)しに犬呼び越(こ)して鳥猟(とがり)する君(きみ) 青山(あおやま)の茂(しげ)き山辺(やまへ)に馬(うま)休め君

 

要旨 >>>

垣根の外から犬を呼び寄せて鷹狩をする若君よ、青山の葉が茂る山のほとりで馬を休めなさい、君よ。

 

鑑賞 >>>

 旋頭歌形式(5・7・7・5・7・7)の歌です。「鳥猟」は鷹狩りのこと。土地の豪族の若君が犬を連れて鷹狩をしており、その犬が主人より先に走って行き、どこかの家の敷地内に入り込んでしまったのでしょう。追いかけてきた主人は、垣根越しに犬を呼び戻そうとしています。その家に住んでいたのが作者の女性だったらしく、憧れの若君にお近づきになれる絶好のチャンスと見て、この辺で休憩されてはいかがですか、と呼びかけている歌です。もともとは女集団の労働歌に近いものだったようです。