大和の国のこころ、万葉のこころ

不肖私がこよなく愛する『万葉集』の鑑賞blogです。

旅にし居れば刈り薦の・・・巻第12-3176

訓読 >>>

草枕(くさまくら)旅にし居(を)れば刈り薦(こも)の乱れて妹(いも)に恋ひぬ日はなし

 

要旨 >>>

旅にあって寝床のために刈り取った薦が乱れるように、私の心は乱れて妻を恋しく思わない日はない。

 

鑑賞 >>>

 「羈旅発思」(旅にあって思いを発した歌)の作者未詳歌です。「草枕」「刈り薦の」は、それぞれ「旅」「乱れて」の枕詞。「刈り薦」は刈り取った薦のこと。「薦」(マコモ)は、全国いたるところで見られるイネ科の多年草で、夏に刈り取って筵(むしろ)の材料にしました。

 『万葉集』を愛した鎌倉幕府3代将軍の源実朝は、この歌を本歌取りし、次の歌を詠んでいます。

草枕 旅にしあれば かりごもの 思ひ乱れて 寐(い)こそ寝(ね)られね」